テポドン1 中距離弾道ミサイルの名称。


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 北朝鮮で初めて開発された、2段式中距離弾道ミサイル
 テポドンとは本ミサイルの存在が最初に確認された北朝鮮東部の地名、大浦洞(テポドン)から米国が付けたコードネームで、北朝鮮では「白頭山1号」と呼ばれている。
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 テポドン1の開発は1990年に着手、
1998年8月31日、テポドン1号を基礎とし、人工衛星と固体燃料ロケット・モーターを搭載した第3段を追加した、SLV(Satellite Launching Vehicle衛星打上げ用ロケット:日本政府見解は弾道ミサイル)を発射した。以後、発射は行なわれていない。このためテポドン1の実用性に付いては疑問点も多い。

 テポドン1の最大射程は2000kmで日本全土ほぼ射程内に納める。また、3段式のSLVを弾道ミサイルとして使用すれば、最大射程は5000kmとされ、グアム島も攻撃できる。

 
CEPは3000m以上でピンポイント目標攻撃には向かないが、東京などの大都市攻撃には十分な命中精度だ。

 弾頭重量は750kgと小型のため、通常の高性能炸薬では破壊力は限定される。しかし、・生物・化学兵器を搭載すれば相手方をパニックに陥れることも可能で、心理的効果は大きい。

 テポドン1に搭載可能な核兵器の開発には、高度な技術力を必要とし、現時点では北朝鮮に独自開発能力はないとされる。 また生物・化学兵器を搭載する場合、適切な高度で、これを散布する近接信管や、エアゾル装置が不可欠である。


 さらに、これらの兵器を使用した場合、相手方から報復として、同様の攻撃を受ける可能性があるため、使用には慎重にならざるを得ない。湾岸戦争時、イラクは生物・化学兵器を搭載したスカッド(アル・フセイン)を保有していたが、米国などからの核兵器による報復を怖れ、使用しなかったとされる。

 テポドン1は、第1段にノドン・ミサイル、第2段にスカッドCミサイルの派生型を利用している。開発にはロシアまたは中国による技術援助を得たとされる。構造に付いては北朝鮮政府の公式情報は無く、以下はWeapons Schoolの推測である。

 構造は、先端は弾頭部分となっており高性能炸薬、、生物、化学兵器など750kgを搭載できる単一弾頭である。

 弾頭部分後方は慣性航法装置、自動操縦装置などを内蔵する誘導部分である。

 この後ろはスカッドCミサイル派生型を基礎とした第2段で、燃料のケロシン(灯油)タンクと、酸化剤であるIRFNA(Inhibited Red Fuming Nitric Acid:抑制赤煙硝酸)タンク、
燃料と酸化剤を混合して噴射するターボ・ポンプ、およびロケット・エンジンを内蔵する。

最後部にはグラファイト(黒鉛)製ベーンが取り付けられ、推力偏向方式により飛行方向を制御する。

 第2段と第1段の間には、中間ステージと呼ばれる第1段と第2段を接続する構造物が取り付けられる。

 第1段はノドン・ミサイルを基礎としており、燃料のケロシン(灯油)タンク、酸化剤であるIRFNA(Inhibited Red Fuming Nitric Acid:抑制赤煙硝酸)タンク、
燃料と酸化剤を混合して噴射する燃料ポンプ、およびロケット・エンジンを内蔵する。この後方は燃料と酸化剤を混合して噴射するターボ・ポンプと、ロケット・エンジンである。
 最後部にはグラファイト(黒鉛)製ベーンが取り付けられ、推力偏向方式により飛行方向を制御する。外側には安定翼4枚が取り付けられる。

 テポドン1はノドン・ミサイルなどに比べ大型であるため、自走式発射機ではなく、固定式発射台から発射される。多段式のため発射準備には時間を要し、発射の兆候を偵察衛星などで捕捉され易い。発射施設自体を地下式にして、発射準備段階を偵察衛星に捕捉されない、工夫が必要である。

 テポドン1は発射後、第1段、第2段を切離し、弾頭部分を分離する。この後、弾頭は与えられた運動エネルギーにより弾道飛行して目標に向かう。最高高度はおよそ300km、秒速4km(音速の12倍弱)以上の速度で大気圏に再突入する。迎撃には、弾道ミサイル防衛システムが不可欠である。

 テポドンには、この他、第1段を新規設計した大型ブースター、第2段にノドン・ミサイルを使用して、射程4000km以上の長距離弾道ミサイル、テポドン2も開発されている。

                                                           2013年 2月27日 改訂


性能・諸元

テポドン1
全  長:27.0m
弾体直径:1段目1.32m/2段目0.88m
重  量:21700kg
弾頭重量:750kg
最大射程:2000km

C E P:3000m以上


参考文献

新版 ミサイル事典 世界のミサイル・リファレンス・ガイド 小都 元 新紀元社
テポドンの脅威 小都元 新紀元社
防衛白書(平成16年版) 防衛庁編
ミサイル入門教室ホームページ
ミサイル防衛の基礎知識 小都元 新紀元社
COMMISSION TO ASSESS THE BALLISTIC MISSILE THREAT TO THE UNITED STATES Appendix III: Unclassified Working Papers 

Jane's STRATEGIC WEAPON SYSTEMS ISSUE THIRTY-SEVEN Jane's Information Group
North Korean Long-range Missile Debris Survey January 18, 2013 Ministry of Defense English translation by D. Wright, revised 1/27/13
Missile Defense Agencyホームページ

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