テポドン3  長距離弾道ミサイルの名称。


解説   テポドン2     テポドン1    総合索引  

 北朝鮮により開発された、2段式長距離弾道ミサイル。
Copyright (c)2012 Weapons School  All rights reserved.
テポドン3は、テポドン2の第1段、第2段の直径を大型化、打ち上げ能力を向上させた弾道ミサイルである。

 【注意】

「テポドン3」の名称は、Weapons Schoolが独自に付与した名称であり、米国防省は「テポドン2」と呼んでいる。

「テポドン3」の名称を付けた理由は、テポドン2と比較して、
第1段、第2段の直径が大型化されており、打ち上げ能力を向上させたと推測されるためである。

 テポドン3の最大射程は弾頭重量1000kgの場合、6000km以上で、グアム島だけでなく、アラスカ州も攻撃できる。また、弾頭を軽量化すれば、米国本土も攻撃可能だ。

 テポドン3のCEP(半数必中界)は5km以上と、ピンポイント目標の攻撃には向かないが、大都市攻撃には十分な命中精度だ。通常の高性能炸薬では破壊力は限定される。しかし、・生物・化学兵器を搭載すれば相手方をパニックに陥れることも可能で、心理的効果は大きい。
 搭載可能な小型・軽量の核兵器開発には、高度な技術力を必要とし、現時点では北朝鮮に独自開発能力はない。
Copyright (c)2012 Weapons School  All rights reserved.
 北朝鮮は、テポドン3を基礎とし、人工衛星と固体推進剤(液体推進剤を使用しているとの情報もある)ロケットの第3段を追加した、SLV(Satellite Launching Vehicle:人工衛星打ち上げ用ロケット)
を、北西部黄海沿いの東倉里(トンチャンリ)から3度発射しており、概略は以下の通り。

 No 発  射  日 結       果 備       考
2012年 4月13日 発射後、約2分で爆発・空中分解 破片は韓国西側の黄海に落下
2012年12月12日 人工衛星の軌道投入に成功 高度約500kmの極軌道に投入
2016年 2月 7日 人工衛星の軌道投入に成功 高度約500kmの極軌道に投入


 テポドン3の構造に付いては、北朝鮮政府からの公式情報は無く、以下はWeapons Schoolの推測である。

 先端は弾頭部分となっており高性能炸薬、、生物、化学兵器などを搭載できる単一弾頭である。弾頭部分後方は慣性航法装置、自動操縦装置などを内蔵する誘導部分となっている。


 
この後ろは第2段で、酸化剤である四酸化二窒素タンク、燃料のUDMH(Unsymmctrical Dimethyl Hydrazine:非対称ジメチルヒドラジン)タンクと、燃料と酸化剤を混合して噴射するターボ・ポンプ、およびムスダンに使用されている主ロケット・エンジン1基を内蔵する。飛行制御は、2基のバーニアエンジンによる推力偏向により実施される。
Copyright (c)2012 Weapons School  All rights reserved.
 第2段と第1段の間には、中間ステージと呼ばれる接続構造物が取り付けられる。

 第1段もテポドン2より直径を大型化した新規ブースターで、燃料のケロシン(灯油)タンクと、酸化剤であるIRFNA(Inhibited Red Fuming Nitric Acid:抑制赤煙硝酸)タンク、燃料と酸化剤を混合して噴射するターボ・ポンプ、およびノドンに使用されているロケット・エンジン4基を束ねたクラスタ・タイプで、
外部には安定翼4枚を装着する飛行制御は、4基のバーニア・エンジンにより行われる。



 テポドン3は、大型で多段式のため発射準備には時間を要し、発射の兆候を偵察衛星などに察知され易い。実戦使用する場合には、発射施設自体を地下式とし、発射準備を偵察衛星等に、捉えられない工夫が必要である。

 テポドン3は発射後、第1段、第2段ロケット・エンジンの燃焼終了後に切り離し、弾頭部分を分離する。この後、弾頭は与えられた運動エネルギーにより弾道飛行して目標に向かう。

Copyright (c)2012 Weapons School  All rights reserved.
 最高高度は、500kmを超え、秒速6km(音速の18倍弱)以上の速度で大気圏に再突入する。弾頭は、大気の抵抗で高温、高応力にさらされる。製造にはノドンなどの、射程1200kmクラスの中距離弾道ミサイルに比べ、格段に高度な製造技術を必要とする。また、実際に射程数千kmで発射して、弾頭が正常に分離され、目標地域に着弾、正常に作動することを、少なくとも数回確認する必要があり、テポドン3の実用性には疑問点が多い。

テポドン3の開発目的は?

テポドン3は発射準備に時間を要し、発射の兆候を察知され易いため、実戦使用される可能性は低い。

しかし、テポドン3を使用した人工衛星打上により、多段式ミサイルの製造、制御技術を獲得し、戦場において生存性の高い自走式発射機に搭載可能な、多段式長距離弾道ミサイルを開発することが、北朝鮮の目的であると推測する。

                         2017年 7月 9日改訂


性能・諸元

テポドン3
全   長:約30m
弾体直径:第1段2.4m/第2段1.4m 
(数値は概算値である)
重   量:約90トン
弾頭重量:1000kg以下
射      程:6000km以上

C E P:5000m以上


参考文献

宇宙航行の理論と技術 河崎俊夫編著 地人書館
韓国国防部ホームページ
新版 日本ロケット物語 大澤弘之監修 誠美堂新光社
防衛省ホームページ
ミサイル入門教室ホームページ

1万キロ超す飛行能力 酸化剤は兵器用 韓国国防省分析 2012.12.23 20;05 msn 産経ニュース
Jane's STRATEGIC WEAPON SYSTEMS ISSUE THIRTY-SEVEN Jane's Information Group
Military and Security Developments Involving the Democratic People’s Republic of Korea 2015 A Report to Congress Pursuant to the National Defense Authorization Act for Fiscal Year 2012
Northcom Acknowledges North Korean Missile Launch, Failure  United States Department of Defense News

NORAD acknowledges missile launch NORAD News Decebmer 11.2012
North Korea Launches Another Large Rocket: Consequences and Options 38 NORTHホームページ
North Korean Long-range Missile Debris Survey January 18, 2013 Ministry of Defense English translation by D. Wright, revised 1/27/13
Rocket Propulsion Elements GEORGE P.SUTTON OSCAR BIBLARZ A Wiley-interscience Publication
RUSSIAN STRATEGIC NUCLEAR FORCES Oleg Bukharin他 The MIT Press

Aerospaceトップページへ

Top     Land      Sea     Others

 Copyright (c)2012 Weapons School  All rights reserved.