ノドン 中距離弾道ミサイルの名称。


解説                    総合索引

 北朝鮮の開発した、自走式発射機搭載型、中距離弾道ミサイル
 「ノドン」とは発射実験が行なわれた、北朝鮮北東部沿岸の地名から、米国がつけたコードネームで、北朝鮮では「木星」と呼ばれているとの説もある。 Copyright (c)2003-2006 Weapons School  All rights reserved.  

  北朝鮮は、スカッド・ミサイルおよび、改良型生産により習得した技術をもとに、派生型であるノドン・ミサイルを開発した。
開発は1980年代半ばに着手され、イランからの資金援助を得て、1994年頃に部隊配備を開始したとされる。射程は1000kmを越え、ほぼ日本全土を攻撃可能だ。
CEPは2500m以上と、ピンポイント目標攻撃には向かないが、東京などの大都市攻撃には充分な精度だ。

 ノドン・ミサイルの弾頭重量は800kgで、破壊力は限定される。
しかし、、生物・化学兵器を搭載すれば相手方をパニックに陥れることも可能で、心理的効果は大きい。

 構造および運用に付いて、北朝鮮政府からの公式情報は無く、以下はWeapons Schoolの推測である。

 ノドン・ミサイルの構造は、先端部分は再突入体(弾頭)となっており、高性能炸薬、子弾、、生物、化学兵器など800kgを搭載可能だ。
 ノドン・ミサイルに搭載可能な小型・軽量の核兵器の開発には、高度な技術力を必要とし、現時点では、北朝鮮に独自開発能力はないとされる。 また生物・化学兵器を搭載する場合、適切な高度で、これを散布する近接信管や、散布装置の開発が不可欠である。
 さらに、これらの兵器を使用した場合、相手方から報復として、同様の攻撃を受ける可能性があるため、使用には慎重にならざるを得ない。湾岸戦争時、イラクは生物・化学兵器を搭載したスカッド(アル・フセイン)を保有していたが、米国などからの核兵器による報復を怖れ、使用しなかったとされる。

  再突入体、後方は慣性航法装置や自動操縦装置などを内蔵する誘導部分となっている。この後ろは燃料のケロシン(灯油)タンクと、酸化剤であるIRFNA(Inhibited Red Fuming Nitric Acid:抑制赤煙硝酸)タンクをを持つ液体推進剤ロケットである。
 酸化剤のIRFNAは、毒性が強く、金属を腐食する。推進剤注入状態での長期保管は危険なため、発射の数時間前もしくは、発射直前に推進剤を注入する。
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 タンク後方は燃料と酸化剤を混合して噴射するターボ・ポンプと、スカッドのロケット・エンジンをスケール・アップした1基のロケット・エンジンである。

 最後部にはグラファイト(黒鉛)製ベーンが取り付けられ、推力偏向方式により飛行方向を制御する。外側には安定翼4枚が取り付けられる。

 ノドン・ミサイルは
TEL( Transporter-Erector-Launcher vehicle運搬・起立・発射車輌)と呼ばれる自走式発射機MAZ543改良型、またはトレーラーを改造した車輛に搭載され、戦場を移動する。湾岸戦争でも明らかなように、自走式発射機の位置を特定して、攻撃するのは非常に困難だ。

 
発射指令を受けると、ミサイルを垂直に起立させ、発射方向を調整、機能確認などを行う。この間、約1時間を要し、敵からの攻撃に弱い状態となる。なおノドン・ミサイルは固定式発射機も使用可能である。
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発射後は、事前にプログラムされた目標に向け、飛行方向、速度を調整、所定の条件に達すると、ロケット・エンジンを停止させる。このタイミングが命中精度に大きく影響する。この後は、再突入体(弾頭)を分離、与えられた運動エネルギーにより惰性で、弾道飛行して目標に向かう。最高高度は約200km、大気圏再突入時の速度は秒速3km(音速の約9倍)を超える。高速度で落下してくる再突入体の迎撃は困難で、THAADPAC-3などの高性能迎撃ミサイルを必要とする。

 ノドン・ミサイルには、弾頭を軽量化して射程を延ばしたノドン2の他、
イランやパキスタンなどの、中距離弾道ミサイル開発計画に、部品供給および、技術援助をしたとされるタイプがあり、まとめると以下のようになる

名  称 ノドン1 ノドン2 シャハブ3 ガウリ1
全  長m 16.0 15.9
弾体直径m 1.32 1.35
発射時重量kg 16250 15850
搭載弾頭 高性能炸薬
核・生物・化学兵器
子弾
弾頭重量kg 800 不明 800 760
最大射程km 1300 1500 1300 1500
CEPm 2500以上 不明 2500以上
備  考 スカッドC改良型のスケールアップ 弾頭重量を減らし射程を延長
誘導装置改良
イランの中距離弾道ミサイル パキスタンの中距離弾道ミサイル

*Jane's STRATEGIC WEAPON SYSTEMSでは CEP250mとしているが、具体的な根拠に欠けるため、記載しない。

 また、ノドン・ミサイルは中距離弾道ミサイル、テポドン1の第1段、およびテポドン2の第2段にも使用されている。

                         2013年 3月 3日改訂


性能・諸元

ノドン1
全  長:16.0m
弾体直径:1.32m
重  量:16250kg
弾頭重量:800kg
最大射程:1300km

C E P:2500m以上


参考文献

新版 ミサイル事典 世界のミサイル・リファレンス・ガイド 小都 元 新紀元社
ミサイル入門ホームページ
ミサイル防衛の基礎知識 小都元 新紀元社
Jane's STRATEGIC WEAPON SYSTEMS ISSUE THIRTY-NINE Jane's Information Group
Mis
sile Defense Agencyホームページ
National Intelligence Council Foreign Missile Developments and the Ballistic Missile Threat to the United States Through 2015 September 1999 National Intelligence Officer for Strategic and Nuclear Programs, Bob Walpole
North Korean Long-range Missile Debris Survey January 18, 2013 Ministry of Defense English translation by D. Wright, revised 1/27/13
Report of the COMMISSION TO ASSESS THE BALLISTIC MISSILE THREAT TO THE UNITED STATES Executive Summary Pursuant to Public Law 201 104th Congress July 15, 1998

Scud Ballistic Missile and Launch Systems 1955-2005 Steven J Zaloga OSPREY PUBLISHING

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