北極星2型 中距離 弾道ミサイルの名称


解説                        総合索引  

 北朝鮮にて開発中の自走式発射機搭載型 2段式 中距離弾道ミサイル。欧米ではKN-15とも呼ばれる。
 
  北極星2型の存在が明らかになったのは、2017年2月12日の発射試験で、北朝鮮北西岸から東に向け発射され、高度550kmに達した後、500kmを飛翔し日本海に落下した。


 2月12日の発射試験では、発射角度を大きくとり、飛翔距離を犠牲にしたロフテッド軌道を選択したと考えられる。これを飛翔距離を稼ぐ最小エネルギー軌道で発射したと仮定すると、1100km以上を飛翔したことになる。本ミサイルを、北朝鮮東部から発射すれば、日本の大部分を攻撃可能である。


 
北極星2型は、北朝鮮が開発した潜水艦搭載型 中距離弾道ミサイルKN−11を、陸上用に改良したものと考えられ、直径約1.3mの固体推進剤ロケット・モーターを採用している。従来、北朝鮮で開発されてきたスカッドノドンムスダンKN−08KN−14などの大型弾道ミサイルには、一貫して液体推進剤を使用して来たが、北極星2型では固体推進剤を採用した。


【固体推進剤を採用した理由は?】
  • 発射前に燃料・酸化剤注入の必要も無く、短い準備時間で発射可能なため、即応性、生存性に優れる。
  • 毒性が強く、引火・爆発の危険性も高い、UDMH(非対称ジメチルヒドラジン)、抑制赤煙硝酸四酸化二窒素などの推進剤を、現場で扱う必要は無い
  • 液体推進剤ミサイルに比べ、構造は簡単で、整備維持も容易

【固体推進剤の問題点】

  • 液体推進剤に比べ、推進性能は劣る
  • 一旦点火すると、推力制御は困難で、液体推進剤を使用したミサイルに比べ、命中精度は劣る
  • 高温・多湿環境下での保管は、推進剤を劣化させる
  • 大型の固体推進剤ロケット・モーター製造には、高い技術力を必要とする。

従来、北朝鮮の固体推進剤ロケット・モーターは直径0.6m程度であった。しかし、今回、直径約1.3mの大型ロケット・モーターを製造できたのは、ロシア、中国、イランなどから技術援助を受けた可能性が高い。

 北極星2型の構造に付いては、北朝鮮からの公式情報はなく、以下はWeapons Schoolの推測である。

 先端は、弾頭部分(再突入体)となっており、約500kgの高性能炸薬、兵器などを搭載できる単一弾頭である。北朝鮮は、小型・軽量核兵器を開発したと発表しているが、北朝鮮の技術レベルからすると疑問点も多い。
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 弾頭部分 後方は慣性航法装置、自動操縦装置などを内蔵する誘導部分である。この後方は、直径1.3mの第2段で、、アルミニウム粉末を加えたコンポジット推進剤を使用したロケット・モーターだ。飛行制御は、後部端に設置された4基の推力偏向板により行われる。

 この後方の第一段も第二段とほぼ同様の構造だが、全長が長い。ミサイル後部、外側に折りたたみ式の格子状安定翼8枚が装着されており、発射後、展開される。これは、発射直後の安定性確保のためと考える。
   

 
北極星2型は、装軌(いわゆるキャタピラー)式、自走起立発射機に搭載され、戦場を移動する。装軌式は接地圧が低いため、未舗装の場所でも走行可能であり、装輪式に比べ、移動経路、発射場所の選択肢が増え、運用上の柔軟性と、生存性も向上する。

 また、ミサイル本体は、移動中の損傷および、温度、湿度、ゴミ、埃等から保護するため、発射筒に格納されており、ミサイル本体を、そのまま搭載するより信頼性も向上する。

 北極星2型を搭載した自走式起立発射機は、偵察衛星、偵察機などの監視から逃れるため、トンネル、地下施設などに待機し、発射指令を受けると、指定の発射場所に移動する。その後、発射筒を起立させ、ミサイルの機能確認後、高圧ガスにより発射筒から射出する。飛び出したミサイルは、空中でロケット・モーターに点火し、飛翔を開始する。この発射方式はコールド・ローンチ方式と呼ばれる。

   

 第一段および第二段ロケット・モーター燃焼終了後は、弾頭(再突入体)を分離して目標に向かう。最高高度は200kmを超え、大気圏再突入時の速度は秒速 約3km(音速の約9倍)である。高速度で落下してくる再突入体の迎撃は困難で、統合された弾道ミサイル防衛システムを必要とする。


                           2017年 7月24日 改訂


性能・諸元

 北極星2型 KN−15

全   長:約8m
弾体直径:約1.3m
重   量:約10トン
弾頭重量:約500kg
射      程:1100km以上

 C  E  P:2000m以上


参考文献

北朝鮮による弾道ミサイルの発射について 防衛省
Jane's STRATEGIC WEAPON SYSTEMS ISSUE THIRTY-SEVEN Jane's Information Group
N.Korea employs SLBM tech in new intermediate-range missile 2017/02/13 18:04YONHAP NEWS AGENCY
North Korea Fires Ballistic Missile a Day Before U.S-China Summit by CHOE SANG-HUN APRIL4,2017 The New York Times
North Korea's "Pukguksong-2" is a two stage solid-fuel GLBM ! Norbert Brügge, Germany Space Launch Vehicles all of the worldホームページ
 N.K unveils Missile launch footage YONHAP NEWS AGENCY
The Pukguksong-2: A Higher Degree of Mobility, Survivability and Responsiveness 38 NORTHホームページ
Pukguksong-2 MRBM Global Security.orgホームページ


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