KN-14 長距離弾道ミサイルの名称。


解説                    総合索引  

 北朝鮮にて開発中の2段式長距離弾道ミサイル。KN-14は西側が付けた名称で、北朝鮮では、KN−08と同じく「ファソン(火星)13」と呼ばれているとの情報もある。

 
KN-14は、2015年10月10日の軍事パレードで、その存在が明らかとなった全長約16mの大型ミサイルである。 本ミサイルは、3段式 長距離弾道ミサイルKN−08の改良型で、第3段を撤去し、第1・2段を延長した2段式として信頼性を向上させ、先端部分の形状も変更している。最大射程は6000km以上と推測され、グアム島だけでなく、アラスカ州も攻撃できる。また、弾頭を軽量化すれば、米国本土も攻撃可能となる。
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CEP(半数必中界)は7km以上と、ピンポイント目標の攻撃には向かないが、大都市攻撃には十分な命中精度だ。弾頭重量は約700kgで、通常の高性能炸薬では破壊力は限定される。しかし、兵器などの大量破壊兵器を搭載すれば、相手方に大きな損害を与え得る。ただし、本ミサイルに搭載可能な軽量・小形 核兵器の開発状況は不明である。

  



 KN-14の構造に付いては、北朝鮮政府からの公式情報は無く、以下はWeapons Schoolの推測である。
  
 先端は弾頭部分となっており高性能炸薬、兵器などを搭載できる単一弾頭である。弾頭部分後方は慣性航法装置、自動操縦装置などを内蔵する誘導部分となっている。


 
この後方は、第2段で、酸化剤の四酸化二窒素タンク、燃料であるUDMH(Unsymmctrical Dimethyl Hydrazine:非対称ジメチルヒドラジン)タンクと、ムスダンに使用される主ロケット・エンジン1基を搭載する。飛行制御は、2基のバーニアエンジンによる推力偏向により実施される。

 第1段も酸化剤の四酸化二窒素
タンク、燃料であるUDMH(Unsymmctrical Dimethyl Hydrazine:非対称ジメチルヒドラジン)タンクと、ムスダンに使用される主ロケット・エンジン2基を搭載する。飛行制御は、4基のバーニアエンジンによる推力偏向により行われる。


先端形状が半球形となった理由は?

 KN-08の先端形状はほぼ円錐形をしていたが、KN−14では半球(鈍頭)形となっている。

 長距離弾道ミサイルの弾頭は秒速6km(音速の18倍弱)以上の速度で大気圏に再突入する。先端部部に,衝撃波が発生し、断熱圧縮を受けるため高温、高圧となる。先端部形状が円錐形の場合、先端部分の温度は数千度を超える。

 これに対して、半球形の場合は衝撃波が先端部分から離れるため、温度は下がる。また、再突入時の減速Gも緩和される。つまり、耐熱および耐減速衝撃要件が緩和され、設計・製造に要する技術力のハードルが低くなる。





 欠点としては、円錐形より高い高度から減速が始まるため、迎撃し易くなる。また、速度低下により着弾までの時間は長くなり、乱気流等の影響を受けやすくなるため、命中精度も低下する。

 以上の点から、K
N-08は当初、命中精度の向上を狙い、先端形状を円錐形にしたが、開発を進める過程で、大気圏再突入時の高温、高応力が問題となり、北朝鮮の技術力で対処可能な半球形に設計を変更したと推測する。

 一部では、
KN-14の先端形状が、ロシアの潜水艦搭載型 弾道ミサイル R-29に、よく似た半球形をしていることから、R-29と同様に弾頭を進行方向と逆方向に向け、推進剤タンクの凹部分に埋め込み、全長を短くしてるのではないかとの説もある。しかし、過去に打ち上げた「地球観測衛星」の姿勢制御すら不完全な北朝鮮の技術レベルでは、この可能性は極めて低いと考える。

 KN-14は、16輪の中国製 特殊車両(WS51200)を改造した、自走式発射機に搭載され移動する。この位置を特定し攻撃・破壊することは、衛星、無人航空機による戦場監視が発達した今日においても困難である。

 発射指令を受けると、ミサイルを垂直に起立させ機能確認などを実施後、発射される。その後は、第1・2段を燃焼終了後に切り離し、弾頭は与えられた運動エネルギーにより弾道飛行して目標に向かう。

 最高高度は、1000kmを超え、秒速6km(音速の18倍弱)以上の速度で大気圏に再突入する。弾頭は、大気の抵抗で高温、高応力にさらされ、ノドンなどの射程1200kmクラスの中距離弾道ミサイルに比べ、格段に高度な設計、製造技術を必要とする。




   現時点では、KN-14の発射試験は確認されておらず、本ミサイルの開発状況は不明である。


                            2017年 7月 7日 改訂


性能・諸元

KN-14

全   長:約16m
弾体直径:約1.8m
重   量:約40トン
弾頭重量:約700kg
射      程:6000km以上

C E P:7000m以上


参考文献

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新版 日本ロケット物語 大澤弘之監修 誠美堂新光社
大気圏再突入空力加熱入門 板村芳孝 富山県立大
大気圏突入飛行体の空力加熱の問題 大津広敬 龍谷大学
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A Technical Assessment of Iran’s Ballistic Missile Program by Theodore Postol Massachusetts Institute of Technology 

Atmospheric Re-Entry  John C.Adams,Jr
Ballistic Glide Re-entry Vehicle(BGRV) and Indian Missile Program Arun S Vishwakarma

Ballistic Missile and Reentry Systems:The Critical Years Richard A.Hartunian
China’s Strategic Assistance To North Korea’s Nuclear Program By Richard D. Fisher, Jr INTERNATIONAL ASSESSMENT AND STRATEGY CENTER

Jane's STRATEGIC WEAPON SYSTEMS ISSUE THIRTY-SEVEN Jane's Information Group
KN-08:Hwasong-13 The semi-mobile Limited Range ICBM No-dong-C C.P.Vick Global Security.orgホームページNorth Korea’s Large Rocket Engine Test: A Significant Step Forward for Pyongyang’s ICBM Program John Schilling  38 NORTHホームページ
North Korea’s New Long-Range Missile: Fact or Fiction? By Nick Hansen 38 NORTHホームページ
North Korea unveiles new version of KN-08 ICBM  IHS Jane's Defence Weekly 12 October 2015
Returning from Space:Re-entry  Federal  Aviation Administration

Rocket Propulsion Elements GEORGE P.SUTTON OSCAR BIBLARZ A Wiley-interscience Publication
RUSSIAN STRATEGIC NUCLEAR FORCES Oleg Bukharin他 The MIT Press
The Sejjil Ballistic Missile by Theodore Postol Massachusetts Institute of Technology 
Where's That North Korean ICBM Everyone Was Talking About? John Schilling 
38 NORTHホームページ


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