MOP モップと読む。 Massive Ordnance Penetratorの頭文字を取った略語。直訳すれば巨大貫通兵器。


解説                       総合索引

 INSGPS誘導の超大型貫通爆弾。従来の「バンカーバスター」と呼ばれる貫通爆弾では対処できない、地下深くに建設され鉄筋コンクリートで保護された、指揮・統制、大量破壊兵器製造・貯蔵施設等の破壊を目的とする。制式名称はGBU-57/B。
Copyright (c)2009 Weapons School  All rights reserved.



 米空軍および国防脅威削減局が、ボーイング社を主契約者として、2004年に開発に着手し、2011年に実戦配備を開始した。

 MOPは、全長6.2m、弾体直径0.8m、総重量約12.3トンと、米空軍の保有する通常兵器の中で、最も重量のある兵器だ。貫通力は、貫通爆弾BLU-109の約30倍、湾岸戦争で話題となったBLU-113の約9倍で、厚さ60mの鉄筋コンクリートも貫通可能とされる。

           

 構造に付いては、米空軍からの公開情報は限られており、以下はWeapons Schoolの推測である。

 MOPの構造は、弾頭部分および誘導・飛行制御部分に区分される。

 弾頭部分の制式名称はBLU-127/Bである。弾着時の強烈な衝撃に耐えるため、ES(Eglin Steel)-1と呼ばれる高強度鋼を鍛造して作られている。
 内部には、弾着時の衝撃にも起爆しない、低感度炸薬AFX-757、2082kgおよび、PBXN-114、341kgの合計約2.4トンの炸薬が充填されている。総重量に占める炸薬の割合は、約20%と、通常爆弾の半分以下となっている。これは弾頭が弾着時に破壊・変形しない様、肉厚に作られているためである。
Copyright (c)2009 Weapons School  All rights reserved.
 AFX-757は、RDXに結合剤として末端水酸基ポリブタジェン、酸化剤として過塩素酸アンモニウム、燃料としてアルミニウム粉を加えた炸薬で、衝撃波の持続時間が長く、燃焼温度も高いため、トンネルなどの攻撃には最適の炸薬である。また、運搬・保管中の事故・火災に対しても安全性が高い。

 後部には、HTSF(硬化目標スマート信管)が取り付けられ、目標内部の階数を数え指定された場所で起爆することも可能だ。外部には4枚の安定翼を装着する。

 弾頭部分後方は、誘導・飛行制御部分となっており、精度の高いDGPS(差動型全地球測位システム)と、INS(慣性航法装置)などの誘導装置、および飛行制御装置を内蔵する。外部には格子状の操舵翼を4枚装着しており、投下後展開される。
 格子状の操舵翼は、従来型に比べ小型ながら大きな操舵力を持ち、作動に必要な動力および操舵角も少ないなどの利点を有し、MOABにも採用されている。   


       
 MOPは、B−2爆撃機の機内爆弾倉に搭載可能で、重力加速度を利用するため、高度数千メートル以上から投下される。投下後はDGPS、INSにより自律して目標に誘導され、CEP(半数必中界)は2m以内である。弾着後、地下数十メートルに到達、起爆して施設を破壊する。

 貫通力は、5,000psi(ポンド/平方インチ)の強度を有する鉄筋コンクリートでは60m、10,000psiの鉄筋コンクリートでは8m貫通可能とされる。

【捕捉】 コンクリートの強度に付いて

一般の分譲マンションに、使用されるコンクリートの圧縮強度は、2,845〜4,694psi(20〜33N/mm2)程度である。
10,000psiを(70N/mm2)超えるコンクリートは、超高層マンション基礎部分の柱等に使用されている。


  注意:数値は概算である。

 現在も貫通力向上の改良は続けられており、信管の信頼性向上および、従来のGPS・Pコードより妨害に強いMコードを使用する、計画も進行中である。また、MOPを2発、同じ目標に時間差をつけて投下し、貫通力を向上させる方法も検討されている。

 従来の貫通爆弾に比べ、驚異的な貫通力を有するMOPではあるが、運用上の課題を以下に挙げる。

  • 地下数百メートルに建設された施設には威力不足
    Copyright (c)2009 Weapons School  All rights reserved.
  • 地下施設の攻撃には、目標の正確な位置・構造情報の入手が不可欠
  • 正確な目標情報は、偵察衛星のみでは入手困難
  • 調達数量は限られており(2015年11月時点で20発)、全ての大深度地下施設に使用するには絶対数が不足

 MOPを使用しても、効果を期待できない地下施設の破壊には、B61-11等の核兵器を使用せざるを得ないのが現状である。

                        2023年5月 8日改訂


性能・諸元

GBU-57A/B
全    長:6.2m
弾体直径:0.8m
重   量:約12.3トン
炸薬重量:約2.4トン

誘導方式:DGPS・INS


参考文献

建築構造設計基準 構造計算指針(案) 2000年3月(社)日本建築構造技術者協会
財団法人 国土技術研究センターホームページ
30,000-pound bomb reaches milestone  12/27/2007 U.S.Air Force News

Air Force Updates Massive Ordnance Penetrator Bombs Amid New Iranian Nuclear Posturing JOSEPH TREVITHICK NOBMBER 5,2019 WAR ZONEホームページ

B-2, MOP, a devastating combo 12/21/2007  U.S.Air Force News
BLU-122 Warhead Program Precision Strike Technology Symposium 19 Oct 2005 Maj Mike Lauden BLU-122 Program Manager
Boeing-Developed Massive Ordnance Penetrator Successfully Completes Static Lethality Test March 26, 2007 Boeing社ホームページ
Defense Threat Reduction Agencyホームページ
DOD official: New bomb has 'important capability' by Gerry J. Gilmore 10/9/2009 American Forces Press Service 
Dynetics Playing Key Role in Massive Ordnance Penetrator Developmentby Mike Landers Volume 17 Issue 1 In Focus Dynetics Inc
Insensitive Enhanced Blast Formulations P.Chabin他 EURENCO
FACILITY NEUTRALIZATION INTEGRATING CONCEPT U.S.Air Force Fact Sheet
FY2021 Annual Report Director, Operational Test & Evaluation January 2022 

Jane's Air-Lunched Weapons Issue Forty-nine Jane's Information Groups
Senator Feinstein Argues Against Reopening Nuclear Door June 30, 2005 U.S. Senator Dianne Feinsteinホームページ
Nuclear family planning: fewer, smaller and safer warheads for future generation  BY BILL SWEETMAN
Jane's INTERNATIONAL DEFENCE REVIEW JANUARY 2006
Our Best Look Yet At The Massive Ordnance Penetrator Bunker Buster Bomb BY OLIVER PARKEN MAY 3, 2023 The War Zone


Aerospaceトップページへ

Top     Land      Sea     Others

 Copyright (c)2009-2023 Weapons School  All rights reserved.