AGM-130 空対地ミサイルの名称


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 航空機から発射されるロケット・モーター付き誘導爆弾。対空砲火の射程外から、目標をピン・ポイントで攻撃できる。対空陣地、指揮・通信バンカー・橋などの攻撃に使用される。制式名称AGM-130。 Copyright (c)2003 Weapons School  All rights reserved.
 1984年、米空軍は誘導爆弾GBU-15/Bにロケット・モーターを取付け、遠距離から発射可能な発展型として開発に着手した。1994年に部隊配備を開始、
1999年イラクで初めて実戦投入された。また、同年コソボ紛争でも使用され、グルデリツァの鉄橋攻撃の際、通過中の客車を誤爆して、多数の死傷者を出した事件は、マスコミで大きく取り上げられた。

 AGM-130の弾体はモジュラー構造となっており、先端は電子光学(CCDカメラ)シーカーDSU-27/Bまたは、マーベリック・ミサイルに搭載される画像赤外線シーカーWGU-10/Bなどを内蔵する誘導部分となっている。外部にはカナード翼4枚が装着される。

 誘導部分後方は弾頭部分となっており、2000ポンド(907kg)級のMk84低抵抗汎用爆弾を使用したタイプをAGM-130A、BLU-109/B貫通爆弾を使用したタイプをAGM-130Cと呼ぶ。なお、クラスター爆弾を使用したAGM-130Bも開発されたが、実用化はされなかった。

 弾頭部分、後方は、自動操縦装置および熱電池などを内蔵する飛行制御部分となっており、外部に安定・操舵翼4枚を装着する。なお、前部カナード翼、および後部安定・操舵翼はAGM-130用に、小型化されたMXU-787翼グループが使用されている。

 最後部はデータ・リンク用のアンテナが取付けられる。シーカーが捕らえた画像は、AN/AXQ-14データ・リンク・ポッドを搭載する航空機に送られ、WSO(兵器システム士官)がモニターを見ながら、命中点を選定する。また、この画像は攻撃精度評価にも利用可能だ。新たな目標が出現した場合には、目標の変更も可能である。
 
1999年には、WSOの負担を軽減するため、INS(慣性航法装置)とGPS(全地球測位システム)を追加した改良型の配備を開始した。
 
データ・リンクには1710〜1850MHzの周波数帯が使用され、100km以上の遠距離からでも誘導可能とされる。

 弾体下部にはAlliant Tech systems社製
HTPB(Hydroxyl Terminated PolyButadiene末端水酸基ポリブタジエン)コンポジット推進薬を内蔵するSR122-RD-1固体推進薬ロケット・モーターが取付けられる。

 AGM-130は発射前に目標をロック・オンするダイレクト・モードと、発射後、目標を捜索してロック・オンするインダイレクト・モードがあり、目標付近の敵対空砲火の脅威度に応じて柔軟に運用できる。場合によってはWSOの手動制御も可能である。母機は発射後、退避行動を取れる。

 発射されたAGM-130はロケット・モーターに点火。ロケット・モーターは60秒間燃焼して切り離される。この後は、滑空して指示された目標に向かう。

 AGM-130の射程は投下高度、速度などにより変化するが、低高度ではおよそ20km、高高度から発射された場合は60kmを超える。

AGM-130運用上の制約は以下の通り。

  • 価格はレーザー誘導爆弾の20倍以上と高価である。
  • 目標を発見して、ロック・オンするには高い技量を必要とする。
  • 電子光学シーカーは夜間、霧、埃などで視界を遮られると、交戦可能距離が短くなる。
  • 画像赤外線シーカーも悪天候時には視界が限定される。

 
                              2003/12/ 4制作


性能・諸元

AGM-130A
全  長:3.9m
直  径:1.5m
重  量:1312kg
誘導方式:電子光学または画像赤外線
弾  頭:Mk84低抵抗汎用爆弾
最大射程:60km以上
価  格:約4900万円。
メーカー:ボーイング社他


参考文献

図解エアパワー最前線上・下 原書房 著者:アンソニー・ソーンボロ 監訳者:松崎豊一
トム・クランシーの戦闘航空団解剖 著者:トム・クランシー 訳:平賀秀明 新潮社
U・S・ウエポン・ハンドブック 宮本勲編著 原書房
BOEING社ホームページ

AGM-130 standoff missile scores direct hit on Eglin test range  Journal of Aerospace and Defense Industry News Sept. 10th, 1999  
CASE STUDY:IMPACT ASSESSMENT ON PRECISION STRIKE WEAPON DATA LINK SYSTEMS TO ACCOMMODATE IMT 20005 January 2001Prepared By Eglin AFB, Florida 

Enhanced GBU completes first Phase II drop test Released: 31 Aug 2000 by Rick Holder Air Armament Center Precision Strike Systems Program Office 
Federation of American Scientistsホームページ
Jane's Air-Lunched Weapons Jane's Information Groups
Raytheon社ホームページ
U.S. Air Force Fact Sheet


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