ジルコンまたはブラモス2 極超音速巡航ミサイルの名称。


解説                   総合索引

 ロシアとインドにより開発された、音速の6倍以上の速度で飛行する超高速対艦巡航ミサイル。 ロシアでの制式名称は3M22 ジルコン(Zircon)、インドではブラモス2(BrahMos ll)と呼ばれる。本稿ではジルコンの名称を用いる。
   
 ジルコンは、超音速巡航ミサイル3M55オニクスの後継として、開発を進めており
、2020年頃の部隊配備を予定している。対艦攻撃の他、陸上目標にも使用可能だ。
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 全長はおよそ8.5m、直径 約0.7m、重量 約3トンと、比較的大型の艦艇搭載型 巡航ミサイルで、最大射程は300km以上である。本ミサイルには、航空機搭載型も開発されているとの情報がある。

 ジルコンは、発射から目標到達までの時間が、超音速のオニクスと比べても2分の1以下、西側の亜音速対艦ミサイル、ハープーンと比べれば6分の1以下に短縮出来るため、戦術的には大きなメリットとなる。また、対空ミサイルの迎撃限界高度付近を極超音速で、飛翔経路変更も可能なため、迎撃は非常に困難である。

 構造に付いてはロシア、インドからの公式発表は無く、以下はWeapons Schoolの推測である。

 ジルコンは二段式の巡航ミサイルで、第一段は加速用 固体推進剤ロケット・モーター、第二段がミサイル本体となる。

 ミサイル本体は、前部にレーダー・シーカー(探知機)を収納する楔形レドーム、この後方はINS(慣性航法装置)、グロナス(ロシア版GPS:全世界測位システム)、自動操縦装置、および中間誘導用データ・リンクを搭載する誘導制御部分である。この下方には、スクラムジェット用の空気取入口があり、空気抵抗を低減するためカバーが取り付けられる。

 この後方は弾頭部分となっており、重量 約300kgの通常弾頭である。

 弾頭部分の後ろは、燃料タンクと、スクラムジェットで、後部外側に操舵翼4枚が取り付けられる。

 この後方は、第一段の加速用 固体推進剤ロケット・モーターで、スクラムジェットの作動速度である音速の4倍以上に加速する。後端部外側には、折りたたみ式安定翼4枚が取り付けられており、発射後、展開する。

スクラムジェットとは?

通常のジェットエンジンは、空気取入れ口から空気を取り入れ、回転式圧縮装置で空気を圧縮、これに燃料を噴射して燃焼させ推力を得ている。

これに対して、スクラムジェットには圧縮機等が無く、音速を遙かに超える空気の流れを利用して、空気を圧縮、ここに燃料を噴射して高温で燃焼させ、推力を得ている。

構造はジェットエンジンに比べ簡単であるが、作動には音速の4倍以上の速度を必要とする。このため固体推進剤ロケット・モーター等を使用して、作動可能な速度まで加速する必要がある。

また、超音速気流の中で、安定した燃焼状態を継続するには、高度な設計・製造技術が求められる。


 発射されると第一段ロケット・モーターにより、マッハ4以上に加速される。空気取入口カバーを投棄して、スクラムジェットを作動させると、第一段は分離・投棄される。

 ミサイル本体は、高度約2万m、マッハ6以上の高速度で飛行し、敵防空網を混乱させるため、飛行コースを変更する。搭載するデータ・リンク装置により飛行中でも、目標変更可能である。

 目標に近づくとレーダー・シーカーを作動させ、目標を探知する。また、目標艦がレーダーまたは、電波妨害装置を作動させている場合には、その発信源に向かう。垂直に近い角度で目標に突入するため、高い命中精度と、周囲への付随的被害を最小限に限定出来る。

 実戦では、同一目標に対して複数のミサイルを発射、異なる飛行経路で同時に着弾させ、相手方の防空能力を飽和させるのが一般的な交戦方法である。優れた防空能力を持つイージス艦でも、同時に何発も飛来する場合、対処には限界がある。


                          2018年7月23日作成


性能・諸元

3M22 ジルコン
全  長:約8.5m
弾体直径:約0.7m
重  量:約3トン
弾頭重量:約300kg
最大速度:マッハ6以上
最大射程:300km以上
誘導方式:中間 INS+GPS/終末 レーダー・シーカー


参考文献

超音速燃焼ジェットエンジンは可能か?小幡 茂男 防衛大学校 
Advanced development in Hypersonic Cruise Missile-Inertial Guidance System, Universal launch Platform & Ramjet Engine Sibu C.M他 Journal of Basic and Applied Engineering Research
Brahmos ll /Zircon Global Securityホームページ
Don't believe the hype about Russia's hypersonic missile KELSEY D.ATHERTON  JUNE 18.2017 POPULAR SCIENCE
Hypersonic hustle:Global efforts stepped-up to satisfy military need for speed  Jane's international Defence Review IHS
Hypersonic Missile Nonproliferation Richard H.Speier他 RAND Corporation
Hypersonic Weapons Ajey Lele IDSA Occasional Paper No.46
Hypersonic Vehicles Came Changers for Future Warfare? Dipl.-lng.Hans-Ludwing Besser他 JAPCC Journal Edition 24 2017 Transformation & Capabilites
ZIRCON:THE RUSSIAN HYPERSONIC CRUISE MISSILE Capt HPS Sodhi Centre for Air Power Studies Forum for National Security Studies
Zircon Russia's Hypersonic Cruise Missile Set to influence Asia Pacific Region NAVAL FORCES 1/2017

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