NCADE Network Centric Airborne Defense Elementの頭文字を取った略語。直訳すればネットワーク中心空中防御要素。


解説                                         総合索引

 加速段階の弾道ミサイルを迎撃する、空中発射型、弾道ミサイル防衛システムの名称。
(c)2008 Weapons School  All rights reserved.
 NCADEは、米、ミサイル防衛局と、レイセオン社により2006年から開発が進められており、ネットワーク化された航空機および、弾道ミサイルの発射情報をもたらす各種センサー、火器管制システム、迎撃ミサイルにより構成される。

 NCADEシステムの中核である迎撃ミサイルは、中距離空対空ミサイルAMRAAMの弾体をベースとした、2段式である。第1段は、AMRAAMのロケット・モーターを約20cm短くしている。第2段は、毒性の低い、液体推進剤、硝酸ヒドロキシルアンモニウムを使用するロケット・エンジンと、空気の薄い高々度で、弾体の姿勢・軌道制御を行うサイド・スラスターを装備する。この前方には最新型サイドワインダーAIM-9Xの画像赤外線シーカーと、IRU(慣性基準装置)を利用した誘導装置を内蔵する。先端には赤外線センサーを空力加熱から保護するノーズコーンを装着し、内部には、飛翔中の空気抵抗を減らすエアロ・スパイクと呼ばれる棒状の突起を内蔵する。

 このミサイルは、AMRAAMの様に、爆風・破片弾頭は持たず、体当たりによる運動エネルギーで、弾道ミサイルを破壊する。
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 NCADE迎撃ミサイルは、AMRAAMの弾体をベースとしているため、比較的安価で、搭載する航空機も大幅な改良をする必要はない。また戦闘機はもちろん、無人機にも搭載可能で、迅速な展開と柔軟な運用が可能である。


 

【注意】
NCADEの運用および性能に付いては、詳細な情報は公開されておらず、以下はWeapons Schoolの推測である。

 NCADEの特徴は、加速段階にある弾道ミサイルを、迎撃ミサイルを搭載する航空機のレーダーや、電子光学センサーだけでなく、前方展開X波長帯レーダーおよび、他の航空機等の外部センサーにより捕捉、目標情報をリンク16などのネットワークを利用して、迎撃ミサイルを搭載する航空機に配信可能な点にある。
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発射された迎撃ミサイルは、ノーズコーンに内蔵されたエアロ・スパイクを展開、空気抵抗を減少させ加速する。画像赤外線センサーが目標を捕捉するまでは、発射母機から中間誘導を行う。
 
第1段の燃焼終了後、切り離し、第2段に点火、所定の高度に達するとノーズコーンを分離して、姿勢・軌道制御のためサイド・スラスターを作動させ、画像赤外線センサーにより目標を捕捉、上昇中の弾道ミサイルに体当たりする。
  


 NCADE迎撃ミサイルの対処可能な高度、速度は公表されていない。AMRAAMをベースとする2段式であることから、最終速度は音速の約6倍、最大射高は50km程度であると推測する。(c)2008 Weapons School  All rights reserved.
 
これらの値から、加速・上昇中の弾道ミサイルに追いすがり撃墜できるのは、弾道ミサイル発射後、約60秒以内であると推測する。比較的速度の遅い、射程500kmのスカッドCでも発射後約70秒で速度は、音速の6倍、高度は60kmを超え、NCADE迎撃ミサイルでは、届かない高度、追いつけない速度に到達してしまうからだ。また、弾道ミサイルの進行方向、正面から迎撃する場合でも、高度が50kmを超えれば、弾道ミサイルに到達できず、速度に関係なく迎撃は不可能になる。(c)2008 Weapons School  All rights reserved.
 こうした観点からすれば、射程約400kmのABL(航空機搭載レーザー)などに比べ、NCADEは極めて限定された能力しか持たない迎撃手段であると言える。


                                                      2008年7月26日制作


性能・諸元

全長:3.66m
翼幅:0.53m
弾体直径:0.18m
最大射程:約160km
最大射高:50km(推定値)
速度:マッハ6(推定値)
誘導方式:指令誘導(中間誘導)、赤外線(終末誘導)
重量:150kg
メーカー:レイセオン社他


参考文献

2007 CAF Airpower Symposium Air Combat Command Langley AFB.VA  23 May 2007
AEROJET社ホームページ
First successful NCADE flight proves key technology NICK BROWN  Jane's INTERNATIONAL DEFENCE REVIEW JANUARY 2008
Jane's Air-Lunched Weapons Issue Forty-nine Jane's Information Groups
 Jane's STRATEGIC WEAPON SYSTEMS ISSUE THIRTY-NINE Jane's Information Groups
Range, Persistence, Stealth, and Networking:The Case for a Carrier-Based Unmanned Combat Air System Thomas P. Ehrhard, PhD Robert O.Work   Center for Strategic and Budgetary Assessments
Raytheon社ホームページ
Raytheon pursuing modified AMRAAM to shoot down ballistic  missiles BY: MICHAEL SIRAK, DEFENSE DAILY 05/22/2006 U.S. Air Force AIM Points
Successful Missile Defense Intercept Test Takes Place at White Sands Missile Range 3 December 2007 MISSILE DEFENSE AGENCY

 

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