サイドワインダー 短距離空対空ミサイルの名称 本来は砂漠に生息するヨコバイガラガラヘビの英語名


解説                             総合索引

 視界内、空対空戦闘において最も多用される、赤外線ホーミング 空対空 短距離ミサイル。実戦で証明された信頼性と命中率の高さは折り紙つきだ。制式名称AIM−9サイドワインダー。

 サイドワインダーの特徴は、軽量、
小型、撃ちっ放し可能、構造は簡単で信頼性も高い。西側戦闘・攻撃機のほとんどに搭載可能で、価格はスパローの3分の2、AMRAAMでは5分の1と、レーダー誘導ミサイルに比べて安価で故障も少ない。

 
欠点としては、太陽やフレアー・赤外線ジャマーに騙されやすい。目標機との間に、雲や霧、雨などがあると、赤外線が減衰して使用できない。攻撃方向は、赤外線を大量に放射する排気口のある目標の後方に限定される。また、弾体直径12.7cmと小型なため、弾頭重量が小さく、搭載できるシーカー・電子装備も限定される。



 サイドワインダーは1940年代末に米国で開発に着手、1956年、配備を開始した。1958年には台湾海峡上空で、ミグ17を撃墜して華々しい実戦デビューを飾った。以後、ベトナム戦争や中東戦争など、世界各地の空対空戦闘で使用され、総生産数は20万発を超えると言われる。Copyright
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 サイドワインダーは、5つの部分から構成されている。先端部分はフッ化マグネシウム製の透明ドームと、赤外線シーカー(探知機)を内蔵する誘導部分がある。L型以後は、攻撃方向を排気口のある、後方からだけでなく、空力摩擦により熱せられた機体、および排気流からの赤外線を感知して、ほぼオールアスペクト(全方位)攻撃を可能とする感度の高いインジウム・アンチモン光電子変換素子を採用した。

 誘導部分の後方は、シーカー冷却用アルゴンガス・タンクと、電力、操舵翼作動ガスを供給するガス・ジェネレーター、サーボモーターを内蔵する飛行制御部分で、外側にダブル・デルタ型の操舵翼4枚の他、母機から目標情報や発射信号、ミサイルからは、目標補足信号をやり取りするアンビリカル・ケーブルが装着されており、ランチャーと接続される。

 飛行制御部分の後方には、レーザー近接信管と環状爆風・破片弾頭がある。最後部はMk36固体推進薬ロケット・モーターが内蔵されており、外側に安定翼4枚が取り付けられる。安定翼後縁にはロールロンと呼ばれる、小型の風車が取り付けられ、サイドワインダーを発射すると、気流で高速回転し、ジャイロ効果により、ミサイルの回転率を下げ、飛行中の安定を確保する。
 弾体はモジュラー構造となっており、各モジュラーの交換により改良可能だ。

 サイドワインダーには3つの運用モードがある。ミサイルの軸線上の限定された範囲のみをシーカーがスキャンするボアサイト・モード。ミサイルの軸線より、さらに広範囲をシーカーがスキャンするアンケージド・スキャン・モード。母機のレーダーが向いている方向を、シーカーも追尾するスレーブ・モードなどにより、発射範囲を広げている。現在AIM-9Xと共に開発されている、JHMCS(統合ヘルメット搭載指示システム)が実用化されれば、レーダーのスキャン範囲を超えて、バイロットの向いた方向に発射可能となる。


 サイドワインダーは登場以来様々な改良を重ねており、最新型のAIM-9Xは、M型をベースとして、フレアーや赤外線ジャマーなどに影響されにくい画像赤外線シーカーと、運動性能を向上させるため、推力偏向装置を装備しており、2004年に全規模量産を開始した。現在、使用されている代表的なタイプは以下の通り。

タイプ AIM−9L AIM−9M AIM−9P AIM−9R AIM−9X
シーカー オールアスペクト赤外線 可視光CCD 画像赤外線
弾頭 9.5kg環状爆風・破片炸薬 12kg爆風・破片炸薬 9.5kg環状爆風・破片炸薬 9.5kg環状爆風・破片炸薬
全長m 2.87 3.07 2.87 2.9
重量kg 87 87 82 87 85
弾体直径m 0.127
翼幅m 0.64 0.44
射程km 10
備考 オールアスペクト(全方位)交戦能力

ダブルデルタ型カナード翼で機動性向上

シーカー冷却用ガス内蔵

米国では生産終了

オールアスペクト(全方位)交戦能力強化

フレアー・ジャマ−対策能力の向上

低煙化ロケット・モーター

近接信管改良

低排煙化ロケット・モーター

弾頭改良

 

AIM−9Mをベースとして、画像処理シーカーを採用、探知距離、オフ・ボアサイト能力強化。フレアー・ジャマ−に強い。最も脆弱な弾着部位を選択可能に

米海軍用

製造中止

動翼・安定翼小型化

推力偏向制御により機動力向上

統合ヘルメット搭載指示システムとの併用により高いオフ・ボアサイト能力を持つ

 サイドワインダーは40ヶ国以上で使用されており、派生型も多く、対レーダー放射ミサイルのサイダーム、米陸軍短距離自走防空システムのチャパラルなどがある。また、米国以外の日本、ドイツ等でライセンス生産されている。さらに、旧ソ連にはサイドワインダーのコピーと言われる、AA-2アトールがある。情報入手元については諸説あるが、台湾海峡でのF-86とミグ17による空中戦の際、機体に命中したが、爆発しなかったサイドワインダーを元に製造されたとされる。

 最近では、敵味方識別方法の進歩により、視界外戦闘の比率が増加傾向にあり、サイドワインダーを使用する視界内戦闘の機会は減少している。湾岸戦争では多国籍軍が撃墜したイラク軍用機40機の内、サイドワインダーによるものは、10機のみである。
                            2004/8/11改訂


性能・諸元

AIM-9M
全長:2.87m
翼幅:0.64m
弾体直径:0.127m
射程:8km以上(推定値)
重量:87kg
弾頭重量:9.5kg環状爆風・破片炸薬
誘導方式:赤外線ホーミング
速度:マッハ2.5以上(推定値)
価格:約1000万円。
メーカー:レイセオン社他


参考文献

F-15 イーグル Great Aircraft Series No.2 航空ジャーナル社
F-16 ファイティグファルコン Super Fighter Series No.2 航空ジャーナル社
図解エアパワー最前線上・下 原書房 著者:アンソニー・ソーンボロ 監訳者:松崎豊一
トム・クランシーの戦闘航空団解剖著者:トム・クランシー 訳:平賀秀明 新潮社
U・S・ウエポン・ハンドブック 宮本勲編著 原書房
Jane's Air-Lunched Weapons Jane's Information Groups

SIDEWINDER ron westrum Naval Institute Press
U
.S. Air Force Fact Sheet

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