スパロー 中距離空対空ミサイルの名称。


解説                             総合索引

 米国により開発されたセミ・アクティブ・レーダー誘導、中距離空対空ミサイル。制式名称はAIM−7 スパローと呼ばれ、F−4・F−14・F−15・F−16・F/A−18などに搭載可能。スパローは米国だけでなく、NATO諸国を始め、イスラエル・オーストラリア・日本など、15ヶ国以上で使用されており、中距離空対空ミサイルのベストセラーだ。

 スパローの開発は古く、第二次世界大戦終了の翌年、1946年に爆撃機迎撃を目的として、開発を開始した。初期の誘導方式はビーム・ライディング方式だったが、紆余曲折を経て、セミ・アクティブ・レーダー誘導方式となり、1958年から部隊配備された。

 スパローは母機から照射される連続波もしくはパルス・ドップラー方式レーダー波が目標航空機に当たって反射した電波を、レーダー波シーカーで受信、さらに後部アンテナで母機からのレーダ−波を直接受信して、2つの電波のドップラー偏移を測定して目標を追尾する。視界外や、ヘッド・オン(対進)状態はもちろん、夜間や悪天候下でも敵航空機を攻撃可能の、全天候ミサイルだ。 しかし、次のような運用上の制約がある

  • 母機によるレーダー波照射は、ミサイル命中まで必要で、この間、母機の行動は制約される。
  • 複数の目標に同時対処できない。
  • 赤外線誘導ミサイルに比べて構造が複雑で信頼性は劣る。
  • 強力なレーダー波を照射するため、敵に攻撃を察知される。

 構造は4つの部分から構成されており、先端はセラミック製レドームにレーダー波シーカーと誘導装置を内蔵する誘導部分。その後ろは弾頭部分で、F型まではコンティニュアス・ロッドと呼ばれる、金属製の棒がリング状に広がるタイプだったが、M型からは指向性を持つ、爆風破片炸薬に変更された。弾頭の起爆はアクティブ・レーダ−近接信管によりおこなわれ、バックアップとして着発起爆モードも準備されている。弾頭の後ろには、オートパイロットと油圧装置を内蔵する飛行制御部分があり、外側にはクリップド・デルタ型の操舵翼4枚を装着する。最後部はMk58またはMk65固体推進薬ロケット・モーターを内蔵、外側には三角形の安定翼4枚が取り付けられている。Copyright (c)2002 Weapons School  All rights reserved.

 ベトナム戦争では米軍唯一の全天候、全方位攻撃、空対空ミサイルとして使用されたが、結果は惨憺たるもので、交戦規定の制約など外的要因もあり、命中率は10パーセント前後だった。以後、信頼性向上と格闘戦能力向上の改良を続け、湾岸戦争では多国籍軍の撃墜したイラク軍、航空機の67%はスパローによる戦果だ。しかし、その信頼性は依然として低く、71発 発射され、目標に命中したのは26発だった。

 スパローには、様々なタイプがあり、現在使用されている代表的なタイプをまとめると以下の様になる。

形式 AIM−7F AIM−7M AIM−7P AIM−7R
シーカー コニカル・スキャン モノパルス 赤外線
+モノパルス
弾頭 コンティニュアス・ロッド内蔵炸薬39kg 指向性爆風破片炸薬39kg
備考 ソリッドステート化により誘導部分を小型化、信頼性も向上。

ロケットモーターの大型化により射程伸びる

生産終了

新型アクティブ・レーダー信管

自己診断装置により信頼性向上

情報処理装置のデジタル化で電子妨害に対応

低空を飛行する目標も対処可能

米国では生産終了

信管・電子部品を改良。中間コースでのアップデート可能

海面スレスレを飛行する対艦ミサイル撃墜可能

生産中

新型信管と処理能力の向上

対電子妨害能力の強化

最新型

 また、派生型としては、艦艇防空用のシー・スパローミサイルのほか、イギリスのスカイ・フラッシュ、イタリアのアースピデなどがある。
                                        2003/1/01改訂


性能・諸元

AIM−7M
全長:3.64m
翼幅:1.0m
弾体直径:0.2m
射程:40km以上(推定値)
重量:約225kg
弾頭重量:39kg
誘導方式:セミ・アクティブ・レーダー・ホーミング
速度:マッハ4以上(推定値)
価格:約1500万円。
メーカー:レイセオン社他


参考文献

図解エアパワー最前線上・下 原書房 著者:アンソニー・ソーンボロ 監訳者:松崎豊一
図解・現代航空戦 著者:ビル・ガンストン、マイク・スピッツ 訳者:江畑謙介
戦場のIT革命 湾岸戦争データファイル 河津幸英 アリアドネ企画
トムキャット・ハンドブック 松崎豊一編著 原書房 
トム・クランシーの戦闘航空団解剖著者:トム・クランシー 訳:平賀秀明 新潮社
U・S・ウエポン・ハンドブック 宮本勲編著 原書房
Federation of American Scientistsホームページ
Jane's Air-Lunched Weapons Jane's Information Groups
U.S. Air Force Fact Sheet

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