JDAM  ジェイダムと読む。Joint Direct Attack Munitionの頭文字を取った造語。  直訳すれば統合直接攻撃弾薬  


解説                                     総合索引
 


 INS(慣性航法装置)
GPS(全地球測位システム)を利用した誘導爆弾。
Copyright (c)2002-2006 Weapons School  All rights reserved.
 投下後はレーザー誘導爆弾等の様に、母機から誘導する必要もなく、自律して指定された目標を攻撃する。目標を視認できない悪天候下でも、位置情報だけで爆撃可能である。運用上の柔軟性と取得価格の安さから、米軍の使用する誘導爆弾の主役となっている。


 Joint Direct Attack Munition の、Jointは空軍・海軍/海兵隊で使用されることを示し、Direct Attack Munitionは、射程の短い弾薬を表す。

【補足】
Direct Attack Munitionの意味については「単弾頭」とする書籍もあるが、Boeing社、J-DAMプログラム・マネージャーであるKim Michel氏の“Direct Attack means it's really short-range munition,not long-range powered Missile.”との発言から「射程の短い弾薬」とした。
  ※
本発言はヒストリーチャンネル、現代の驚異「スマート爆弾」から引用した。

 JDAMは、1992年開発に着手し、1999年に部隊配備を開始した。同年、コソボ紛争において、B−2ステルス爆撃機により初めて実戦使用された。コソボ紛争期間中、ユーゴスラビアの中国大使館誤爆事件を引き起こした。しかし、誤爆の原因は、JDAMの故障ではなく目標情報の確認ミスとされている。

 現在までに22万発以上生産され、米国以外ではイスラエル、オランダ、デンマーク、ノルウェーなど19ヶ国で使用されており、航空自衛隊もF−2用として導入を決定した。

 JDAMは、既存の無誘導爆弾(弾体)に、テール・セクション、ストレーキ等を取り付ける、モジュラー構造となっており構成は以下の通り。

  • 弾体

    破片・爆風効果を持つ低抵抗汎用爆弾Mk80シリーズのほか、航空機用強化シェルター・地下指揮施設破壊用の貫通爆弾BLU−109/Bなどがあり制式名称は以下の通り。
    Copyright (c)2002-2006 Weapons School  All rights reserved.
    制式名称 GBU−31 GBU−32 GBU−35 GBU−38
    タ イ プ 2000ポンド爆弾 1000ポンド爆弾 1000ポンド爆弾 500ポンド爆弾
    弾  体 Mk84
    BLU−109
    Mk83 BLU−110 Mk82
    BLU−111
    目  的 Mk84:人員の殺傷・施設等の破壊

    BLU−109/B:航空機用シェルター・地下指揮通信施設の破
    人員の殺傷、施設等の破壊 人員の殺傷、施設等の破壊

    海軍用
    人員の殺傷、施設等の破壊

  • ストレーキ

    弾体中央部に装着される、4枚の細長いストレーキ(翼)を持つ帯状の装置。投下高度、速度範囲を広げ、落下中の姿勢を安定させる役割を担う。また、限定的ではあるが揚力を発生し、投下軸線から離れた地点の攻撃も可能だ。射程は投下高度・速度により変化し、最大24kmである。


  • テール・セクション

    GPSINS誘導装置と飛行制御装置等を内蔵しており、尾部に3枚の操舵翼と、1枚の固定翼を装着する。最後部にはGPSアンテナが取り付けられている。



 JDAMの運用は、離陸前に目標の位置情報(緯度・経度・高度)、および弾着角度、方位などを入力する。なお、飛行中でも目標の変更は可能である。投下直前、母機から現在位置、高度、速度などの情報を受け取る。
 投下後は母機からの誘導を必要とせず、INSを主体とし、時間経過と共に増大する誤差を、GPSにより補正しながら目標に向かう。

 JDAMのCEP(半数必中界)の公称値は、GPSによる誤差補正を併用する場合、当初は13mとされていたが、改良により5m以内と大幅に向上した。しかし、電波妨害などによりGPS使用不可の場合は、INSのみとなるため、CEPは30mとなる。


 アフガニスタンでの「不朽の自由」作戦では、JDAMを搭載したB-52が数千メートルの高高度から、地上部隊の戦闘を直接支援する近接航空支援任務までもこなした。
 これはインド洋上の空母から、アフガニスタンまでの飛行距離が1000km以上あり、F/A-18などの戦闘攻撃機では、目的地上空での滞空時間を制限されたためでもあるが、敵対砲火に撃墜される危険を冒して、低空で実施していた近接航空
支援任務を、比較的安全な高高度から滞空時間が長く、搭載量の大きなB-52からでも、実施可能とした意義は大きい。

 JDAMは登場以来、改良が続けられており、命中精度を向上させ、移動目標も攻撃可能とするため、先端部分にレーザー・シーカー(探知機)を取り付けたLaser JDAMが2008年より部隊配備されている。

 また、データ・リンクを搭載し、航空機搭載型GMTI(地上移動目標指示)レーダーから、移動目標の位置情報を継続受信することにより、移動中の車輌・艦船などを攻撃可能とするAMSTE(Affordable Moving Surface Target Engagement:入手可能陸上・海上移動目標交戦)技術も開発中である。


 さらに、JDAMに翼を追加し、射程を60km以上に伸ばすJDAM−ERの開発も進められている。

                                                                           2011年5月 8日改訂


性能・諸元

GBU−31(V)3/B
全長:3.77m
射程:最大24km
弾体:BLU-109貫通爆弾
重量:961kg
価格:約180万円 弾体価格を除く。
メーカー:ボーイング社他


参考文献

宇宙システム兵器、プレデター無人機とJDAM 宮本勲 雑誌 軍事研究 2004年2月号  ジャパン・ミリタリーレビュー社
現代の驚異「スマート爆弾」ヒストリーチャンネル 2006年6月7日午後7時放送
ユーゴ空爆は新兵器の実験場 野木恵一 雑誌 軍事研究1999年8月号 ジャパン・ミリタリーレビュー社
AGS bids for expanded missions
JANE'S INTERNATIONAL DEFENCE REVIEW April 2005
A different kind of smart: weapon! becoming autonomous and precise  JANE'S INTERNATIONAL DEFENCE REVIEW January 2006
Boeing社ホームページ
Jane's Air-Lunched Weapons Jane's Information Groups
JDAM continues to be warfighter's weapon of choice by Staff Sgt. Ryan Hansen Air Armament Center Public Affairs 3/17/2006 - EGLIN AIR FORCE BASE, Fla. (AFPN) 

Global Security.orgホームページ
NATO Air-Launched Weapons Jeremy Flack The Crowood Press 

U.S. Air Force Fact Sheets

Aerospaceトップページへ

Top     Land      Sea     Others

 Copyright (c)2002-2006 Weapons School  All rights reserved.