TOW トウと読む 対戦車ミサイル・システムの名称。Tube-launched,Optically Tracked,Wire-guided(チューブ発射、光学追尾、有線誘導)の頭文字を取った造語。


解説.                  総合索引

 有線誘導の対戦車ミサイルおよび、照準器付き発射装置などを併せてTOWミサイル・システムと呼ぶ。

 
攻撃ヘリコプター、車輛、三脚などから発射され、戦車などの装甲車輛のほか、建物、ヘリコプターの攻撃にも使用される。制式名称BGM-71。
 TOWは射手がミサイルを直接操縦する必要は無く、命中までの間、照準器の中心線に目標を捕らえ続けるだけの半自動式、第二世代対戦車ミサイルだ。
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 TOWミサイルは米陸軍により、1962年開発に着手、1970年に部隊配備を開始した。現在までに50万発以上が生産され、40ヶ国以上で使用されている対戦車ミサイルのベストセラーだ。我国でも陸上自衛隊が攻撃ヘリコプターAH-1に使用している。

 実用化後、30年以上経過しているTOWミサイルは改良が続けられており、主なタイプの特徴を以下に挙げる。




タイプ TOW
BGM-71A
ITOW
BGM-71C
TOW2
BGM-71D
TOW2A
BGM-71E
TOW2B
BGM-71F
全長m
プローブ含む
1.16 1.53 1.60 1.60 1.17
弾頭 127mm
HEAT
改良型
127mm
HEAT
152mm
HEAT
152mm
HEAT
+小型HEAT
127mmEFP
2個
重量kg 18.8 19.0 21.4 22.6 22.6
最大射程m 3000 3750
最大飛行速度
毎秒/m
299 296 329 329 309
備 考 基本型
生産中止
適切なスタンドオフ距離確保のためプローブ装着
生産中止
弾頭大型化
サーマル・ビーコンを追加して夜間でも使用可能となる
ロケット・モーター改良
プローブ延長
生産中止
ERAに対抗するためタンデム弾頭に
現在生産中
EFP弾頭2個でトップアタック
照準線の2.25m上を飛行
現在生産中

 TOWミサイルの発射装置には目標を捕捉する光学・赤外線照準器とミサイルの飛行を制御する電子装置が内蔵されており、射手が捕らえる目標と、ミサイルのズレを検知、修正指示信号をミサイル後部から展開されるワイヤを通じて伝達する。


 ここでは、現在生産中のTOW2Aミサイルの構造に付いて解説する。
  前部は伸縮式プローブを持ち、先端に小型HEAT弾頭を装着してERA(爆発反応装甲)を無力化する。この後方は直径152mmのHEAT弾頭と安全装置を内蔵する弾頭部分で、最大800mmの圧延均質装甲板を貫通する。


 TOW2Bでは直径127mmのEFP(爆発成形弾)を2個、下向きに装着、照準線の2.25m上を飛行して、目標をレーザーおよび磁気で探知して攻撃する。ただし、友軍車輛および既に撃破した敵車輛の上を飛行させると誤作動の危険があるため、飛行経路を考慮する必要がある。なお先端のプローブは廃止された。

 
弾頭部分後方に電子装置を内蔵しており、コントロール・ワイヤを通じて発射装置からの飛行指示を受け取る。この後方は固体推進薬ロケット・モーターと折畳み式安定翼を収納、基部には機軸から30度の角度で左右2ヶ所にノズルが開口している。この後方はミサイルに電源を供給するバッテリーおよびミサイルの姿勢を検知するジャイロを搭載しており圧縮窒素ガスにより駆動される。
 ジャイロの後ろは圧縮ヘリウムガスを利用した飛行制御装置、発射用ロケット・モーターである。
 ミサイル後部には
照準器がミサイルを追尾するためキセノン・ビーコンおよびサーマル(赤外線)ビーコンと、長さ3750mのコントロール用ワイヤ-、折畳み式の操舵翼を収納する。

 TOWはグラスファイバー製コンテナに密封され、10年間以上整備不要で保存可能だ。

 発射手順は、コンテナを発射装置にセットし、自己診断プログラムでミサイルの状況を確認後、発射装置のコネクターを接続する。
 射手が照準装置の中心線に目標を合わせ、引金を引くと、窒素ガスが放出されジャイロの回転が4万2千回転以上に達し、発射用ロケット・モーターに点火される。引金を引いてからミサイルが実際に発射されるまで約1.5秒の遅れがある。
 発射用ロケットモーターはミサイルを毎秒約76mで射出する。この際、発射装置の中心線から、後方左右45度、距離50mの扇状の範囲は危険地帯となるため人員、物資、建物等が無いか事前に確認する必要があり、室内からの発射には危険を伴う。



 コンテナから射出されたミサイルはプローブと安定翼、操舵翼を展開、後部のキセノン、サーマル・ビーコンを作動させ、2対のコントロール・ワイヤを引き出す。発射装置から10mほど飛翔した時点でロケット・モーターに点火、1.6秒間燃焼してTOWを、毎秒329mに加速、安全装置も発射機から65m(TOW2Bは200m)で解除される。

 この後TOWは惰性で目標まで飛行する。この間、射手は照準器の中心線に目標を保持しなくてはならない。発射装置に内蔵された電子回路が、TOW後部のキセノンおよびサーマル・ビーコンと、照準線の差を検知、コントロール・ワイヤを通じ、飛行コースを制御して目標に向かう。最大射程3750mを飛翔するのに要する時間は21秒、速度は毎秒100mほどに低下してしまう。目標に着弾するとHEAT弾頭を起爆、発生するメタル・ジェットで装甲板を貫通、目標を破壊する。

 TOWミサイル運用上の制約は以下の通り

  • 照準器に目標を捕捉できない状態では使用不可。
  • 射手はミサイルが命中するまで照準器の中心線に目標を捕らえ続けなければならない。
  • TOWミサイルは飛行速度が遅く、ヘリコプターなど高速移動目標への交戦機会は限定される。
  • コントロール・ワイヤが途中の障害物などで切断されると制御不能となる。
  • コントロール・ワイヤが1100m以上水につかるとショートする可能性がある。また高圧線を超えて発射される場合、感電やコントロール不能となるケースもある。
  • 発射口より上下23cm、飛翔経路上下76cmは障害物がないこと。
  • 発射機後方、中心線より左右45度、距離50mの扇状地域は危険地帯、さらに25m後方は注意地帯とされ、建物や掩蔽壕内部からの射撃は危険。

 TOW2ミサイルにはミサイル先端形状を変更、空力特性を改善して最大射程を4500mとしたTOW2Bエアロや、無線誘導のTOW2 RFのほか、掩蔽壕など強固な施設を破壊するバンカー・バスター弾頭の搭載も検討されている。

                          2003/8/02制作


性能・諸元

BGM-71E TOW2A
全長:1.6m(プローブ含む)
最大射程:3750m
重量:22.6kg
弾頭:成形炸薬
誘導方式:光学式半自動
メーカー:レイセオン社他


参考文献

地上戦・先進ミサイル 軍事情報研究会 雑誌軍事研究 株式会社ジャパン・ミリタリー・レビュー
【大図解】最新兵器戦闘マニュアル 坂本明 株式会社グリーンアロー出版社
AH-1コブラ、AH-64アパッチ 世界の傑作機No34 株式会社文林堂
U・S・ウエポン・ハンドブック 宮本勲編著 原書房
AIRBORNE A Guided Tour of an Airborne Task Force  Tom Clancy  BERKLEY BOOKS
ANTI-TANK WEAPONS John Norris  Braasey's
Federation of American Scientistsホームページ
FIELD MANUAL No. 1-112 ATTACK HELICOPTER OPERATIONS U.S Army
FIELD MANUAL No. 1-140  HELICOPTER GUNNERY U.S Army
FIELD MANUAL No. 23-1 BRADLEY GUNNERY U.S Army
FIELD MANUAL No. 23-34  TOW WEAPON SYSTEMS U.S Army
Jane's AIR-LUNCHED WEAPONS Jane's Information Groups
Jane's INFANTRY  WEAPONS  Jane's Information Group
Through the chink in the armor Jane's INTERNATIONAL DEFENSE REVIEW  September 2002 Jane's Information Group
Raython社ホームページ
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