火星18 長距離弾道ミサイルの名称


解説                    総合索引  

 北朝鮮にて開発中の、自走式 起立発射機搭載型、3段式 長距離弾道ミサイル

 火星18は、北朝鮮では初の固体推進剤を使用した長距離弾道ミサイルである。全長約27m、最大直径2.2mで、最大射程は13000km以上と推測する。

 固体推進剤を採用した理由は、液体推進剤ミサイルに比べ、現場で毒性、引火性の高い推進剤注入の必要が無く、即応性、生存性に優れる事。また、構造が簡単で、整備維持も容易な点にある。
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 発射試験では、北朝鮮の平城付近から日本海に向けて最小エネルギー軌道発射され第1段分離後、仰角を大きく取り、飛翔距離を犠牲して、最高高度を稼ぐロフテッド軌道に移行、4月13日の発射試験では、最高高度5000km以下(韓国軍発表)、距離約1000kmを飛翔した。北朝鮮の発表によれば、第3段?の分離・点火を遅延させたとしている。

 
7月12日の発射試験では、最高高度6000km以上、距離 約1000km飛翔した。また、12月18日の発射試験に付いての詳細は不明で有るが、最高高度、飛翔距離等がほぼ同じであることから、同様の飛翔経路であると推測する。

発 射 日 時 最 高 高 度 飛 翔 距 離 備      考
2023年4月13日 5000km以下 約1000km 第1段最小エネルギー軌道
第2段目以降はロフテッド軌道
第3段?分離・点火を遅延
2023年7月12日 6000km以上 約1000km 第1段最小エネルギー軌道
第2段目以降はロフテッド軌道
2023年12月18日 6000km以上 約1000km 詳細不明



第1段だけ、最小エネルギー軌道で飛翔させる理由は?

北朝鮮では長距離弾道ミサイルを発射する場合、日本、米国を過度に刺激するのを避けるため、平壌近郊から、発射角度を大きく取り、飛翔距離を犠牲にして、最高高度を稼ぐロフテッド軌道を飛翔させるのが一般的である。

火星18の第1段だけ、最小エネルギー軌道で飛翔させる理由は、3段式のため、第1段の燃焼時間が、従来の2段式に比べ短く、フテッド軌道で発射すると、燃焼終了後の第1段が、北朝鮮国内に落下するのを防ぐ為であると推測する。

 火星18のCEP(半数必中界)は5km以上と、ピンポイント目標の攻撃には向かないが、大都市攻撃には十分な命中精度だ。弾頭重量は約1トンで、通常の高性能炸薬では破壊力は限定される。しかし、兵器などの大量破壊兵器を搭載すれば、目標に大きな損害を与え得る。
 
 火星18の構造に付いては、北朝鮮政府からの公式情報は無く、以下はWeapons Schoolの推測である。
  
 先端は、空気抵抗を減らし、空力加熱から弾頭を守るシュラウドに覆われている。弾頭は、1個もしくは複数の高性能炸薬、弾頭などを搭載できる。また、シュラウド内部には敵ミサイル防衛システムを混乱させるための囮(おとり)も搭載される。この後方は慣性航法装置、自動操縦装置などを内蔵する誘導制御部となっている。


 誘導制御部の後ろは、第3段となっており、直径1.9mのアルミニウム粉末を加えたコンポジット推進剤を使用したロケット・モーターである。飛行制御は、首振りノズルにより行われる。

 この後方は、第2段となっており、第3段と構造もほぼ同一だが、全長は約1m長い。

 第2段、後方は中間ステージと呼ばれる、第1段と第2段を接続する構造物が取り付けられる。

 第一段は直径約2.2mで、アルミニウム粉末を加えたコンポジット推進剤を使用したロケット・モーターである。飛行制御は、首振りノズルにより行われる。最後部は、キャニスター(発射筒)
からミサイルを撃ち出すための高圧ガスから、ノズルなどを保護するカバーを装着する。

 
火星18は、18輪の自走式起立発射機に搭載され、戦場を移動するため、生存性も向上する。

 また、ミサイル本体は、移動中の損傷および、温度、湿度、ゴミ、埃等から保護するため、キャニスターに格納されており、ミサイル本体を、そのまま搭載するより信頼性も高い。

 火星18を搭載した自走式起立発射機は、偵察衛星、偵察機などの監視から逃れるため、トンネル、地下施設などに待機する。発射指令を受けると、指定の発射場所に移動する。その後、発射筒を起立させ、ミサイルの機能確認後、高圧ガスによりキャニスターから射出する。飛び出したミサイルは、保護カバーを投棄、空中でロケット・モーターに点火して飛翔を開始する。この発射方式はコールド・ローンチ方式と呼ばれる。

  第1段燃焼終了後、シュラウドを投棄し、第2段、第3段 燃焼終了後に弾頭を分離する。弾頭は与えられた運動エネルギーにより、弾道飛行して目標に向かう。最高高度は、1000km以上、秒速6km(音速の18倍弱)以上の速度で大気圏に再突入する。再突入体は、大気の抵抗で高温、高応力にさらされ、ノドンなどの射程1200kmクラスの中距離弾道ミサイルに比べ、格段に高度な設計、製造技術を必要とする。


首振りノズル方式採用 着実に進歩する飛行制御技術

従来、北朝鮮の弾道ミサイルは飛行制御に
小型バーニア・エンジンもしくは、ノズル外周に推力偏向板を装着した飛行制御装置を使用していた。

火星18は、設計および製造の難しい首振りノズル方式を採用していると思われる。これは北朝鮮の技術レベル向上を示している。また、安定翼も装着していない事から、発射直後の極低速領域でも、首振りノズル方式により、安定して飛行させる制御技術を獲得したと推測する。


                            2024年 1月15日 改訂


性能・諸元

火星18

全   長:約27m
弾体直径:約2.2m(第1段)
重   量:約50トン
弾頭重量:約1トン
射      程:13000km以上

C E P:5km以上


参考文献

宇宙航行の理論と技術 河崎俊夫編著 地人書簡
北朝鮮が4月13日に発射した弾道ミサイルについて 令和5年4月21日 防衛省
北朝鮮のミサイル等関連情報 令和5年 7月12日 防衛省
北朝鮮のミサイル等関連情報 令和5年12月18日 防衛省
新版 日本ロケット物語 大澤弘之監修 誠文堂新光社

動画 https://www.youtube.com/watch?v=7cC1QMUcLLk YouTubeホームページ
North Korea’s New HS-18 Makes a Solid but Incremental Contribution to the ICBM Force BY: VANN H. VAN DIEPEN APRIL 20, 2023 38 North
North Korea says it tested 'Hwasong-18'solid-fuel ICBM for first time Collin Zwirko April 14,2023 NK NEWS web site
THE DPRK'S FIRST SOLID-PROPELLANT ICBM LAUNCH STRATEGIC DELIVERY VEHICLE DEVELOPMENT SERIES OPEN NUCLEAR NETWORK

Rocket Propulsion Elements Seventh Edition GEORGE P.SUTION OSCAR BIBLARZ A Wilery-interscience Pubulications
RUSSIAN STRATEGIC NUCLEAR FORCES Pavel Podvig編 The MIT Press
Second Consecutive Flight Test Success Brings North Korea7s Hwasong-18 ICBM Closer to Deployment BY:VANN H. VAN DIEPE JULY 18,2023 38 NORTH
What is North Korea's new solid-fuel missile -- named HS-18 ? Miscellaneous about space-rockets, missile-weapons and others Norbert Brügge, Germany





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