火星14 長距離弾道ミサイルの名称


解説                    総合索引  

 北朝鮮にて開発中の、自走式 起立発射機搭載型 2段式長距離弾道ミサイル

 
火星14は、2017年7月4日の発射試験で、その存在が明らかとなった、全長約19mの大型ミサイルである。 最大射程は8000km以上と推測され、米国本土も攻撃可能だ。
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 火星14のCEP(半数必中界)は8km以上と、ピンポイント目標の攻撃には向かないが、大都市攻撃には十分な命中精度だ。弾頭重量は約500kgで、通常の高性能炸薬では破壊力は限定される。しかし、兵器などの大量破壊兵器を搭載すれば、相手方に大きな損害を与え得る。北朝鮮は、弾道ミサイルに搭載可能な、小型・軽量の核兵器を開発したと発表しているが、同国の技術レベルからすると疑問点も多い。

 2017年7月28日に、実施された第2回目の発射試験では、北朝鮮内陸部の舞坪里(ムピョンニ)付近から発射され、最高高度は3500kmを大きく超え、距離 約1000kmを飛翔し、北海道色丹島の西約200kmの日本海に落下した。  


米国本土も射程内に!!

今回の発射試験では、最高高度は3500kmを超えている。これは、発射角度を大きくとり、飛翔距離を犠牲にしたロフテッド軌道を選択したと考えられる。飛翔距離を稼ぐ、最小エネルギー軌道で発射したと仮定すると、8000km以上を飛翔可能で、北朝鮮の弾道ミサイル技術は、遂に、米国本土を射程内とした。


 火星14の構造に付いては、北朝鮮政府からの公式情報は無く、以下はWeapons Schoolの推測である。
  
 先端は、チャフ、デコイ(囮)なども収容可能な、シュラウドと呼ばれるカバーが取り付けられる。この内部には、再突入体が装着されており、高性能炸薬、兵器などを搭載できる。この後方は慣性航法装置、自動操縦装置などを内蔵する誘導部分となっている。

 
この後ろは直径1.3mの第2段で、液体推進剤タンクと、ムスダンに使用されているバーニア・エンジン2基を搭載する。

 第2段後方は、火星12の推進装置を改良した、直径1.7mの第1段で、燃料
UDMH(Unsymmctrical Dimethyl Hydrazine:非対称ジメチルヒドラジン)タンク、酸化剤である四酸化二窒素タンクと、新型 主ロケット・エンジン1基を内蔵する。飛行制御は、4基のバーニア・エンジンによる推力偏向により行われる。

    

 
火星14は、16輪の中国製 特殊車両(WS51200)を改造した、自走式発射機に搭載され、偵察衛星、偵察機などの監視から逃れるため、トンネル、地下施設などに待機し、発射指令を受けると、指定の発射場所に移動する。この位置を特定し攻撃・破壊することは、衛星、無人航空機による戦場監視が発達した今日においても困難である。

 発射場所に到着すると、ミサイルを垂直に起立させ、機能確認などを実施の後、ミサイルを搭載した発射台を切り離し、自走式発射機は退避する。これは、火星14発射時の強力な排気炎により、自走式発射機が、損傷するのを防ぐと共に、戦場における生存性も高める。

  発射後は、第一段、燃焼終了後、シュラウドを投棄し、第二段に点火、燃焼終了後、再突入体を分離する。その後、再突入体は与えられた運動エネルギーにより、弾道飛行して目標に向かう。


 最高高度は、1000km以上、秒速6km(音速の18倍弱)以上の速度で大気圏に再突入する。再突入体は、大気の抵抗で高温、高応力にさらされ、ノドンなどの射程1200kmクラスの中距離弾道ミサイルに比べ、格段に高度な設計、製造技術を必要とする。

                            2017年 9月18日 改訂


性能・諸元

火星14

全   長:約19m
弾体直径:約1.7m(第一段中央部) 約1.3m(第2段)
重   量:約40トン
弾頭重量:約500kg(再突入体)
射      程:8000km以上

C E P:8km以上


参考文献

北朝鮮による弾道ミサイルの発射について(第2報) 防衛省 平成29年7月29日
ミサイル入門ホームページ
DPRK "Hwasong-14" Video Launch Inter-Continental Ballistic Missile You Tube https://www.youtube.com/watch?v=Ahdu9VO03B8
Hwasong-14 launch video, July 28, 2017 You Tube https://www.youtube.com/watch?v=WgNViGZZ3pk

The newest North Korean nuclear ICBM "Hwasong-14" Space Launch Vehicles all of the world by Norbert Brügge
What is True and Not True About North Korea’s Hwasong-14 ICBM: A Technical Evaluation BY: JOHN SCHILLING 38NORTHホームページ


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