チョンリマ(千里馬)1  人工衛星打上げ用ロケットの名称


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 北朝鮮により開発された、多段式 人工衛星打上用ロケット。

 チョンリマ1は、2023年11月21日、午後10時43分頃、北朝鮮 北西岸のトンチャンリ(東倉里)付近から発射され、偵察衛星マンリギョン(万里鏡)1を、高度約500km、軌道傾斜角97.4度の太陽同期軌道への投入に成功した。北朝鮮による偵察衛星の打上は同年5月、8月にも実施されたが、何れも失敗しており、今回の打上は3度目である。

太陽同期軌道とは

マンリギョン1は、地球の赤道面に対して97.4度の傾きを持ち、地球を約95分で1周する。本軌道は、地球の公転に同期しており、地球表面への太陽光方向は一定となるため、同一条件下での観測(偵察)に適している。


 チョンリマ1の構造に付いては、北朝鮮政府からの公開情報は無く、以下はWeapons Schoolの推測である。

 構造は大きく5つに区分される。

  • フェアリング

     搭載する偵察衛星を、雨、雹(ひょう)、落雷、空力荷重、空力加熱、大音響等から保護するカバー
     大気圏を抜けると投棄される
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  • 誘導制御部

     ロケットの頭脳 慣性航法装置、自動操縦装置などを搭載、姿勢および各段分離・点火タイミング、飛翔経路を制御する
  • 第3段

     酸化剤である四酸化二窒素タンク、燃料のUDMH(Unsymmctrical Dimethyl Hydrazine:非対称ジメチルヒドラジン)タンクと、火星14に使用されている主ロケット・エンジン1基を内蔵する。飛行制御は、4基のバーニアエンジンによる推力偏向により実施される

  • 第2段

     第3段に比べ、全長が約0.8m長い以外は、ほぼ同一構造

  • 第1段

    酸化剤である四酸化二窒素タンク、燃料のUDMH(Unsymmctrical Dimethyl Hydrazine:非対称ジメチルヒドラジン)タンクと、火星17のロケット・エンジン4基を搭載しており、飛行制御は、各エンジンの推力偏向により実施される

 発射時、第1段は分離後、分解した。フェアリングは高度100km以上で分離。その後、第二段に点火して軌道を変更、分離後、第三段に点火、軌道を更に変更するドックレッグ・ターンを行い、所定の高度で偵察衛星を分離、太陽同期軌道への投入に成功した。

第1段、分解?

第1段は分離後、分解して広範囲に落下した。当初は、打ち上げの失敗も考えられた。しかし、第2段は落下予定
海域に落下しており、衛星の軌道投入も確認されている事から、第1段が分解したのは故障等ではなく、海上に落下した第1段を、韓国軍等に回収させない為、あえて空中で破壊したものと推測する。

 チョンリマ1は、大型で、大規模な発射設備を必要とするため、実戦使用には不向きである。しかし、使用されている、ロケット技術は長距離弾道ミサイルの技術を流用していると推測する。

偵察衛星として機能しているか?

北朝鮮はマンリギョン1により、韓国、ハワイ、グアム等を偵察したとしている。しかし、その画像は現時点では公開されていない。その理由は以下のいずれかであると推測する。
  • 偵察衛星の撮影画像は軍事機密のため非公開(解像度等が明らかとなる)
  • 偵察衛星の機能調整中
  • 軌道投入には成功したものの、偵察衛星として機能していない

                        2024年1月15日 改訂


性能・諸元

チョリマ1
全   長:約35m
弾体直径:第1段約3m/第2段約2.5m
重   量:約100トン
衛星重量:1000kg以下


参考文献

宇宙航行の理論と技術 河崎俊夫編著 地人書館
北朝鮮のミサイル等関連情報 令和5年11月22日 防衛省
航行警報 番号:23-1825 発表日時:2023年11月21日 02時 海上保安庁
偵察衛星を成功裏に打ち上げる 11月22日 朝鮮中央通信
North Korea successfully launches the Malligyong-1 reconnaissance satellite Wednesday 22 November 2023 SatTrackCam Leiden (b)log
Rocket Propulsion Elements GEORGE P.SUTTON OSCAR BIBLARZ A Wiley-interscience Publication
RUSSIAN STRATEGIC NUCLEAR FORCES Oleg Bukharin他 The MIT Press


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