解説 総合索引
レオパルド2・M1エイブラムスなどの複合装甲を持つ戦車には、モンロー効果を利用した、HEAT弾は、ほとんど無力で、これを撃破するため、細長い槍の様な弾体で装甲板を貫くAPFSDS弾が、戦車砲弾の主役となって来ている。Copyright
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School All rights reserved. 弾芯が持つ運動エネルギーを増加さるためには、速度、重量が同一条件なら、弾芯の直径が小さくなるほど、単位面積当たりのエネルギー量も増加する。このため、最近のAPFSDS弾は、弾芯の長さと直径の比率が20を越えるものもある。しかし、むやみに長さと直径の比率を上げて、細長い弾芯を作っても、強度が不足していると、弾着時の衝撃で、弾芯が折れたり、砕けてしまう。湾岸戦争時、イラク軍戦車が使用したAPFSDS弾の弾芯には寸鉄が使用されたため、米軍のM−1エイブラムス戦車に当たっても貫通しなかった。 弾体に使用される金属は、高強度・高密度が要求されタングステン合金かDU(劣化ウラン)が使用される。特にDUはタングステン合金に比べて、密度・強度が大きく、装甲板貫通後、粉末状態となると、自然発火するため、焼夷効果も期待できる。しかし、目標を破壊する際に、粉末状に飛び散った破片の微量な放射能による環境汚染や呼吸により肺に取り込まれると、肺ガンを引き起こすとされ、ドイツなどでは使用していない。Copyright (c)2002 Weapons School All rights reserved. APFSDS弾の構造は、大きく三つに区分される。弾芯を内蔵する、細長い弾体。この弾体を取り巻く様3-4分割された、つづみ型のアルミニウムや複合素材製の装弾筒が装着される。装弾筒の下には、発射薬と、雷管を内蔵する薬莢がある。レオパルド2やM1A1エイブラムスなどに使用されている、120mm滑腔砲では発射時に、薬莢は弾底金属板を残して燃え尽きるので、105mm弾の様に熱い薬莢が砲塔内に転がると言ったことが無い。 さらに弾体を詳細に見ると、弾体の頭部には空気抵抗を低減させる鋼鉄などで作られた円錐形の風防。このすぐ後ろに、直径約30mm、長さは600mmほどの貫徹体と呼ばれる細長い弾芯と、弾道を安定させるための、固定式安定翼が尾部に取り付けられる。安定翼後部には曳光弾が取り付けられており、約3秒ほど燃焼して、弾着位置の観測を容易にしている。 弾芯の直径が戦車砲の口径120mmより小さいため、そのままでは、発射薬が発生する高圧ガスが弾体周りから逃げてしまう。そこで直径120mmの装弾筒を装着することにより、発射薬エネルギー逃がさず、有効に利用できる。 弾体が砲口から離れると同時に、空気抵抗により、装弾筒を固定していた、樹脂製バンド(緊塞帯)が引きちぎられ、分割された装弾筒は弾体から離れる。以後は細長い槍の様な弾芯だけが、目標に向けて飛ぶ。砲口速度は1740m/秒(音速の5倍)に達し、距離2000mで560mmの圧延均質装甲板を貫通する。 APFSDS弾は、強力な貫通力を持ち、戦車砲の主力弾種となっており、ERA(爆発反応装甲)はもちろん、複合装甲をも打ち抜く。これに対抗するため、最近では砲塔前面にくさび形の追加装甲を装着するショト装甲も開発されている。ショト装甲の詳細は不明だが、板状の装甲板が斜めに内蔵されており、APFSDS弾にも有効であるとされる。 性能・諸元 ラインメタル社製120mm APFSDS−T DM43A1 参考文献 戦車砲と戦車砲弾の発達 野木恵一 雑誌PANZER 95年12月号 Copyright (c)2002 Weapons School All rights reserved. |