解説 総合索引 SEAD(敵防空網制圧)専用の米空軍、戦闘爆撃機に付けられた名称で、対空兵器レーダーに対する、野生のイタチのように、敏捷な攻撃力に由来する。 ワイルド・ウィーズルの任務は、攻撃部隊より、一足先に敵地に侵攻して、脅威となる、敵対空兵器レーダーを発見、HARMや精密誘導爆弾・クラスター爆弾などで制圧することだ。この間に攻撃部隊は目標の攻撃を行い、離脱する。ワイルド・ウィーズルは攻撃部隊の離脱を見届けるまで、上空に留まり、対空陣地に睨みを利かせ、最後に離脱する、最も危険で過酷な任務をこなす。彼らのモットーは”First in Last out”「最初に飛び込み、最後に離脱」である。このため、乗員は特別な訓練を受け、レーダー警戒装置など、高度な電子装備をした専用機を使用する。 ワイルド・ウィーズルの誕生は、1965年のベトナム戦争にさかのぼる。当時、米軍は、地対空ミサイルの脅威に対抗するため、地対空ミサイル陣地に攻撃部隊を送り込み、僅か4ヶ月の間に、8箇所の地対空ミサイル陣地を攻撃破壊した。しかし、米軍側も8機撃墜され、他にも多数の機体にダメージを受けた。
これらの機体で最も成功したのはF−4Gである。F−4GはF−4Eからバルカン砲を取り外し、レーダー警警戒装置を搭載、敵レーダーの種類・位置を正確に特定して、搭載するHARMやAGM−65マーべりックなどで攻撃、破壊する。1991年の湾岸戦争では、その性能を遺憾なく発揮した。 F−4Gは既に、退役しており、現在はHTSを搭載して、脅威となる電波を自動処理できる、単座のF−16Cブロック50/52がワイルド・ウィーズルとしてSEADをおこなっている。しかし、HTSには、F−4Gに搭載されたレーダー警戒装置ほどの、警戒範囲・精度はない。また、パイロットは一人で、操縦とEWOの仕事を、こなさなくてはならない。これらの点から、F−16ワイルド・ウィーズルの能力は、F−4Gに劣るとされ、米空軍関係者の間では、複座SEAD専用機の開発を望む声が強い。
参考文献
図解エアパワー最前線上・下 原書房 著者:アンソニー・ソーンボロ 監訳者:松崎豊一 Copyright (c)2002 Weapons School All rights reserved. |