WILD WEASEL ワイルド・ウィーズル「野生のイタチ」を意味する。SEAD専用機の名称。 


解説                             総合索引

 SEAD(敵防空網制圧)専用の米空軍、戦闘爆撃機に付けられた名称で、対空兵器レーダーに対する、野生のイタチのように、敏捷な攻撃力に由来する。

 ワイルド・ウィーズルの任務は、攻撃部隊より、一足先に敵地に侵攻して、脅威となる、敵対空兵器レーダーを発見、HARMや精密誘導爆弾・クラスター爆弾などで制圧することだ。この間に攻撃部隊は目標の攻撃を行い、離脱する。ワイルド・ウィーズルは攻撃部隊の離脱を見届けるまで、上空に留まり、対空陣地に睨みを利かせ、最後に離脱する、最も危険で過酷な任務をこなす。彼らのモットーは”First in Last out”「最初に飛び込み、最後に離脱」である。このため、乗員は特別な訓練を受け、レーダー警戒装置など、高度な電子装備をした専用機を使用する。

 ワイルド・ウィーズルの誕生は、1965年のベトナム戦争にさかのぼる。当時、米軍は、地対空ミサイルの脅威に対抗するため、地対空ミサイル陣地に攻撃部隊を送り込み、僅か4ヶ月の間に、8箇所の地対空ミサイル陣地を攻撃破壊した。しかし、米軍側も8機撃墜され、他にも多数の機体にダメージを受けた。
 こうした、攻撃部隊の損害を減らすため、急遽考案されたのが、複座のF−100Fにレーダー警戒装置を装備した機体だった。ワイルド・ウィーズルの名称は当初、開発計画のコードネームであったが、後にSEAD専用機の名称となった。以後、EF−105F、F−105G、F−4C/D、F−4Gがワイルド・ウィーズルとして使用された。Copyright
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  これらの機体で最も成功したのはF−4Gである。F−4GはF−4Eからバルカン砲を取り外し、レーダー警警戒装置を搭載、敵レーダーの種類・位置を正確に特定して、搭載するHARMやAGM−65マーべりックなどで攻撃、破壊する。1991年の湾岸戦争では、その性能を遺憾なく発揮した。
 注目しなければならないのは、最初のF−100FからF−4Gまでの機体、全てが複座タイプの戦闘爆撃機であった点だ。前席にはパイロットが、後席には、レーダー警戒装置をはじめとする、電子戦装備を操作して、最も脅威となるなる目標を選択、シュライクやHARMを打ち込むEWO(電子戦士官)が搭乗した。様々な種類の対空兵器レーダー電波が使用され、しかも地形などで乱反射した電波の中から、脅威度の高いものを選び出して攻撃するには、EWOの存在は不可欠であった。


   F−4Gは既に、退役しており、現在はHTSを搭載して、脅威となる電波を自動処理できる、単座のF−16Cブロック50/52がワイルド・ウィーズルとしてSEADをおこなっている。しかし、HTSには、F−4Gに搭載されたレーダー警戒装置ほどの、警戒範囲・精度はない。また、パイロットは一人で、操縦とEWOの仕事を、こなさなくてはならない。これらの点から、F−16ワイルド・ウィーズルの能力は、F−4Gに劣るとされ、米空軍関係者の間では、複座SEAD専用機の開発を望む声が強い。

 


参考文献

図解エアパワー最前線上・下 原書房 著者:アンソニー・ソーンボロ 監訳者:松崎豊一
トム・クランシーの戦闘航空団解剖著者:トム・クランシー 訳:平賀秀明 新潮社
U・S・ウエポン・ハンドブック 宮本勲編著 原書房
AIRBORNE ELECTRONIC WARFARE: Jane's Publishing Company Limited 
From SEAD to  DEAD: Gert Kromhout:MILITARY TECHNOLOGY 2000/12
Jane's Air-Lunched Weapons Jane's Information Groups
WILD WEASEL Larry Davis squadron/signal publications
U.S. Air Force Fact Sheet


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