ストームブレーカー  小型精密誘導爆弾の名称 


解説                     総合索引

 ストームブレーカーは、SDB(小直径爆弾)の発展型として、開発された全天候型、滑空式 小型精密誘導兵器である。当初はSD
BU(2)と呼ばれていたが、制式名称はGBU-53/Bストームブレーカーとなった。

 SDBの誘導方式はGPS(全地球測位システム)・INS(慣性航法装置)誘導のみ為、用途は固定目標攻撃に限定されており、車輌、艦艇などの移動目標攻撃には向かない。
 そこで夜間はもちろん煙、霧、雨などの悪条件下においても、移動目標を攻撃可能な発展型として開発された。途中、計画の遅れや開発費用の高騰に悩まされながらも、2015年に低率量産を開始した。
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 ストームブレーカーの最大の特徴は、レーザー誘導爆弾JDAMに比べ小型・軽量のため、航空機に搭載できる弾数が増え、目標周辺への爆風・破片被害範囲を限定できる点にある。また、70kmを越える射程は発射母機の生存性を高める。


 しかし、マルチ・モード・シーカーを搭載するため価格はおよそ1500万円と、SDBに比べ3倍以上高く、固定目標などにはSBDを、移動目標にはストームブレーカーと言った、目標に応じた効率的な運用が求められる。

    

 ストームブレーカーの構造に付いて解説する。

 先端部分はマルチ・モード・シーカー(探知機)を搭載しており、開口部を保護するためカバーを装着する。シーカーは以下の機能を持つ。

シ ー カー 機 能 利      点 欠      点
画像赤外線(非冷却型) 夜間でも目標捕捉・識別可能
解像度はミリ波レーダーより優れる
冷却を必要としない為、補給・整備は容易
距離情報は得られない
煙、霧、雨には弱い
温度差の少ない目標は捉え難い
冷却型に比べると感度は劣る
ミリ波レーダー 夜間、煙、霧、雨でも目標の形状、距離情報を取得可能 画像赤外線に比べ解像度は劣る
大雨、雪等には弱い
コード化されたレーザー反射光 目標をピンポイントで選択可能
他の航空機、地上部隊からの誘導も可能
目標にレーザーを照射する必要あり
煙、霧、雨などには弱い

 ミリ波レーダーおよび画像赤外線からの情報を統合する事で、夜間だけでなく、煙、霧、雨などの悪条件下でも自律して目標を発見、識別し、最適な攻撃部分を選定可能だ。この他、セミ・アクティブ・レーザー誘導、またはINS・GPSのみを使用した交戦も可能なため、運用上の柔軟性は高い。

 マルチ・モード・シーカー後方は弾頭部分となっており、小型成形炸薬および爆風・破片炸薬を内蔵、装甲車両、建物、歩兵、物資集積場など目標に応じて、遅延、瞬発、近接モードから最適な起爆モードを選択する。弾頭部分上には折り畳み式主翼を装着し、投下後、展開される。

 この後方は誘導・飛行制御部分となっており、INS・GPSおよび自動操縦装置、熱電池、データリンク装置、飛行制御装置を内蔵する。外側には4枚の操舵翼が折り畳まれており、投下後、展開する。     

貫通力は低下?

移動目標も攻撃可能なストームブレーカーだが、厚さ1.5mの鉄筋コンクリートを貫通できるSDBに比べ貫通力は劣ると推測する、その理由は以下の通り

 小型成形炸薬による貫通力は限定的
 弾頭部外側の肉厚は薄い
 SDBに比べ弾体重量は37kg軽い

 発射前、搭載母機から現在位置、速度、目標情報等を受け取る。発射後は主翼、操舵翼などを展開、INS・GPS誘導により目標付近に到達すると、シーカーのカバーを投棄、マルチ・モード・シーカーにより自律して目標を補足、識別し、最適な攻撃部位を選定し、目標を破壊する。また、データリンクにより、発射後、目標を変更したり、他のストームブレーカーと情報交換を行い、群れとして作戦行動をすることも可能である。

 空軍はF−15Eストライクイーグル、海軍ではF/A-18E/Fスーパーホーネット、F−35への搭載試験を実施中だが、F-16、B-1、B-2、B-52他、MQ-9等の無人機への搭載も検討されている。また、オーストラリアも購入を予定している。

                            2022年2月19日 改訂


性能・諸元

GBU-53/B
全長:1.75m
弾体直径:0.18m
射程:70km以上(発射時の高度・速度等により変化する)
重量:93kg
誘導方式:中間誘導:INS・GPS 終末誘導:ミリ波レーダー、画像赤外線、セミ・アクティブ・レーザー
メーカー:レイセオン社 他


参考文献

ミサイル技術のすべて 兵器と防衛技術シリーズB 防衛技術ジャーナル編集部編 (財)防衛技術協会
Air Force & Space Force ALMANAC 2020 Air Force Association
FY2021 Annual Report Director, Operational Test & Evaluation January 2022 
MINIATURE MUNITIONS:IS THE US MILITARY PREPARED TO SUPPORT MAJOR COMBAT OPERATIONS?  Kevin P. Sweeney ,Maj,USAF A Research Report Submitted to the Faculty In Partial Fulfillment of the Graduation Requirement
Moving Target:Raytheon's GBU-53 Small Diameter Bomb II Jan 26.2022 DEFENSE INDUSTRY DAILY
Raytheon社ホームページ
Selected Acquisition Report RCS:DD-A&T(Q&A)823-439 Small Diameter Bomb Increment II(SDB II) Defense Acquisition Management Information Retrieval
THE NAVAL ORDNANCE MANAGEMENT POLICY(NOMP)MANUAL DEPARTMENT OF NAVY OFFICE OF THE CHIEF OF NAVAL OPERATIONS WASHINGTON D.C
Weapon Systems Annual Assessment Updated Program Oversight Approach Needed June 2021 A Report to Congressional Committees  United States Government Accountability Office


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