黄燐弾  黄燐(白燐)を充填した弾薬の名称。

解説　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　総合索引

　黄燐弾は、黄燐(別名：白燐)の燃焼により白煙を発生する。米軍ではＷｈｉｔｅ Ｐｈｏｓｐｈｏｒｕｓ(黄燐)頭文字を取ってＷＰ(ウィリー・ピート)と呼ぶ。Copyright (c)2006 Weapons School　 All rights reserved.
　黄燐弾は、煙幕を張るための発煙弾として、世界各国の軍隊において、砲弾、ロケット弾、手榴弾などに広く使用されている。
　なお、発煙弾には六塩化エタン(Hexachloroethane：ＨＣ)や、赤燐(Ｒｅｄ Ｐｈｏｓｐｈｏｒｕｓ：ＲＰ)などを主成分とするタイプもある。

　黄燐は、無色または淡い黄色をしたロウ状の固体、もしくは結晶体である。

　黄燐弾は、黄燐を充填し、中心にテトリルなどを入れた、炸薬筒を設置する。信管は、瞬発もしくは時限信管を主に使用する。

　信管の作動により、炸薬筒は破裂して弾殻を破壊、黄燐を飛び散らせる。黄燐は、自然発火して、リン酸化物を生成する。この粒子は空気中の水分を取り込み、微細な水滴として成長、瞬時に濃密な白色の煙を発生させる。
　発煙状況および効果は、湿度、温度、風向、風速などの気象条件に影響される。

　黄燐燃焼時に発生するガスは有毒である。また、黄燐は、皮膚に付着すると火傷を生じ、皮膚、筋肉、骨を浸食する。
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補足：
一部マスコミ報道では、黄燐弾を「化学兵器」としているが、黄燐弾は、化学兵器禁止条約(Chemical Weapons Convention: CWC)に定義される「化学兵器」ではない。

黄燐弾の主な使用目的は

  • 敵の観測を妨げ、味方の行動や意図を隠す
  • 敵の照準を妨害し、敵砲火の効果を減少させる
  • 目標の標示
  • 焼夷効果により、敵の補給物資集積場などを炎上させる

　黄燐は、有毒であり、自然発火するため、黄燐弾の保管、取り扱いには注意を要する。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　２００６年１２月　６日改訂

性能・諸元

Ｍ１１０　ＷＰ/Ｓｍｏｋｅ　１５５ｍｍ発煙弾
全　　　長：７０ｃｍ(信管装着時)
重　　　量：４４．７ｋｇ
充　填　物：黄燐　約７ｋｇ

参考文献

火器弾薬技術ハンドブック(改訂版)弾道学研究会編　防衛技術協会
外務省ホームページ
危険物データブック　東京消防庁警防研究会監修　丸善株式会社
コンパクト板　化学物質安全性データブック(改訂増補版)　化学物質安全情報研究会編　株式会社オーム社
生物化学兵器の真実　Ｅ.クロディー著　常石敬一・杉島正秋訳　シュプリンガー・フェアラーク東京株式会社
日本砲兵史　陸上自衛隊　富士学校特科会　原書房
AMMUNITION　FOR　THE　LAND　BATTLE 　Ｐ Ｒ Ｃｏｕｒｔｎｅｙ-Ｇｒｅｅｎ  Brassey's
Federation of American Scientistsホームページ
FIELD MANUAL No. 23-90 MORTARS U.S Army
FIELD MANUAL No. 6-40 Tactics, Techniques, and Procedures for THE FIELD ARTILLERY　MANUAL CANNON GUNNERY  U.S Army
FIELD MANUAL No. 71-1 TANK AND MECHANIZED INFANTRY COMPANY TEAM  U.S Army
Global  Security.orgホームページ
Jane's AMMUNITION HANDBOOK　１９９７−９８Ｔｅｒｒｙ　Ｊ　Ｇａｎｄｅｒ  Jane's Information Group
Organisation for the Prohibition of Chemical Weapons (OPCW)ホームページ

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