ＭＡＣＳ  Modular Artillery Charge Systemの頭文字を取った略語
意訳すればモジュール式榴弾砲装薬システム

解説　　　　　　　　　　　　　　　　      総合索引

　１５５ｍｍ榴弾砲に使用されるモジュール式装薬システムの名称。
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　米軍では、１５５ｍｍ榴弾砲用として、４種類の装薬を射程に応じて使い分けており、取り扱い、供給ともに煩雑であった。
　また、射程によっては、不要となる装薬が発生する場合もあり無駄が多いため、射程に応じて個数を増減するだけのモジュール式装薬の開発に１９８０年代後半に着手し、２００４年に部隊配備を開始した。
　１５５ｍｍ榴弾砲用モジュール式装薬は、英、仏、独などのＮＡＴＯ諸国でも、ほぼ同様のタイプを開発している。

　　　　　
　当初は、１種類のモジュールを、射程に合わせて増減する、ユニチャージと呼ばれる装薬の開発を目指した。しかし、砲身長５２口径の長い砲身を持つ榴弾砲では、モジュール１個もしくは２個の場合、所定の薬室内圧力が得られない、また発射薬の異常燃焼などの問題が生じた為、モジュールを２種類として対処した。
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　ＭＡＣＳには、近距離用Ｍ２３１と遠距離用Ｍ２３２がある。直径・長さ共、約１５ｃｍの円筒形で、識別のためＭ２３１は、緑色に黒帯、Ｍ２３２は薄茶色で、両端面に４ヶ所突起があり、夜間でも識別を可能にしている。
　　　　
　Ｍ２３１は１個または２個で使用される。Ｍ２３２は３個以上で使用され、３９口径砲身では５個まで、５２口径砲身では最大６個まで使用可能である。なお、Ｍ２３１とＭ２３２の混用は禁止されている。
　　　

　Ｍ２３１とＭ２３２の基本構造は共通で、硬質円筒形焼尽ケースの中央部に点火薬、周辺部には発射薬を収納する。点火薬収納部の両端は、赤色プラスチックフィルムで密封されているため湿気にも強い。また、装填時に点火薬を砲尾側に装填しなければならない従来型装薬とは異なり、両方向から点火可能である。

　発射薬は求められる燃焼特性が異なるため、Ｍ２３１はシングルベースのＰＡＰ７９９３を使用している。Ｍ２３２ではトリプルベースのＭ３０Ａ２を使用し、砲口炎を減少させる消炎剤、砲腔に付着した銅を取り除く除銅剤なども添加される。
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　焼尽ケースは、ニトロセルロースを主成分とし、発射薬燃焼の際には共に燃焼して、燃焼ガスの発生にも一役買う。この他、ニトロセルロースの自然分解を防止する安定剤、補強剤として紙パルプ、粘結剤に合成樹脂等を加える。
　従来型布製装薬は、自動装填装置に不向きだったが、本ケースは硬質のため自動装填装置に適応する。さらに、従来型装薬は、点火薬および発射薬の吸湿防止のため、使用直前に保管・輸送用コンテナから取り出していたが、ＭＡＣＳでは、コンテナから取り出された後も、７日間以上使用可能である。

　　　　

　ＭＡＣＳの利点を以下に挙げる

• ４種類の装薬が、２種類となり取扱い補給共に簡素化される。
  
  
• 従来型装薬では、射程により不要となる薬嚢が発生する場合があり、焼却処分していた。
  ＭＡＣＳでは、未使用分は次回使用可能であるため、無駄が無い。
  
  
• 両方向から点火可能のため、薬室への装填時、方向性を確認する必要がない。
  従来型装薬は、点火薬は片側のみに装着されているため、装填方向を確認する必要がある。
  
  
• ＭＡＣＳは保管・輸送用コンテナから取り出し後も、１週間以上使用可能。
  従来型装薬は吸湿防止のため、使用直前まで取り出し不可。
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• 硬質焼尽ケースにより、自動装填装置を使用した無人装填が可能となり、発射速度も上がる。
  従来型装薬は布製で、自動装填装置には不向きなため、人力で装填する必要がある。
  
  
• 焼尽ケースは、布製装薬に比べ燃焼後の燃え残りが少ない。
  
  
• 被弾よる衝撃および熱により、発火、爆発する可能性の低い点火薬、発射薬を採用しており安全性が高い

　ＭＡＣＳは、米軍の保有するＭ１９８、Ｍ７７７榴弾砲、およびＭ１０９Ａ６自走榴弾砲、開発中のＮＬＯＳ-Ｃ(非照準線砲)自走砲にも使用可能である。また、ＮＡＴＯ諸国の保有するＦＨ-７０などの３９口径砲身榴弾砲や、ＰｚＨ２０００などの５２口径砲身榴弾砲にも使用可能である。
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　M２３２は５２口径砲身に最適化されているため、砲身の短い３９口径砲身の榴弾砲に使用する場合、砲身寿命が短く、砲弾発射時の爆風も大きい等の問題点があり、これに対処するため３９口径砲身に最適化したM２３２A１も開発された。


　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　           ２００８年１２月１６日作成

性能・諸元

参考文献

火器弾薬技術ハンドブック(改訂版)　弾道学研究会編　財団法人　防衛技術協会　刊
日本砲兵史　陸上自衛隊富士学校特科会　原書房
36Th ANNUAL GUN AND AMMUNITION SYMPOSIUM  April 9-12,2001 GIAT Industries SNPE
American Ordnance社ホームページ
ANALIZA TENDENCJI ROZWOJOWYCH 155mm AMUNICJI ARTYLERYJSKIEJ Wojskowy Instytut Techniczny Uzbrojenia
Armtec社ホームページ
ARMY AL&T April June 2007 U.S Army
AMMUNITION　FOR　THE　LAND　BATTLE 　Ｐ Ｒ Ｃｏｕｒｔｎｅｙ-Ｇｒｅｅｎ  Brassey's
Crusader-digital howitzer trailblazer RUPERT PENGELLEY Jane's INTERNATIONAL DEFENCE REVI EW  September 2001
GENERAL DYNAMICS社ホームページ
FIELD MANUAL No. 6-40 Tactics, Techniques, and Procedures for THE FIELD ARTILLERY　MANUAL CANNON GUNNERY  U.S Army
Jane's AMMUNITION HANDBOOK　１９９７−９８Ｔｅｒｒｙ　Ｊ　Ｇａｎｄｅｒ  Jane's Information Group
MARINE CORPS WARFIGHTING PUBLICATION 3-16.1 Marine Artillery Operations U.S. Marine Corps
Modular Charge Artillery System (MACS)　Field Artillery March-June 2004 U.S Army
Modular Artillery Charge System (MACS) CWO3 P. Barack  MARCORSYSCOM-AM/RD&A  AMMUNITION QUARTERLY Volume 6, No. 4 Marine Corps Information Publication October 2000 U.S Marine Corps  
Modular charge systems mature for global artillery operations Rupert Pengelley Jane's INTERNATIONAL DEFENCE REVI EW  February 2004
PEO Ammunition Joint Lethality U.S Army
U.S Armyホームページ
 

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