地雷  陸上部隊の行動を制約するため敷設される兵器の名称。


解説.                      総合索引

 地表、地中、水深の浅い海岸、川岸、湖岸に敷設され、人員の殺傷、または車両、舟艇、ヘリコプターなどの破壊、損傷を目的とする。敵軍侵攻の予想される地域に敷設し、
その地域を地雷原と呼ぶ。Copyright (c)2009 Weapons School  All rights reserved.
 地雷は、少ない人員・資源で、広範囲を防御するには非常に有効な兵器である。構造も簡単で、安価なため、大量生産に向く。敷設後は、整備も不要で、当該地域での活動を、長期間に渡り制約できる利点を持つ。
C しかし、その反面、アンゴラ、アフガニスタン、カンボジア、ボスニア・ヘルツェゴビナなどでは、内戦時に大量の地雷を敷設、終結後も放置したため、対人地雷による非戦闘員の死傷事故が多発し、戦後復興の大きな障害となっている。
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対人地雷の廃絶を求め、1997年カナダのオタワにおいて、「対人地雷の使用、貯蔵、生産及び移譲の禁止並びに廃棄に関する条約」通称:オタワ条約が採択され、2009年3月現在、156ヶ国が条約に批准している。
 
日本政府は、当初は防衛上の理由から、対人地雷の廃絶には消極的であった。しかし、1997年、オタワ条約に署名し、2003年2月末までに約100万個の対人地雷の廃棄を完了した。

地雷は「悪魔の兵器」か?

紛争終結後も、非戦闘員を殺傷する地雷。国際的な援助により地雷除去が行われているが、人員および資金等の不足により遅々として進まない。日本のマスコミ・ネット等でも、地雷を「悪魔の兵器」として廃絶を訴えている。

しかし、地雷を「悪魔の兵器」と呼ぶ人々は、地雷は本来、防御のための兵器である点を理解していない。
「悪魔」と呼ばれるのに相応しいのは、大量の地雷を無計画に敷設し、記録も残さず、紛争終結後も放置した、当該国政府および反政府組織、そして、外貨獲得と影響力拡大のため、当該地域に大量の地雷を供給した国々である。
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カンボジアを例に取れば、敷設された対人地雷は、ロシア(旧ソ連)製が最も多く、二番目が中国製である。両国は、国土防衛を理由に、オタワ条約に調印しておらず、地雷除去作業に積極的な援助も行っていない。これに対し、日本は、対人地雷を輸出していないにも拘わらず、海外の地雷除去に、100億円以上の援助を行って来た。

我が国が地雷を製造、貯蔵する目的は、有事の際に、敵の上陸、侵攻を防ぐためであった。しかし、日本政府は、世界に広まる地雷廃絶キャンペーンに流され、対人地雷に代わる、有効な兵器の開発も出来ていないにも拘わらず、オタワ条約を受け入れ、対人地雷を廃棄してしまった。この愚かな行為は、日本の防衛力を大幅に低下させ、将来に禍根を残す。

 地雷には、敵味方の識別能力は無く、味方部隊にも、被害を及ぼす可能性があるため、敷設情報を関係部隊に素早く、知らせる必要がある。広域への地雷敷設は、師団以上のレベルで決定されるのが一般的である。また、敷設場所、敷設方法、数量などの情報を正確に記録・保存しなければならない。

本稿では、地雷の種類敷設方法構造効果探知方法処理方法に付いて解説する。

種 類

  • 対人地雷

    人員の殺傷を目的とする。対人地雷の多くは、人員を負傷させ、その手当、看護、搬送に要する資源、労力、時間の浪費を、相手側に強いる。対戦車地雷の除去を困難にするため、その周囲に敷設される場合が多い。大量の爆薬を必要としないため、小型、軽量である。
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    対人地雷には、地表から1m程、飛び上がって爆発する跳躍地雷や、特定方向に爆風・破片を放出する指向性散弾タイプの地雷もある。

  • 対戦車地雷

    戦車や装甲車など、車両の破壊・損傷を目的とする。車両重量による圧力で作動するタイプが最も多く、通常100kg以上の圧力が加わると起爆する。装甲の比較的薄い車体上・下面や、履帯(キャタピラー)など防御上の弱点部分を攻撃する。
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    名称は「対戦車」となっているが、トラック、バス、乗用車、トラクター等にも作動する。


    対戦車地雷には、車両の接近をセンサーで感知、側方から攻撃するオフ・ルート地雷の他、上空に射出され、装甲の比較的薄い上面に、爆発成形弾を発射する広域地雷と呼ばれるタイプもある。


  • 水際(すいさい)地雷

    水深の浅い海岸、湖岸、川岸などに敷設し、敵部隊の上陸・渡河を妨害する。

  • 対ヘリコプター地雷

    ヘリコプターの低空飛行経路または、着陸地点に敷設され、ヘリコプターの飛行・着陸を妨害する。


敷設方法

  • 埋設

    地中に埋め、発見を困難にする。心理的効果も大きいが、埋設に時間と労力を要する。従来は人力により実施していたが、現在は機械式により埋設に要する時間を大幅に短縮している。
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  • 放置

    埋設する時間が無い場合、地雷を地表面に放置する。敵に発見され易いが、侵攻を遅らせる効果は期待できる。

  • 散布

    クラスター爆弾、砲弾、ロケット弾、専用投射機などにより地表にばらまく。短時間で、広範囲に地雷を設置できる。しかし、敵に発見され易く、散布パターンの正確な予測は困難である。


構 造 信管および本体に区分される。

                                  

  • 信管

    目標を検知するセンサーおよび、地雷本体を起爆するための点火薬、安全装置などを内蔵する。
    起爆方式には圧力式、わな線式、傾斜ロッド式のものが多いが、遠隔操作、振動、音響、磁気、赤外線、ミリ波などを利用するタイプもある。
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  • 本体

    目標を殺傷・破壊するための炸薬および、これを収納する金属、もしくはプラスティクなどの容器からなる。炸薬は爆風・破片型が一般的であるが、成形炸薬爆発成形弾または、神経ガスなどの化学剤を放出するタイプも存在する。また、地雷除去を困難にするため、地雷を持ち上げたり、傾けたりすると起爆する除去防止機能付きの地雷もある。

                                   

効 果 

  • 物理的効果

    爆風・破片または、成形炸薬爆発成形弾等により、目標を殺傷・破壊する。

  • 心理的効果
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    何処に地雷があるか不明な状況は部隊行動を遅らせ、地雷の爆発による人員の殺傷、機材の破壊は士気を下げる。

  • 戦術的効果

    作戦行動の遅れ、変更を余儀なくさせる、人工の障害物として機能する。さらに、地雷原に、機関銃、戦車砲、対戦車ミサイル、迫撃砲、榴弾砲などの火力を集中することにより、相手方の損害を増大させることも可能である。




探知方法 埋設された地雷を探知する方法を以下に挙げる。

  • 磁気

    磁気の変化により、地雷に使用されている金属を探知する。最近の地雷は、プラスティクなどで作られているため、磁気による探知には限界がある。また、地表もしくは地中の、薬莢、金属製破片等にも反応するため、地雷との区別は困難。
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  • 電波

    地中を貫通する電波を使用する。地表面からの反射によるノイズが多く、土中の水分量に影響されやすい。

  • 臭い

    地雷に使用される、火薬の臭いを探知する訓練を受けた軍用犬を使用する。犬の集中力は長く続かない。また、強い臭いや、大きな音に影響されやすい。

  • 赤外線

    地表面の温度変化により、埋設跡を検出する。また、浅く埋設された地雷の探知にも有効。ただし、雨、雪または、時間帯により温度変化が少なくなると検知は困難。


  • 化学物質センサー

    火薬に含まれる微量な化学物質をセンサーにより検知する。現在、開発途上の技術で実用化には至っていない。

  • 探知棒

    兵士が探知棒を使用して、手作業で地雷を探る。最も確実ではあるが、時間と労力を要し、非常に危険である。

 

処理方法 地雷の処理は、危険で時間を要する作業である。

  • 爆破

    爆発時の衝撃波により地雷を誘爆させる。最も確実な方法は、発見した地雷に、各々爆薬を設置し爆発させる方法である。しかし、この方法は時間を要し、費用も掛かる。
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    地雷原に素早く通路を開設する場合、梱包爆薬もしくは、パイプに爆薬を詰めた破壊筒、またはロープ状の爆索等により地雷を誘爆させ、人員、車両の通行を可能にする。但し、衝撃波の拡散状態、地形、地雷の敷設状態、起爆方式などにより地雷除去率は変化し、完全な地雷除去は困難である。


  • ローラ

    戦車などの装甲車両の前部に金属製ローラーを取り付け、この重量で地雷を爆発させる。地雷原を迅速に突破する際に使用される。地形、地質に影響され、ローラーの幅のみしか、地雷を処理できない。本装置を装着すると、機動性は大幅に低下する。また、2回以上圧力が掛からないと起爆しない信管を使用する地雷には効果は無い。

  • ブレード、鋤など
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    戦車などの装甲車両の前にブレード、鋤などを取り付け、散布、埋設された深さ30cm程度までの地雷を掘り起こし、脇に排除する。本装置は機動性を大幅に低下させる。また、爆発せずに排除された地雷は、危険である。


  • フレール(からざお)
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    装甲車両に回転体を装備、回転体に取り付けられた鎖を高速回転させ、地表面から、深さ30cm程度までの地雷を破壊する。地雷除去用ローラー、ブレードに比べ時間を要するが、地雷除去率は高いため、紛争終結後の復興に使用される。ただし、地質・地形に影響される場合がある。


                           2009年10月23日作成


参考文献

イラストで読むハイテク兵器のしくみ 財団法人 防衛技術協会編 日刊工業新聞社
外務省ホームページ
火器弾薬技術ハンドブック(改訂版) 弾道学研究会編 財団法人 防衛技術協会刊
国際連合ホームページ
地雷1億1000万個の悪魔 アジアを歩く1 三留理男 草の根出版会
地雷に関する公開講演1996年9月11日 J・P・カバナー国際連合広報センター所長(東京)
地雷廃絶日本キャンペーン(JCBL)ホームページ
日本地雷処理を支援する会(JMAS)ホームページ
兵器の常識・非常識<上巻> 陸軍・海軍兵器篇 江畑謙介 並木書房
陸上防衛技術のすべて 防衛技術ジャーナル編集部編 財団法人 防衛技術協会
AMMUNITION FOR THE LAND BATTLE  PR Courtney-Green BRASSEY'S
FM 20-32 Mine/Countermine Operations Headquarters Department of the Army Washington, DC, 1 October 2002
F
M 21-16 UNEXPLODED ORDNANCE (UXO)PROCEDURES HEADQUARTERS DEPARTMENT OF THE ARMY  30 August 1994
FM 5-102 COUNTERMOBILITY Headquarters Department of the Army Washington, DC, 14 March 1985
FM 90-7 Combined Arms Obstacle Integration HEADQUARTERS, DEPARTMENT OF THE ARMY 
THE UNITED NATIONS MINE ACTION SERVICE ANNUAL REPORT 2008 United Nations Mine Action Service



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