ジャベリン  対戦車ミサイルの名称。本来は槍(やり)の英語名。


解説.                   総合索引

 人員携行可能な、撃ち放し式、赤外線誘導、中型対戦車ミサイル。

 

 ジャベリンはドラゴン対戦車ミサイルの後継として、米陸軍・海兵隊により1989年、開発に着手し、1996年、部隊配備を開始した。  米国以外では、イギリス、オーストラリア、オランダ、カナダ、台湾、ノルウェー、ヨルダン、リトアニア等も導入している。
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 ジャベリンは、CLU(Command Launch Unit:指令・発射装置)と、ミサイル・コンテナ(ROUND)により構成される。

 CLUは、倍率4倍の昼間用および、倍率4倍と9倍の暗視装置を持ち、リチウム電池により4時間稼動し、周囲には衝撃吸収用パッドが取付けられる。

 ミサイル・コンテナは、ミサイル本体、LTA(Launch Tube Assembly:
発射筒)、BCU(Battery Coolant  Unit:電池・冷却装置)で構成され、10年間整備不要である。

 LTAは、エポキシ系複合材料製で、前後には保護キャップが取付けられている。外部には、CLU接続用コネクター、BCU、運搬用取っ手および、肩バンドが装着されている。


 BCUには、ミサイルに電力を供給する
リチウム電池と、ミサイルの赤外線画像シーカ(探知機)を冷却するため、アルゴン・ガスが封入されており、約4分間使用可能である。


ミサイル本体はモジュラー構造で、4つの部分に区分される。
  • 誘導部分
    赤外線画像シーカは、フォーカル・プレーン方式で、水銀カドミウム・テルル素子(64*64)を使用しており、8〜12ミクロンmの遠赤外線により、夜間でも、目標を捜索、交戦可能である。なお、使用前には、BCUのアルゴン・ガスにより、10秒間、シーカを冷却する必要がある。誘導装置により、発射後は自律して目標を追尾する。


  • 弾頭部分
    ERA(爆発反応装甲)等に対処するため、タンデム成形炸薬弾頭を採用している。また、安定翼8枚を収納し、発射後展開される。
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  • 推進装置
    発射用および飛行用固体推進剤ロケット・モーターを持つ。

    発射用ロケット・モーターは、LTA(発射筒)内で燃焼してミサイルを射出する。発射煙が少なく、発射位置を察知されにくい。


    飛行用ロケット・モーターは、LTAから所定の安全距離に達すると点火され、飛行に必要な推進力を供給する。


  • 飛行制御装置
    熱電池などの飛行制御装置と、発射後展開される操舵翼4枚を内蔵する。ノズルは推力偏向タイプとなっており、操舵翼とともに飛行制御に利用される。

      
  ミサイル・コンテナは使い捨てで、再装填には20秒を要し、3発を2分以内に発射できる。


 ジャベリン・ミサイルの攻撃モードには、トップ・アタック・モードと、ダイレクト・アタック・モードがある。

  • トップ・アタック・モード
    射程2000mの場合、発射後160mまで上昇、水平飛行をした後、目標の防御の弱い上面から攻撃、
    飛行時間は14秒である。最小射程は150m。 (c)Weapons School  All rights reserved.

  • ダイレクト・アタック・モード
    射程2000mの場合、発射後60mまで上昇後、目標に向かって浅い角度で降下する。最小射程は65m。


 射手は、CLUとミサイル・コンテナを接続、電源を入れ、ミサイルコンテナの前部保護キャップを取外し、発射姿勢を取る。発射は伏せ、立て膝など様々な姿勢から可能だ。

 CLUの画面で、目標を確認した射手は、BCUを作動させ、赤外線画像シーカ冷却する。目標にロック・オン後、引金を引くと、発射用ロケット・モーターにより、ミサイルはLTA(発射筒)から射出される。後方爆風は限定されているため、高さ2.1m、広さ3.7m、長さ4.6m以上の室内からでも発射可能である。

 射出されたミサイルは、所定の距離に達すると飛行用ロケット・モーターに点火、高度約160mまで上昇して水平飛行に移り、その後、装甲の薄い、斜め上方から目標に突入する。


 ジャベリン運用上の制約を以下に挙げる。

  • 成形炸薬弾頭を使用しているため、バンカーなど強固な建物の破壊には、限定的な効果しか得られない。

  • ミサイル・コンテナ後方、中心線より左右30度、距離25mの扇状地域は、後方爆風により危険地帯となる。
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  • 発射後、ミサイルは一旦上昇するため、上方に障害物のある森、都市では運用に制約が多い。

  • BCUのアルゴン・ガスによる、シーカ冷却持続時間は4分間で、この間に、ミサイルを発射しなければならない。

  • CLU、ミサイル・コンテナの合計重量は22.3kgで、長距離の歩行運搬は、兵士への負担が大きい。

 ジャベリンは、人員携行だけでなく、車載システムとしても検討されている。

                        2009年3月13日制作


性能・諸元

ジャベリン(CLU、ミサイル・コンテナ含む)
全長:1.2m

重量:22.3kg
弾頭:タンデム成形炸薬
誘導方式:赤外線画像
最大射程:2000m以上

メーカー:レイセオン社・ロッキードマーチン社他


参考文献

Army Technologyホームページ
AIRBORNE A Guided Tour of an Airborne Task Force  Tom Clancy  BERKLEY BOOKS
Critical Technology Events in the Development of the Stinger and Javelin Missile Systems Project Hindsight Revisited John Lyons,Duncan Long,and Richard Chait Center for Technology and National Security Policy  National Defense University July 2006
FIELD MANUAL No. 3-22.37 JAVELIN MEDIUM ANTIARMOR WEAPON SYSTEM U.S Army
Jane's INFANTRY  WEAPONS  Jane's Information Group
Raython社ホームページ
U.S. Army ホームページ

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