WCMD(ウィックミッドと読む。Wind Corrected Munitions Dispenserの頭文字を取った略語。直訳すれば風向修正弾薬ディスペンサー。 


解説                           総合索引

 自由落下型クラスター爆弾慣性誘導装置を取り付けた誘導爆弾。命中精度に影響を与える、母機の姿勢の乱れ、風向・風速などの影響を慣性誘導により補正して目標に命中する。



 湾岸戦争時、米空軍は、イラク軍、戦車部隊を破壊するためクラスター爆弾を使用した。しかし、期待した効果は得られなかった。
 原因はイラク軍の強力な対空砲火を避けるため、中・高高度から投下したクラスター爆弾が風に流された為だ。Copyright
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 この問題を解決するため、クラスター爆弾に慣性誘導装置を取り付けたWCMDが開発され、1999年に量産を開始した。

WCMDの特徴は

  • 対空砲火、射程外の中・高高度から、クラスター爆弾を投下できる。
  • 風など影響による、落下コースのズレを補正して、約25mの命中精度を有する。
  • 投下後、母機からの誘導を必要としない、慣性誘導装置を採用。
  • 目標を視認できない悪天候下でも使用可能。
  • 複数のクラスター爆弾を、別々の目標に向けて投下することも可能だ。

ただし、母機から供給される、投下位置および目標情報がWCMDの命中精度に影響する。


 WCMDはCBU-87/Bなどのクラスター爆弾本体を流用して、以下の3部品を取り付ける。

  • 尾部キット (従来品と交換)
    慣性誘導・飛行制御装置を内蔵、操舵翼4枚を収納する。操舵翼は投下後、展開される。
  • MIL-STD-1760Bコネクター
    投下直前、母機から目標位置情報などを受け取る。
  • 重心位置補正用バラスト付きフェアリング
    必要に応じて取り付ける。

WCMDキットを装着したクラスター爆弾の制式名称は以下の様に変更される。

制式名称 キット装着後の制式名称 備  考
CBU-87/B CBU-103/B CEM(複合効果弾薬)
CBU-89/B CBU-104/B ゲイター地雷
CBU-97/B CBU-105/B SFW(センサー信管付兵器)
 

 WCMDは投下直前、母機からMIL-STD-1760Bコネクターを通じて投下位置、目標位置情報などを受け取る。投下後は操舵翼を展開、慣性誘導装置により、風などの影響を修正して目標に向かう。目標地点上空に達すると、操舵翼により回転を与えられ、遠心力で子弾を広範囲に散布する。

 WCMDには、攻撃精度を更に向上させるGPS(全地球測位システム)を追加したタイプや、搭載母機が対空火器の射程外から攻撃可能な、展開式の翼を装着したWCMD-ERも開発中だ。

                             2004/8/31改訂


性能・諸元

WCMD尾部キット
全長:0.6m
外径:0.4m
価格:約120万円


参考文献

図解エアパワー最前線上・下 原書房 著者:アンソニー・ソーンボロ 監訳者:松崎豊一
トム・クランシーの戦闘航空団解剖著者:トム・クランシー 訳:平賀秀明 新潮社
U・S・ウエポン・ハンドブック 宮本勲編著 原書房
Addition extends weapon's range U.S Air Force News Story 6/20/2003
AFMC News Service 8-14-98
B-1 LANCER  The Most Complicated Warplane Ever Developed Dennis R.Jenkins McGraw-Hill

Federation of American Scientistsホームページ
Jane's Air-Lunched Weapons Jane's Information Groups
Lockheed Martinホームページ
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