トマホーク巡航ミサイル Block V(ブロック5)  長距離巡航ミサイルの名称


解説                     総合索引

  アジア太平洋地域で、強大な軍事力を背景に、海洋進出を強める中国の脅威に対処するため、米国海軍が2021年から配備を進めている、最新型トマホーク巡航ミサイル

 
既存のトマホーク巡航ミサイルBlockIV(4) TACTOM(Tactical Tomahawk:戦術トマホーク)の航法、通信装置を改善した派生型。

 
イージス艦等のVLS(垂直発射装置)、潜水艦の魚雷発射管、またはVLSから発射され、指揮通信、防空システム等の固定目標だけで無く、艦艇等の移動目標、掩体壕なども攻撃可能で、米国海軍、英国の他、オーストラリア、日本も導入を予定している。
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 トマホーク巡航ミサイルBlock Vの構造はモジュラー構造となっており、大きく5つに区分される。

  • 機首
    燃料タンクを搭載

    Block Vaでは、ミリ波レーダー、ESM(電波逆探知装置)等の多機能シーカー搭載して艦艇等移動目標も攻撃可能

  • ペイロード
    WDU-36/B弾頭を搭載

    Block Vbでは地下施設等も攻撃可能なJMEWS(Joint Multi-Effects Warhead System:統合多重効果弾頭システム)を採用

  • 中部胴体
    上部に折りたたみ式主翼収納部があり、発射後展開する。下部には
    主燃料タンクの他、ストロボ・ライト(DSMAC用照明装置)IMU(慣性測定装置)、電波高度計を搭載する

  • 後部胴体
    2波長 衛星通信装置、既存の軍用Pコード信号に比べ、妨害耐性を大幅に向上させたMコード信号対応GPSTERCOM(TERrain COntour Matching:地形等高線照合)、DSMAC(Digital Scene-Matching Area Correlation:デジタル式情景照合)IV(4)等の誘導制御装置および後部燃料タンクを搭載する。下部にはエンジン空気取入口あり

  • 尾部
    F415-WR-400 推力約300kg低バイパス比ターボファン・エンジンおよび
    飛行制御装置
    外部に折り畳み式操舵翼3枚を装着し、発射後展開する


  • 固体推進剤ブースター
    Mk135ブースター(推力偏向装置付き)、水中もしくは海上からミサイルを打上げ、所定の高度、方向に向けた後、投棄される


 トマホーク巡航ミサイルは、キャニスター(カプセル)に密封されており、製造後15年で、メーカーに戻され、分解整備および部品交換後、更に15年間使用可能である。部隊ではキャニスターを開けての整備は不要だ。

 発射前、ミサイル本体の機能確認後、発射艦艇の位置、速度、飛翔経路、目標データ等が転送され、VLSまたは魚雷発射管から発射される。


 ブースターは
、艦艇からミサイルを打上げ、所定の高度、方向に向け燃焼終了後 投棄され、操舵翼と主翼を展開、ターボ・ファン・エンジンを始動して巡航に移る。

 地上数10mを予め定められた飛行コースで飛行する。最大時速は880kmと、ロケット推進のミサイルがマッハ2以上で飛行するのに比べれば遅い。 しかし、小型で、低空を飛行するため、戦闘機や地対空ミサイルなどで迎撃するのは困難だ。

 海上はINS(慣性航法装置)により飛行、時間経過と共に増大する航法誤差を、GPSで補正する他、陸上ではTERCOM(TERrain COntour Matching地形等高線照合方式)と呼ばれる、標高を数値化した標高データと、搭載する電波高度計から得られるデータを照らし合わせて現在の位置を特定する、精度は80m前後とされる。

 最終段階ではDSMAC(Digital Scene-Matching Area Correlation デジタル式情景照合装置)と呼ばれる、光学センサーにより地上をスキャン、事前に用意された情景と比較して飛行コースの修正を行なう。なお、夜間には地上を照らすための照明装置を作動させ、地上をストロボライトのような光で照らし出す。

 
情景イメージは目標に接近するに従い、範囲サイズが小さくなり約10mの精度を持つ。目標への突入角度は5°から85°を選択可能で、目標に応じた突入角度を選択できる。

 搭載する衛星通信装置により、発射後でも目標変更可能である。また、飛行中のミサイルの機能状態、および目標突入直前のDSMAC画像を送信、攻撃精度の予測も出来る。

 目標への飛翔コースも、最短経路だけなく、遠回りさせ、同一目標に、異なる方向から同時に弾着させる事も可能だ。また、遠距離飛行能力を生かして、目標上空を旋回しながら待機、電子光学センサーにより偵察、指定された目標を攻撃できる。

 トマホーク巡航ミサイルの攻撃精度は、事前に作成される目標地域の標高データ、および情景イメージの精度に左右される。これらの目標情報は、偵察機もしくは偵察衛星により取得する必要がある。しかし、日本国内はともかく、中国、北朝鮮等の目標情報を事前に取得するのは、光学・レーダー偵察衛星による取得以外方法が無い為、米国の提供する目標情報に頼らざるを得ないのが現状である。
                        2023年 4月 7日 作成


性能・諸元

トマホーク巡航ミサイル Block V(5)
全長:6.25m(ブースター含む)
翼幅:2.67m
弾体直径:0.52m
射程:1600km
重量:1587kg(ブースター含む)
弾頭:WDU-36/B 爆風・破片炸薬
誘導方式:INS・GPS・TERCOM・DSMAC
最大速度:880km/h
メーカー:レイセオン社


参考文献

BGM-109 Tomahawk Global Security.org
Missile Guidance and Control Systems George M.Siouris Springer 

NDIA 49th Annual Fuze Conference UNITED STATES NAVY OVERVIEW Dr.John Robbins NAVAL SEA SYSTEM COMMAND
PE 0204229N:Tomahawk Mssn Planning Ctr Exhibit R-2 RDT&E Budget Item Justification:PB2020 Navy
Tactical Tomahawk RGM-109E/UGM-109E Missile (TACTOM) As of  FY2017 President's Budget Defense Acquisition Management Information Retrieval
TECHNICAL MANUAL TOMAHAWK CRUISE MISSILE RGM/UGM-109 SYSTEM DESCRIPTION SW820-AP-MMI-010 REVISION 15 U.S Navy
Tomahawk Cruise Missile Fact File U.S Navy
Tomahawk Cruise Missile Raytheon Missiles & Defense

Tomahawk Cruise Missile Variants AIR POWER AUSTRALIA 
Tomahawk Long-Range Cruise Missile Naval Technology
Raytheon Delivers First Batch of Block V Tomahawk Missiles To US Navy Navalnews.com
UGM/BGM/RGM-109 Tomahawk Seaforces-online
Williams International F107/F122/F415 Aviation Gas Turbine Forecast FORECAST INTERNATIONAL October 2014

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