モスキット(Moskit) 対艦ミサイルの名称 


解説                                          総合索引  

 旧ソ連(ロシア)で開発された艦艇搭載型、対艦超音速巡航ミサイル。制式名称は3M80モスキット(Moskit)。NATOではSS-N-22サンバーン(Sunburn)と呼ぶ。以後、本稿ではモスキットの名称を用いる。
Copyright (c)2011   Weapons School  All rights reserved.
  モスキットの開発は1970年台前半に始まり、1981年に配備を開始、中国などへも輸出されている。


 モスキットは海面すれすれを、音速のおよそ2倍の速度で飛行するため、発見から迎撃までの対処時間は短く、迎撃は非常に困難である。また、従来の巡航ミサイルに比べ2倍以上の速度で突入するので、弾頭が不発の場合でも、ミサイル自体の運動エネルギーは4倍以上となり、破壊力も大きい。

 モスキットは全長9.39m、弾体直径0.76m(空気取り入れ口含まず)、翼幅2.1m(翼展開状態)、重量3950kgの大型ミサイルで、最大射程は90kmである。

 構造は、先端部分に円錐形のレドームがあり、内部にはARGS-54レーダー・シーカー(探知機)を搭載する。この後方はINS(慣性航法装置)、海面からの高度を測定する電波高度計、自動操縦装置などの誘導制御部分、および中間誘導用データ・リンクも搭載する。

 誘導制御部分後方は、重量300kgの弾頭部分で、艦艇内部に突入し爆発、被害を拡大する。なお、200kトン(TNT換算で20万トン)の核兵器も搭載可能とされる。弾頭分の後は、燃料(ケロシン:灯油)タンクと、ラムジェットとなっている。
Copyright (c)2011   Weapons School  All rights reserved.
 ラムジェットは通常のジェット・エンジンと異なり、複雑な回転式圧縮機などの稼動部分は無く、空気取り入れ口、燃焼室、ノズル(排気口)の極めて簡単な構造となっている。なお、燃焼室後方には、ロケット・モーターが内蔵されており、ブースターとして作動し、燃焼終了後は投棄される。

 弾体中央部に、4ヶ所のラムジェット用空気取り入れ口があり、超音速の気流を、衝撃波により減速して高温・高圧とし、燃焼室で燃料と混合、燃焼させ強力な推進力を得る。外部には折り畳み式安定翼、操舵翼が各4枚取り付けられる。


 発射時に必要な目標情報は、艦艇、航空機などのレーダーから得る。発射はロケット・モーターにより、ラムジェット始動に必要な速度まで加速される。ロケット・モーターの燃焼終後、ラムジェットを始動し、超音速巡航飛行に移行、必要に応じデータ・リンクにより目標情報を更新する。

 最も効率的な飛行パターンは、発射後、空気抵抗の小さな高々度(1万m)に上昇し音速の2.6倍以上の速度で巡航、目標に接近すると降下して、レーダーに探知され難い海面から高度7mを、およそ音速の2倍の速度で飛行する。この場合の射程は90kmである。

 目標艦艇による探知を遅らせるため、発射直後から高度20mを低空飛行をする場合は、空気抵抗の増大により、速度は音速のおよそ2倍、射程は50kmに低下する。


 モスキットのレーダー・シーカーは、自ら電波を発射して目標を捜索するアクティブ・モードの他、目標が使用するレーダー、電子妨害機器等の電波源に向かうパッシブ・モードも使用可能である。また、目標艦艇の防空システムを混乱させるため、回避行動を事前にプログラム出来る。

 実戦では、同一目標に対して複数のミサイルを発射して、異なる飛行経路で同時に着弾させ、相手方の防空能力を飽和させるのが一般的な交戦方法である。優れた防空能力を持つイージス艦でも、同時に何発も飛来する場合、対処には限界がある。

 モスキットには弾頭重量を320kgとし、射程を160kmに伸ばした改良型の3M82(モスキットM)や、航空機搭載型Kh-41なども開発されている。

                                                    2011年10月 5日作成


性能・諸元

3M80
全   長:9.39m
弾体直径:0.76m(空気取り入れ口含まず)
最大速度:M=2.6以上(高々度飛行時)

誘導方式:アクティブ・レーダー・ホーミング(終末誘導)+INS(中間誘導)

重   量:3950kg
最大射程:90km


参考文献

モスキット超音速対艦ミサイル 江畑謙介 軍事研究1999年12月号 ジャパン・ミリタリー・レビュー
Assessing the Cruise Missile Puzzle:How Great a Defense Challenge David Tanks The Institute for Foreign Policy Analysis
Historical present: Russia strives to moder
Jane's NAVAL WEAPON SYSTEMS ISSUE THIRTY-SIX Jane's Information Group
Jane's STRATEGIC WEAPON SYSTEMS ISSUE THIRTY-SEVEN Jane's Information Group
RUSSIAN/SOVIET SEA-BASED ANTI-SHIP MISSILES November 2005 Defense Threat Informations Group
THE NAVAL INSTITUTE GUIDE TO WORLD NAVAL WEAPON SYSTEMS FIFTH EDITION NORMAN FRIEDMAN US Naval Institute Press
Striking out,homing in:SSGWs take the fight beyond the shore Richard Scott Jane's  INTERNATIONAL DEFENCE REVIEW NOVEMBER 2009
Sunburns,Yakhonts,Alfas and the Region (AustralianAviation,Sept2000.) March5,2001 CarloKopp 

Aerospaceトップページへ

Top     Land      Sea     Others

 Copyright (c)2011   Weapons School  All rights reserved.