JASSM ジャズムと読む。Joint Air-to-Surface Standoff Missileの頭文字を取った略語。日本語に訳せば統合空対地スタンドオフ・ミサイル。


解説                   総合索引

 敵防空網の射程外から発射され、強固な構造を持つバンカーや、ミサイル発射機などの攻撃を行うステルス巡航ミサイル。Copyrigh(c2002-2006 Weapons School  All rights reserved.
 
制式名称AGM-158 JASSM(Joint Air-to-Surface Standoff Missile)。本ミサイルは、B-1、B-2、B-52等の大型爆撃機だけでなく、F-15E、F-16などの戦闘機でも搭載可能なため、運用面での柔軟性は高い。
 

 
JASSMは、コスト高騰により開発中止となったTSSAM(Tri-Service Standoff Attack Missile三軍共同スタンドオフ攻撃ミサイル)に代わる、低コスト空対地ステルス巡航ミサイルとして、1996年から米空軍、海軍共同で開発に着手、2001年に低率初期量産を開始した。

 しかし、試験飛行において、失敗を繰り返しため、米海軍は本計画から撤退。米空軍のみによる開発となった。その後、改良を経て全規模量産に移行、現在までに2千発以上が生産され、オーストラリア、ポーランド等にも輸出されている。

 JASSMは複合素材と、台形断面形状により、レーダー反射面積を減少させステルス性能を持たせており、レーダーに補足されにくい。射程はおよそ370kmである。

JASSMの構造は、先端部分に、終末誘導に使用される冷却型、画像(256画素x256画素)赤外線センサーと、エア・データ・プローブなどを搭載する。


 この後方は、重量、約450kgのWDU-42/B弾頭で、AFX-757と呼ばれる安全性の高い炸薬を約100kg充填する。信管は、延期または瞬発モードを選択可能なFMU-156/Bである。延期モードでは厚さ1.5m以上の鉄筋コンクリートを貫通可能とされる。なお、機械部品を全電子化し信頼性を向上させたESAF(Electronic Safe and Arm Fuze:電子式信管)も開発中である。

 弾頭下部には、IMU((慣性計測装置)・電子妨害を受けた状態でも高い精度を持つGPS(全地球測位システム)、自動操縦装置を搭載する誘導部分と、画像赤外線センサーが補足した目標を識別、着弾点を決定するを目標自動識別装置を搭載、自律して目標の捜索・識別・攻撃をおこなう。


 この後方は燃料(JP-10)タンク、およびテレダイン社製J402( Model 370 )ターボジェット・エンジンを搭載する。下面には空気取り入れ口があり、これを覆うように、主翼が収納されている。


 
なお、JASSMは水平尾翼を持たないため、主翼、翼端後縁部には、エレボンと呼ばれる操舵翼があり、上昇・降下(ピッチ)、傾き(ロール)制御を行う。後部には、折りたたみ式垂直尾翼が取り付けられ、飛行方向(ヨー)を制御する。




 JASSMは専用コンテナに収納され15年間、保管可能である。

 JASSMは、発射前に搭載する航空機から、目標の緯度・経度、海抜などの座標データ、赤外線画像ファイルおよび目標への飛翔経路、突入方向・角度の他、発射母機の現在位置情報、GPSのコードなどをMIL-STD-1760データ・バスを通じて受け取る。


 航空機から投下されると主翼・垂直尾翼を展開、ターボジェット・エンジンを始動。その後は、時間と共に増大するIMUの誤差を、GPSで補正しながら、自律して飛行する。巡航高度は約6600m。目標に直進するだけでなく、迂回コースも選択できる。また、目標到達時間も、誤差±5秒以内に設定可能である。

 目標手前で高度を下げ、
レーダーに見つかりにくい低空を飛行する。飛行速度は音速の0.8倍程度だが、小型の上、ステルス性を有するため補足は難しい。

 
目標への攻撃は通常、座標データで設定される。ただし、精密さが要求される場合には、画像赤外線センサーにより目標を識別、最も効果的な場所に突入する。バンカーや掩体壕などの場合は、急上昇してから70度の急角度で急降下、突入破壊する。命中精度は3m以内とされる

 JASSMには、データ・リンク装置が搭載されており、突入時の位置情報、ミサイルの状態などを送信する。これにより攻撃の精度や効果を推定可能だ。

 JASSMは改良が続けられており、概要は以下の通り。

名称 JASSM-ER
(Extended-Range:射程延長)
LRASM
(Long Range Anti-Ship Missile:長距離対艦ミサイル
)
特徴
エンジンを燃料効率の良いウイリアムズ・インターナショナル社製F107ターボファン・エンジンに交換

燃料タンク大型化

双方向データ・リンクを搭載し、発射後でも目標変更可能


JASSM-ERをベースとする対艦巡航ミサイル

マルチ・モード電波センサーを追加

ブースターを追加してVLS(垂直発射装置)から発射可能

米海軍も参加

射程 920km以上 920km以上

                          2017年12月 7日改訂


性能・諸元

AGM-158A
全長:4.27m
翼幅:3.05m(展開時)
射程:370km以上
速度:マッハ0.85
重量:1020kg
弾頭重量:450kg
誘導方式:INS・GPS+画像赤外線
メーカー:ロッキード・マーチン社他


参考文献


AIRCREW WEAPONS DELIVERY MANUAL(NONNUCLEAR) B-52/AGM-158 JASSM U.S Air Force
Air Force introduces next generation cruise missile March 09.2006 Air Armament Center Public Affairs
B-1 carries record-setting missile load September 09.2010 U.S Air Force
Jane's Air-Lunched Weapons Jane's Information Groups

Lockheed Martin社ホームページ
LONG RANGE MISSILE SYSTEMS GROUP Precision Strike Association April 19-20 2005
S
elected Acquisition Report Joint Air-to-Surface Standoff Missile As of December31,2012 Defense Acquisition Management Information Retrieval  Department of Defense
WEAPONS FILE 2003-2004
Air Armament Center  U.S Air Force

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