ＣＥＣ　Ｃｏｏｐｅｒａｔｉｖｅ Ｅｎｇａｇｅｍｅｎｔ Ｃａｐａｂｉｌｉｔｙの頭文字を取った略語。日本語に訳せば共同交戦能力。

解説　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　総合索引

　　空母や強襲揚陸艦を中心とする艦隊を、敵航空機、ミサイルなどの攻撃から守る、無線を利用した広域ネットワーク型、防空システム。Copyright (c)2007 Weapons School　 All rights reserved.
　艦艇、航空機に搭載するレーダー、ＩＦＦ(敵味方識別装置)など、各種センサーからの情報を統合して、リアルタイムに状況を把握可能で、その目標情報は、艦対空ミサイルの射撃統制に利用可能な高い精度を有する。米軍の進める「ネットワーク中心の戦い」を具現化したシステムである。制式名称は、艦艇搭載型をＡＮ/ＵＳＧ-２、航空機搭載型をＡＮ/ＵＳＧ-３と呼ぶ。

　ＣＥＣは、１９８０年台半ば米海軍、Ｅシステムズ社(現：レイセオン社)および、ジョンズ・ホプキンス大学応用物理学研究所を中心として開発に着手し、１９９６会計年度に初期運用能力を獲得した。しかし、イージス・システムＢａｓｅｌｉｎｅ６．１との互換性、およびデータ転送用周波数帯域などに問題を生じた。この対策に手間取り、艦艇搭載型ＡＮ/ＵＳＧ-２の全規模量産が許可されたのは２００２年であった。

　米海軍は、２００６会計年度末迄に、空母、イージス艦、強襲揚陸艦など艦艇４０隻、Ｅ-２Ｃホークアイ２０００早期警戒機を装備する５飛行隊にＣＥＣを配備する予定だ。米海軍のほか、英海軍も導入を決定しており、ＮＡＴＯ諸国等も導入を検討中である。
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　ＣＥＣは、艦艇や早期警戒機等に搭載されるレーダー、ＩＦＦ、電子光学装置などのセンサーから、対空目標の距離、方位、仰角、ドップラー変位、航跡番号、識別情報のほか、センサーの種類、位置情報などの、生データを高速大容量の無線ネットワークを通じて交換を行う。この目標情報は、グリッド・ロックと呼ばれる共通座標に変換され、イージス武器システムや、個艦防御システムに伝達される。また、各艦艇、航空機の交戦状況も配信する。ＣＥＣを装備する全ての艦艇・航空機が、リアルタイムで、正確な対空状況を把握できる。

　複数のセンサーからの情報を統合するため、カバーする範囲も広い。敵に対し、情報の速さ、正確性で優位に立ち、戦力を効果的に活用できる。目標追跡の継続性、敵味方識別の正確さは大幅に向上、必要な場合には最適な兵器を割当て、交戦を行う。

　ＣＥＣを利用すれば、自艦のレーダーでは島影などにより目標を捉えることのできない場合でも、他艦のレーダからの情報により目標を捕捉可能だ。また、ミサイルを発射する艦艇と、目標照射を行う艦艇は同一である必要はない。状況によっては、レーダーを使用して自己の存在を暴露することなく攻撃も可能である。さらに、異なった種類・周波数のレーダや、電子光学センサーを利用することで、電波妨害にも強く、ステルス・ミサイルなどの探知にも有効とされる。

ＣＥＣの主な構成要素を以下に挙げる。

• ＣＥＰ(Ｃｏｏｐｅｒａｔｉｖｅ Ｅｎｇａｇｅｍｅｎｔ Ｐｒｏｃｅｓｓｏｒ：共同交戦処理装置)
  各種センサーから生の目標情報と、センサーの位置情報などを統合して、情報の精度を評価、目標に追尾番号を付与し、グリッド・ロックに変換、戦闘状況をリアルタイムで処理し、指揮・統制および兵器システムに情報を提供する。
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• ＤＤＳ(Ｄａｔａ Ｄｉｓｔｒｉｂｕｔｉｏｎ Ｓｙｓｔｅｍ：データ配信装置)
  高精度のセシウム時計を内蔵しており、通信サイクルを百万分の１秒単位で同期制御を行い、ＣＥＰからのデータを暗号化、電波妨害に影響されにくい拡散スペクトラム通信を利用する。指向性の高いフェーズド・アレイ・アンテナを使用しており、ネットワークに参加する艦船、航空機に対して質問を行い、相互の位置を確定し情報交換を行う。
  万一、通信が途絶した場合には、自動でネットワークを再構築する。

　ＣＥＣは、陸軍の地対空ミサイル・パトリオット、ホーク、ＴＨＡＡＤ、空軍のＡＷＡＣＳ(空中警戒管制機)などとの連携も可能で、弾道ミサイル防衛の一翼を担う。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　２００７年８月１１日作成

参考文献

イージス艦性能向上計画とミサイル防衛　多田智彦　軍事研究　２００２年５月号
共同交戦能力ＣＥＣとは何か　岡部いさく　世界の艦船　２００２年４月号　海人社
システム艦からシステム艦隊へ　野木恵一　世界の艦船　２００２年４月号　海人社
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