BLU−118/B サーモバリック爆弾


解説                           総合索引

 サーモバリック爆薬を内蔵した貫通爆弾。洞窟に隠れる戦闘員や、トンネル内部に建設された生物・化学兵器、製造・貯蔵施設などの攻撃に使用される、制式名称BLU−118/B。Copyright (c)2002 Weapons School  All rights reserved. 
 サーモバリックThermobaric とは、ギリシャ語の「熱」を意味するthermosと、「圧力」のbaroを組み合わせた造語。「熱圧」と訳される。


 
米海軍は、1980年代後半から、燃料気化爆薬を発展させた、サーモバリック爆薬の開発を進めていた。2001年9月11日の同時多発テロ事件を契機に、優先プロジェクトとして開発を急ぎ、2002年3月2日、アフガニスタンにおいて、初めて実戦使用された。

 
BLU-118/Bは、貫通爆弾BLU-109/Bの弾体にPBXIH-135サーモバリック爆薬を溶填(ようてん)した爆弾で、レーザー誘導爆弾などの弾頭として使用される。尾部に装着される信管も、洞窟やトンネル内部に爆弾が突入してから起爆するタイプである。
 
 サーモバリック爆薬PBXIH-135(現在の呼称はPBXN-113)は、HMX爆薬に、燃料としてアルミニウム粉末と、成型用高分子ポリマーの末端水酸基ポリブタジェンを加えた、fuel-rich(酸素と燃料の理想的な燃焼混合比に比べて燃料の多い状態)な固体混合爆薬である。燃料のアルミニウムは爆発時にも使用されるが、爆発時に燃焼できなかったアルミニウム粉末は、衝撃波により拡散・加熱され、爆発生成物および空気中の酸素を利用して3000度以上の高温で燃焼する。

 
 トンネルや建物内部の限られた場所で爆発すると、通常爆薬より、爆発時に発生する衝撃波の過圧(over pressure)は低いが、長い時間持続する衝撃波と高温により、人員や施設に被害を与え、生物・化学兵器などを無力化する。BLU-118/Bは、BLU-109/Bの2倍以上の殺傷力を持つとされる。

 一部マスコミでは、空気中の酸素を利用して燃焼することからサーモバリック兵器を「窒息兵器」として取り上げているが、殺傷力の大半は、爆発時の衝撃波と高温により発生し、酸欠によるものではない。


 PBXIH-135の爆薬としての感度は、米海軍が使用しているPBXN-109より低く、火災や事故などで、高温にさらされても、穏やかに燃焼するのみで、爆発しない安全性の高い爆薬だ。

 現在、
PBXIH-135より、さらに高性能のサーモバリック爆薬も開発中である。

                               2007年9月30日改訂


性能・諸元

BLU‐118/B
全    長:2.4m
弾体直径:0.37m
重   量:約870kg(推定)
炸薬種類:PBXIH-135


参考文献

エネルギー物質ハンドブック 社団法人 火薬学会/編 共立出版株式会社
火器弾薬技術ハンドブック 弾道学研究会編 財団法人 防衛技術協会刊
火薬のはなし 久保田波之介 日刊工業新聞社
航空爆弾 野木恵一 歴史群像 学習研究社
危険物データブック 東京消防庁警防研究会監修 丸善株式会社
作戦「アナコンダ」に投入された新兵器 岩狭源晴 軍事研究2002年5月号 (株)ジャパン・ミリタリー・レビュー
燃料気化爆弾の原理とメカニズム 野木恵一 軍事研究2002年4月号 (株)ジャパン・ミリタリー・レビュー
Air Force Print News for April 10, 2002 0546. Defense officials defend using new bomb
EVALUATION OF EXPLOSIVE CANDIDATES FOR A THERMOBARIC M72 LAW SHOULDER LAUNCHED WEAPON NancyJohnson*, Pamela Carpenter, Kirk Newman, Steve Jones, Eric Schlegel, Robert Gill,DouglasElstrodt,JasonBrindle, Tiffany Mavica, and Joyce DeBoltNaval Surface Warfare Center, Indian Head Division NDIA 39th Annual Gun & Ammunition/Missiles & Rockets Conference
Global Security.orgホームページ
Jane's Air-Lunched Weapons Jane's Information Groups
NAVAL SEA SYSTEMS COMMAND NEWS RELEASE MARCH 8, 2002
Naval Surface Warfare Centerホームページ
NAVY newsstand New Weapons Prove Successful in Nevada Test Story Number: NNS020321-05 3/21/2002
STATEMENT OF ADMIRAL DENNIS C.BLAIR, U.S. NAVY COMMANDER IN CHIEF U.S. PACIFIC COMMAND BEFORE THE HOUSE INTERNATIONAL RELATIONS COMMITTEE SUBCOMMITTEE ON EAST ASIA AND THE PACIFIC AND SUBCOMMITTEE ON MIDDLE EAST AND SOUTH ASIA ON U.S. PACIFIC COMMAND POSTURE 27 FEBRUARY 2002
STATEMENT OF REAR ADMIRAL JAY M. COHEN CHIEF OF NAVAL RESEARCH BEFORE THE SENATE ARMED SERVICES COMMITTEE EMERGING THREATS AND CAPABILITIES SUBCOMMITTEE ON TECHNOLOGY FOR COMBATING TERRORISM AND WEAPONS OF MASS DESTRUCTION APRIL 10, 2002
Thermobarics It All Began With Basic Research STAR LINKS Autumn 2005T NAVAL RESEARCH SCIENCE & TECHNOLOGY FOR AMERICA S READINESS

U.S NavNews NNS020307-03. Navy Scientists Instrumental in Developing New Thermobaric Weapons

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