スタンダード・ミサイル  中・長距離 艦対空ミサイルの名称 


解説                    総合索引

  艦隊防空兵器の中核として、空母戦闘群を対艦ミサイル、航空機等の攻撃から守る、中・長距離 艦対空セミ・アクティブ・ホーミング ミサイル。

 
制式名称は中距離型をRIM-66、これにブースター・ロケットを追加して射程を伸ばした、長距離型をRIM-67と呼ぶ。なおRIM−67はブースター・ロケットを装備したため全長が長く、発射装置、マガジン(弾倉)の大型化により、搭載できるのは一部巡洋艦に限られる。
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 1960年代、増大する旧ソ連製、対艦ミサイルの脅威に対抗するため、米海軍で使用されていた、テリア、タータ艦対空ミサイルの後継として開発された。従来の発射装置、マガジン(弾倉)を、そのまま使用できるように、外観はほぼ同一だ。しかし、内部は一新されており、維持管理に手間のかかる、油・気圧装置を電動モーターに変更、電子部品も全て半導体に置き換えられており消費電力は減少、信頼性も大幅に向上した。

 スタンダード・ミサイルにはSM-1とSM-2の区分がある。SM-1は従来型ミサイル艦に、SM-2は主にイージス艦に使用されるミサイルで、両者の違いは、誘導方式にある。

 
SM-1は、発射から命中するまで、母艦からのレーダー波照射を必要とするため、レーダー波照射装置の数=対処可能目標数であった。

 
これに対し、SM-2では、中間誘導は慣性航法装置とデータ・リンク装置を使用して、母艦から最も効率の良い、飛行コース指示が送られる。このためロケット・モーターは同じでも、射程はほぼ2倍となった。また、SM-2では母艦からのレーダー波照射は命中直前の数秒間のみで良く、交戦可能な目標数が増える。



 スタンダード・ミサイルの構造
は、4つの部分から構成されている。

 
先端はレドームとなっており、SM-1は、コニカル・スキャン式シーカー、SM-2では電波妨害に強いモノパルス・シーカーと慣性航法装置等を内蔵する誘導部分である。

 
誘導部分の後ろは爆風・破片炸薬弾頭部分で、近接または着発信管により起爆される。

 
弾頭部分後方はデュアル・スラスト式固体推進剤ロケット・モーターが内蔵されており、外側に二段台形型の安定翼4枚が取り付けられる。

 
最後部は電動モーターを内蔵する飛行制御部分があり、外側には操舵翼4枚を装着する。

 
ブロックW(4)では、VLSに収納可能な小型推力偏向ブースターを追加、最大射程はブロックIIIの2倍、最大射高は10km増加して30km以上となった。


 スタンダード・ミサイルには、様々なタイプがあり代表的なタイプを以下に挙げる。

      

タイプ SM-1 SM−2
MR ER MR ER ブロックU(2) ブロックV(3) ブロックW(4)
全長m 4.48 7.97 4.72 7.98 4.7 6.55
重量kg 617 1360 708 1509 708 708 1466
射程km 40 64 70 120 70+ 160 370
備考 Mk56デュアル・スラストモーター Mk12ブースター・ロケットを追加

一部巡洋艦のみ搭載可能

慣性航法装置と双方向データ・リンクで母艦から飛行コース指示 CG/SM−2仕様のミサイル巡洋艦のみ搭載

Mk12ブースターを追加

指向性爆風・破片炸薬

ECM能力向上
長さを伸ばしたMk104ロケットモーターにより速度と機動性向上

弾頭改良

共同交戦能力(CEC)を持つ

推力偏向Mk72ブースターを追加して射程を伸長、VLS使用可能

ECM能力向上
信管改良


 
バンカー・ヒル(CG‐52)以降のタイコンディロガ級およびアーレイ・バーク級イージス艦にはVLSと呼ばれる垂直発射装置が搭載された。従来のレール式Mk13・26発射装置のように、ミサイルをマガジンから、複雑な構造のレールに乗せて発射台まで移動させる必要はなく、発射装置・輸送コンテナー兼用のセルと呼ばれる収納ボックスにミサイルは入れられ、セットするだけとなった。また、従来型の発射台は発射間隔が3−8秒ほどであったが、VLSでは発射間隔1秒と、短時間に多数のミサイルの発射が可能となり、対艦ミサイルによる同時多数攻撃にも対処可能である。

 スタンダード・ミサイルは、その名の通り、米国だけでなく西側海軍の艦隊防空ミサイルの標準的ミサイルとなっており、わが国を含めて13ヶ国で使用されている。また、派生型も多く、SEAD任務に使用される航空機搭載型対レーダー・ミサイルのAGM-78、これを艦載型にしたRGM-66などの他、弾道ミサイル迎撃用SM-3なども開発されている。

                          2010年1月 2日改訂


参考文献

艦載兵器ハンドブック 世界の艦船別冊 海人社
雑誌 世界の艦船 1990.8号 米海軍のウエポン・システムA対空兵器 野木恵一
大図解 世界のミサイル・ロケット兵器 坂本明 グリーンアロー出版社
兵器最先端3太平洋艦隊読売新聞社編 読売新聞社
米軍最新兵器1500 成美堂出版社編 成美堂出版
Air Defence Systems and Weapons World AAA and SAM Systems in the 1990s CHRISTOPHER CHANT  BRASSEY'S DEFENCE PUBLISHERS 

Federation of American Scientistsホームページ
Jane's NAVAL WEAPON SYSTEMS ISSUE THIRTY-SIX Jane's Information Group
Jane's STRATEGIC WEAPON SYSTEMS ISSUE THIRTY-SEVEN Jane's Information Group
Raytheon社ホームページ
U.S Navy Fact File
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