SA-7 人員携行 地対空ミサイルの名称


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 1人で運搬、肩に担いで発射可能な旧ソ連製、赤外線誘導の低高度・短距離 地対空ミサイル。SA-7の名称はNATOが付与したもので、コードネームは「グレイル」。ロシアでの制式名称は9M32 Strela(ロシア語で”矢”の意味)2。Copyright (c)2004 Weapons School  All rights reserved.
 本稿では混乱を避けるため、SA-7の名称を使用する。

 SA-7は、旧ソ連が開発した第一世代の人員携行地対空ミサイルで、1960年代半ばに開発に着手、1966年に部隊配備を開始した。エジプト、ベトナムなど同盟国に供給され、中東戦争、ベトナム戦争で使用、命中率はおよそ40%とされる。

 
現在も、ライセンス生産や改良型が、70ヶ国以上で使用されている。
 最近では、2002年ケニア、2003年イラクで、テロリストによる民間航空機攻撃にも使用された。

 SA-7はグラスファイバー製ミサイル・コンテナー、発射装置と、熱電池などで構成される。

●ミサイル・コンテナー
 グラスファイバー製の円筒形コンテナーに密封されており、簡単な照準器が付属する。

●発射装置
 ミサイル発射用の引金を持ち、前部に熱電池を装着する。

●熱電池
 ミサイルおよび発射装置に、電源を40秒間供給する。


SA-7ミサイル本体に付いて解説する。

 ミサイル本体は全長1.44m、直径0.07m、重量9.2kgと小型軽量で、構造は大きく4つに区分される。

  • 赤外線シーカー(探知機)
     視野角1.9度の非冷却型、硫化鉛赤外線シーカーを装備、ジェット機の排気口から放射される波長1.7〜2.8ミクロンの赤外線を探知する。シーカーの能力が低いため、ジェット機は後方からしか、交戦できない。また、赤外線フレアなどの欺瞞手段に惑わされやすい。このため赤外線フィルターを追加したSA-7Bも開発された。
  • 誘導・飛行制御部分
    シーカーからの信号を処理して飛行コースを指示する誘導装置と、ジャイロ、飛行制御に使用するガス発生装置を持ち、2枚の操舵翼は発射後展開する。
  • 弾頭部分
    1.1kgの爆風・破片弾頭で着発信管のみ。弾頭の破壊力は小さく、目標に命中しても機体の一部を損傷するだけで、撃墜できないケースが多い。このため、弾頭を改良したタイプも開発された。
  • ロケット・モーター
    発射用、加速用の異なる燃焼特性を持つデュアル・スラスト固体推進薬ロケット・モーターを装備、後部に安定翼4枚を持ち発射後展開する。

 ミサイル・コンテナー2基と熱電池4個は木箱に梱包され前線部隊に供給される。使用の際には、発射装置にミサイル・コンテナーと、熱電池を取付ける。なお射手はロケット・モーターから放出される破片から眼を保護するためゴーグルを装着する。

 目標が交戦圏内である場合、射手は熱電池を作動させる。シーカーが目標の放射する赤外線を補足すると音声、ランプで射手に知らせる。
 射手が引金軽く引くと、ガス発生装置が作動してジャイロを立ち上げる。この間4〜6秒を要する。
 照準装置で目標の速度に合わせた見越し角を取り、引金を強く引くと、発射用ロケット・モーターが0.05秒間、燃焼してミサイルを秒速30mで射出する。発射されたミサイルは操舵翼、安定翼を展開、6mほど飛翔した後、加速用ロケット・モーターに点火、毎秒430mに加速する。この加速度で安全装置は解除される。

 この後は、赤外線シーカーが熱源を自動で追尾、目標に着弾した衝撃で弾頭を起爆する。目標をミスした場合、地上への被害を防ぐため、発射後14〜17秒で自爆する。

 SA-7運用上の制約は以下の通り。

  • 弾頭の破壊力が小さく、命中しても撃墜できない場合が多い。
  • 射程が短い。
  • 高度4000m以上を飛行する目標は交戦不能。
  • 交戦は後方からに限定され、秒速220m以上の航空機には追いつけない。
  • 赤外線フレアなどの発する赤外線に騙され易い。
  • 攻撃する航空機の敵味方識別装置を持たないため、味方機を誤射する可能性あり。

 SA-7には海軍用SA-7Bのほか、コピー生産された派生型も多く存在する。

                   2004年3月16日制作


性能・諸元

SA-7ミサイル
全長:1.44m
重量:9.2kg
最大速度:毎秒430m
(マッハ1.2)
誘導方式:赤外線ホーミング
炸薬重量:
爆風・破片炸薬1.1kg
最大射程:3400m
最大射高:1500m以上


参考文献
大図解 最新兵器戦闘マニュアル 坂本明 グリーンアロー出版
大図解 世界のミサイル/ロケット兵器 坂本明 グリーンアロー出版
Jane's NAVAL WEAPON SYSTEMS Jane's Information Group
Jane's LAND-BASED AIR DEFENCE 2001-2002 Jane's Information Group
Air Defence Systems and Weapons World AAA and SAM Systems in the 1990s CHRISTOPHER CHANT  BRASSEY'S DEFENCE PUBLISHERS 

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