無反動砲 砲弾発射時の反動を、相殺するように設計された火砲
解説 総合索引
注意:射撃時の反動は、大幅に低減されますが、「無反動」ではありません。 |
歩兵部隊と共に行動し、必要な時に必要な場所で、戦車、建物などの攻撃に大きな威力を発揮する軽量・簡易な火砲。
歩兵部隊には、目前の敵を素早く撃破するため、目標見て狙いを定める、直接照準火砲は不可欠である。しかし、このタイプの火砲は口径が大きくなるほど、砲弾発射時の強烈な反動を吸収するため、駐退復座機や、これを支える頑丈な砲架が必要で、重量が増大し、人力や小型車輛での持運びは不可能だった。
歩兵部隊には比較的軽量な迫撃砲も装備されているが、発射された砲弾は、大きく弧を描く曲射弾道のため、素早く、正確な砲撃はできない。
この問題を解決するため開発された火砲が無反動砲である。同口径の火砲に比べ、軽量で、直接照準により目標を確実に撃破できるのが最大の強みだ。
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無反動砲のアイデアは1909年、米陸軍のデイビス少佐により考案された。
これは砲身中央部の薬室に発射薬を置き、前方に砲弾、後方に砲弾と同じ重量の小さな鉛の散弾と油脂の入った平衡弾を装填。発射薬に点火すると砲弾は前方に発射、同時に後方からは粉々になった散弾と油脂が放出され、作用・反作用により発射時の反動を中和する。
利点としては、重い駐退復座機や砲架などが不要となり、薄い砲身と簡単な閉鎖機だけの構造となるため重量が軽く、構造が簡単であること。これは歩兵部隊に打って付けであった。 しかし、後方は散弾を放出するため危険地帯となる。
現代では、散弾に替えて、プラスチック製の平衡弾を採用した携帯対戦車ロケット弾なども開発されている。これは後方に、細かいプラスチック片を放出することにより危険地帯を減少させ、建物内部からでも発射可能である。
1930年頃、独クルップ社は平衡弾に替え、発射薬の燃焼ガスを高速で後方に噴射、砲弾発射時の反動を打ち消す方法を開発した。この方法は後方危険範囲を減少させるのには役立ったが、砲弾発射のために使用する燃焼ガスを、後方に逃がすので砲弾の速度は低下した。また、後方爆風により発射位置を暴露するため一発必中が求められる。
米国では、クルップ社方式をさらに改良して、薬莢に多数の小さな穴をあけ、薬室を大型化して薬莢との間にガス溜りスペースを設けた。これにより燃焼ガスは薬莢の小さな穴から薬室内に噴出、一旦薬室内に留まった後、後部の噴出口から排出されるため、砲弾の初速低下を防いだ。また弾帯には予めライフリングが刻まれている。この方式は「クロムスキット」と呼ばれ、M40 106mm無反動砲にも採用されている。
この方式の無反動砲も後方に燃焼ガスを噴出するので、砲の位置を敵に暴露する欠点がある。このため1発必中が求められ、スポッティング・ライフルと呼ばれる12.7mm銃を同軸に装備、曳光弾を発射して狙いを確認後、無反動砲を発射する。
無反動砲はロケット・ランチャーと異なり、対戦車榴弾だけでなく、榴弾、発煙弾、照明弾など、様々な種類の砲弾を発射できる多用途兵器である。
代表的な無反動砲は以下の通り。
名称 |
カール・グスタフM2 |
M40 |
M20 |
口径mm |
84 |
105 |
75 |
全長m |
1.13 |
3.4 |
不明 |
重量kg |
14.2 |
209.5 |
47.2 |
備考 |
人員携行
20ヶ国以上で使用 |
ジープ等に車載
一部現役 |
朝鮮戦争で使用
既に引退 |
2023年 6月29日改訂
参考文献
火器弾薬技術ハンドブック(改訂版)弾道学研究会編 防衛技術協会
世界の重火器 ミリタリー・イラストレイテッド19 ワールドフォトプレス編 株式会社 光文社
大図解 最新兵器戦闘マニュアル 坂本明 グリーンアロー出版
大砲撃戦 イアン・V・フォッグ/小野佐吉朗訳 サンケイ新聞出版局
自衛隊図鑑 別冊スコラ54 株式会社 スコラ
自衛隊装備年鑑2002−2003 朝雲新聞社編集局編 朝雲新聞社
陸上自衛隊パーフェクトガイド 日裏明弘 中村征人監修 株式会社 学習研究社
GUN用語事典 Turk
Takano監修・編集 国際出版株式会社
Jane's INFANTRY WEAPONS 1999-2000 Terry J
Gander Jane's Information Group
ANTI-TANK WEAPONS John Norris Brassey's
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