RAPラップと読む。Rocket Assisted Projectilesの頭文字を取った造語。日本語に訳せばロケット補助推進弾


解説                            総合索引

 射程延長のためロケット・モーターを装着した砲弾。陸上自衛隊では「噴進弾」または「RAP弾」と呼ぶ。
Copyright (c)2003 Weapons School  All rights reserved.
 火砲には長い射程が求められる。しかし、現実には砲身長、薬室耐圧力、駐退複座能力などの制約により射程は限定されてしまう。これを克服するのがRAPで、砲弾後部にロケット・モーターを取付け、発射後、これに点火、空気抵抗などにより低下した砲弾の速度を増加させ、射程延長を図る。

 本稿では155mm榴弾砲用、M549A1 RAPに付いて解説する。

 構造は大きく2つに分かれる。前部は通常の榴弾と同様に鋼製鍛造弾体にTNTなどの高性能炸薬を内蔵する。

 後部は固体推進薬ロケット・モーターで加速用、巡航用に分かれている。ノズル部分に点火延期装置を装着し、キャップが取付けられる。
ロケット・モーターには、発射時、約2万Gの加速度と、旋転による遠心力に耐える機械的強度が求められる。

 使用時にはキャップを外し、榴弾砲に装填される。発射されると、装薬燃焼ガスにより点火延期装置が作動して7秒後、加速用モーターに点火、約2秒間燃焼して、空気抵抗により低下した速度を増加させる。巡航用モーターはおよそ7秒間燃焼して速度の低下を抑え射程を延ばす。

 
39口径榴弾砲から、M4A2(白嚢:7号)を使用してM107榴弾を発射すると、最大射程は14800mであるのに対して、M549A1では19500mと約30パーセント以上向上する。さらにM203装薬(8号)を使用すれば最大射程は30100mとなる。

 射程延長の手段として使用されるRAPであるが、運用上の制約は以下の通り。

  • 本来、炸薬のスペースをロケット・モーターが占めるため、通常型HE弾と比べ殺傷力は減少する。
  • ロケット・モーターの点火時期、作動時間、推力などのばらつきから、命中精度は低下する。
  • ロケット・モーター装着による価格上昇。
  • ロケット・モーターは湿気に弱く、変質しやすい。

 RAPは155mm砲弾だけでなく、105mm、203mm砲弾、迫撃砲弾などにも採用されている。

                    2003年10月25日制作。


性能・諸元

M549A1 155mmHE、RA
重量:43.6kg 
全長:858mm(信管なし)
炸薬重量:6.8kgTNT
最大射程:19500m 39口径榴弾砲 M4A2(7号)装薬


参考文献

火器弾薬技術ハンドブック(改訂版)弾道学研究会編 防衛技術協会
日本砲兵史 陸上自衛隊 富士学校特科会 原書房

AMMUNITION FOR THE LAND BATTLE  P R Courtney-Green  Brassey's
Jane's AMMUNITION HANDBOOK 1997−98 Terry J Gander Jane's Information Group

Landトップページへ

Top   Aerospace         Sea        Others

 Copyright (c)2003 Weapons School  All rights reserved.