RAMラムと読む。Rolling Airframe Missileの頭文字を取った造語。 日本語に訳せば回転弾体ミサイル。


解説                    総合索引

  短距離 艦対空パッシブ・ レーダー、赤外線ホーミング・ミサイル。

 
イージス艦のエリア・ディフェンスや、自艦のポイント・ディフェンスを潜り抜け、飛来する対艦ミサイルを、近距離において迎撃する近接防御武器システム、制式名称はRIM-116 RAM。この名前は弾体を回転させる飛行形態から付けられた。

 米海軍、NATO諸国海軍や海上自衛隊でも、CIWS(近接防御武器システム)として採用されているファランクスは、口径20mmのため、砲弾が命中しても対艦ミサイルを粉々にすることはできず、ミサイルの残骸が艦艇に突入して被害をおよぼす可能性がある。また、有効射程も約1.5kmと短く、対処時間が限られるなどの問題点を指摘されていた。これを解決すべく1974年から米海軍により開発が始められ、1976年にドイツ、1979年にデンマーク(後に脱退)も参加して共同開発されたのがRAMである。
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 RAMは、その名前の通り、通常ミサイルでは制御対象となる弾体の回転を、逆転の発想でセンサーの捜索と飛行制御に利用する。しかし、誘導・飛行制御など様々の問題が発生、開発費用の上昇と計画の遅れから、計画中止を検討された時期もあり、米・ドイツ海軍にRAMの配備が開始されたのは1992年になってからで、実用化に20年近くを要した。

 構造は、先端部分にスティンガーの赤外線シーカーと、新たに開発された電波干渉計ロッド・アンテナ2基を装着する。この後方は発射後展開される操舵翼と、誘導装置や動力源を内蔵する誘導制御部分となっている。RAMは他のミサイルが4枚使用する操舵翼を、弾体の回転を利用して2枚で済ませており、20Gの旋回可能だ。


 誘導制御部分後方は、サイドワインダーに搭載されるレーザー近接・着発信管と、WDU-17B爆風・破片弾頭を搭載する弾頭部分となっている。最後部のロケット・モーターもサイドワインダーのMk-36固体推進薬ロケット・モーターを流用しており、外側に折りたたみ式の安定翼が取り付けられる。この安定翼は飛行中ミサイルに、回転を与えるため角度を付けて取り付けられている。
 ミサイルはFRP製キャニスターに入れられた状態で供給され、人の手により発射機に装填される。

 対艦ミサイルの飛来を、艦艇のレーダーやESM(電子戦支援装置)、光学・赤外線装置などで探知すると、目標データをRAMに伝達、発射機も飛来方向に向けられ、RAMが発射される。キャニスター内部には螺旋状のレールがあり、発射時、弾体に回転を与える。発射機から飛び出すと、操舵翼と固定翼を展開、回転しながら飛行する。以後は艦艇からの誘導を必要とせず、自律して目標に向かうので、他の目標に向け、次のRAMを発射することも可能だ。


 初期および中間誘導は、先端部分にある2本のロッド・アンテナにより
目標から放射されるレーダー波の位相差を測定して飛行方向を決める。赤外線シーカーが目標を捕らえると、誘導は赤外線に切り替わる。目標に近づくと近接信管または着発信管により起爆され目標を破壊する。Block1(RIM-116B)と呼ばれる改良型では、画像赤外線センサーを搭載、捜索範囲を拡大して赤外線のみによる追尾も可能だ。また航空機、ヘリや海上艦艇の攻撃にも使用可能となった。

 RAM発射機はMk49と呼ばれる21発ランチャーを使用するのが一般的で、ファランクスの台座を、そのまま利用して艦艇に設置可能だ。この他、軽量・小型の10発ランチャー、シー・スパロー・ランチャーを利用したタイプや、ファランクス ブロック1Bの捜索・追尾レーダー、光学・赤外線センサー装置を、そのまま利用して、20mmバルカン砲だけをRAM11発ランチャーに変更したSEA RAMも提案されている。


                         2003/1/01改訂


性能・諸元

RIM‐116B
全長:2.82m
弾体直径:0.127m
翼幅:0.445m
射程:9.6km
重量:73.6kg
弾頭:爆風・破片炸薬WDU‐17B
誘導方式:中間誘導:パッシブ・レーダー・ホーミング、終末誘導:赤外線ホーミング
速度:マッハ2.5
メーカー:レイセオン社 RAMSYS社(独) 他


参考文献

雑誌 軍事研究 個艦防空の切り札近接防空ミサイルRAM 岩狭源晴
世界の最新兵器カタログ〔空軍・海軍編〕 日本兵器研究会編 アリアドネ企画
Air Defence Systems and Weapons World AAA and SAM Systems in the 1 990s CHRISTOPHER CHANT BRASSEY'S DEFENCE PUBLISHERS 

Jane's Naval Weapon Systems  Jane's Information Group
Raytheon社ホームページおよびSEA RAMカタログ
U.S Navy Fact File

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