マーベリック 空対地ミサイルの名称。


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  航空機から発射される中距離、空対地ミサイル。対空砲火の射程外から、目標をピン・ポイントで攻撃できる。
 
戦車、強化型航空機シェルター、対空火器、指揮・通信バンカーなどの攻撃に使用される。制式名称AGM-65 Maverick。Copyright (c)2003 Weapons School  All rights reserved.
 マーベリック・ミサイルは、米空軍により1965年開発に着手、1972年に部隊配備を開始した。
米空軍、海軍、海兵隊の他、エジプト、イスラエル、ドイツなど27ヶ国で使用されており、生産総数は65000発を超える。AV-8、A-10、F-16、F/A-18などに搭載可能だ。湾岸戦争では5300発以上が発射され、命中率は92%とされる。

 本稿ではAGM-65F(画像赤外線誘導)の構造に付いて解説する。
 弾体はモジュラー構造となっており、先端は画像赤外線シーカー(探知機)および誘導装置を内蔵する。マーベリック・ミサイルのシーカーにはこの他、電子光学(TVカメラ)、セミ・アクティブ・レーザー誘導タイプもある。

 画像赤外線シーカーは、母機がLANTIRN(Low Altitude Navigation and Targeting Infrared for Night:夜間低高度赤外線航法・目標指示装置)などの暗視装置を持たない機体では、限定的ではあるが暗視装置の役割も果たす。またこの画像赤外線シーカーは、マーベリック・ミサイルだけでなく、GBU-15(電子光学・赤外線誘導滑空爆弾)やSLAMなどの対地ミサイルのシーカーとしても利用されている。

 誘導装置、後方は弾頭部分となっており、大型で貫通力に優れた136kg爆風・破片・貫通弾頭および、信管を内蔵する。なお、マーベリック・ミサイルには57kgのHEAT弾頭を搭載したタイプもある。

 弾頭部分、後方は、サイオコール社製、TX-481デュアル・スラスト固体燃料ロケット・モーターを内臓し、外部には安定翼が装着される。最後部はノズルおよび、飛行制御部分を内蔵し、外部に操舵翼が装着される。

 マーベリック・ミサイルの主なタイプを以下に挙げる。

名  称 AGM-65A AGM-65B AGM-65D AGM-65E
誘導方式 電子光学 画像赤外線 セミ・アクティブ・レーザー
弾  頭 HEAT弾頭
57kg
爆風・破片・貫通弾頭
136kg
全  長m 2.49
弾体直径m 0.3
重  量kg 207.9 218.3 353.2
射 程km 20
備  考   シーカーの倍率を上げ、目標補足・識別を容易に 画像赤外線シーカーにより夜間・悪天候時でも目標補足可能となる。
低排気煙ロケット・モーター採用
航空機または地上からのレーザー照射必要
貫通力を持つ大型爆風・破片弾頭に
海兵隊用

 

名  称 AGM-65F AGM-65G AGM-65K
誘導方式 画像赤外線 電子光学
弾  頭 爆風・破片・貫通弾頭
136kg
全  長m 2.49  2.49
弾体直径m 0.3  ←
重  量kg 365.5 301.5 360.5
射 程km 25
備  考 地上攻撃または艦船攻撃モードを選択可能
海軍用
誘導プログラムを大型目標の特定部位を選択可能なタイプに変更。
オートパイロットをデジタル化
排気煙を低減したTX-633ロケット・モーターを採用
製造方案改善によりコスト低減
保有するG型の画像赤外線シーカーを新型電子光学(CCD)シーカーに交換
開発中

 搭乗員は発射直前、シーカー(探知機)の捉えた映像を、コクックピットのディスプレーで見ながら目標を選択、ロック・オンする。発射後は、母機からの誘導を必要とせず、自律して目標を追尾する撃ちっ放しタイプで、母機は自由に回避行動を取れる。

高い性能を持つマーベリック・ミサイルだが運用上の制約は以下の通り。

  • F-16などの高性能単座機では、パイロットが目標を発見して、ミサイルをロック・オンするのは負担が大きい。湾岸戦争で使用されたマーベリック・ミサイルの約9割は、低速で飛行するA-10攻撃機から発射された。
  • 電子光学シーカー・タイプは夜間、霧、埃などで視界が遮られると、交戦可能距離が短くなる。
  • 画像赤外線シーカー・タイプも悪天候時には交戦距離が限定される。
  • 最大射程は20〜25kmのため、中・長距離地対空ミサイルの射程内となり、母機を危険にさらす。

 マーベリック・ミサイルには、小型ターボジェット・エンジンを搭載して射程を75kmに伸ばしたロング・ホーンと呼ばれるタイプも開発中だ。 

                              2003/9/03制作


性能・諸元

AGM-65F
全  長:2.49m
弾体直径:0.3m
重  量:365.5kg
誘導方式:画像赤外線
弾  頭:136kg爆風・破片・貫通弾頭
射  程:25km以上
価  格:約2160万円。
メーカー:レイセオン社他


参考文献

図解エアパワー最前線上・下 原書房 著者:アンソニー・ソーンボロ 監訳者:松崎豊一
トム・クランシーの戦闘航空団解剖 著者:トム・クランシー 訳:平賀秀明 新潮社
U・S・ウエポン・ハンドブック 宮本勲編著 原書房
Jane's Air-Lunched Weapons Jane's Information Groups
Raytheon社ホームページ
U.S. Air Force Fact Sheet
U.S. Navy Fact File


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