火星16B 極超音速ミサイルの名称


解説                   総合索引

 北朝鮮にて開発中の、自走式 起立発射機搭載型、2段式 中距離 極超音速ミサイル。

 
北朝鮮は2024年4月2日、午前6時52分頃、北朝鮮西岸から北東方向に向けて滑空型 極超音速ミサイルを発射、650lm以上を飛翔し、日本海に落下した。



 本ミサイルの特徴は、飛翔経路が弾道ミサイルの様な放物線ではなく、高度60km以下を、極超音速で滑空し、飛翔経路を変更可能な点にある。このため早期警戒レーダーでは遠距離探知が困難となり、弾道ミサイル防衛システムによる迎撃は、弾道ミサイルに比べ難しくなる。
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極超音速領域での飛行制御は?

極超音速領域では、滑空時のピッチ角(迎角)およびロール角(横転角)等の機体姿勢を厳密にコントロールする必要がある。この領域を外れてしまうと滑空距離は不足し、最悪の場合、機体に過度な空力荷重、空力加熱が発生し、制御不能となる可能性がある。

 北朝鮮の発表によれば、飛翔距離1000km、最高高度101.1km、引き起こしによる最高高度は72.3kmとしている。また、第1段分離後、第2段の点火を遅らせ、飛翔速度および高度を規制したとしている。

 しかし、今回の飛翔試験では引き起こし機動は1回のみ、横方向の機動距離に付いては具体的に発表されて居ない事から、極超音速領域での飛行制御に付いては、未だ試行錯誤の段階であると推測する。

 火星16Bの構造に付いては、北朝鮮からの公式情報はなく、以下はWeapons Schoolの推測である。

 構造は大きく極超音速滑空体と推進装置に区分される。

  • 極超音速滑空体

    先端部分はレドームで、アクティブ・レーダー・シーカー(探知機)を内蔵する。この後方は弾頭部分となっており、約500kgの高性能炸薬、または兵器などを搭載できる。
     弾頭部分後方は、INS(慣性航法装置)、GPS(全地球測位システム)、自動操縦装置などを内蔵する誘導・制御部分で、外部に操舵翼4枚を装着する。

  • 推進装置(ブースター)

    直径約1.5m、アルミニウム粉末を加えたコンポジット推進薬を使用した2段式
    固体推進剤ロケット・モーターである。液体推進剤に比べ、前線において、危険かつ有毒な推進剤注入の手間も不要で、即応性に優れ、長期間保管も可能である。最後部は、ミサイルを撃ち出すために使用される高圧ガスからノズルなどを保護するためのカバーを装着する。

 

 火星16Bは、輸送および保管中の損傷・故障を予防するため発射筒に納められており7軸14輪の自走式起立発射機に搭載され、人工衛星、偵察機等の監視から逃れる為、建物、トンネル、掩体壕などに隠れる。

 発射指令を受けると、所定の発射地点に移動、ミサイルを起立させ、機能確認後、高圧ガスにより発射筒から射出される。空中に飛び出したミサイルは、後部保護カバーを投棄した後、ロケット・モーターに点火、飛翔を開始する。この発射方式は、コールド・ローンチ方式と呼ばれる。

 第1段および、第2段ロケット・モーター燃焼終了後、所定の高度で極超音速滑空体を分離する。
 分離された滑空体は高度60km以下を、機体下面に発生する衝撃波を揚力として利用し滑空する。この間、迎撃を困難にするため、飛翔経路を変更する。目標に接近するとレーダー・シーカーを作動させ、目標を発見、急角度で突入する。


                          2024年4月11日 制作


性能・諸元

 火星16 B
全   長:約18m
弾体直径:約1.5m
重   量:約25トン
射        程:1000km以上

誘導方式:中間誘導 INS+GPS 終末誘導 アクティブ・レーダー誘導


参考文献

宇宙が日常になる日 空と宇 2012 MAY/JUN JAXA

宇宙航行の理論と技術 河崎俊夫 編著 地人書館
エアブリーザ実験機におけるウェーブライダー翼適用の空力検討 晝間正治他 JAXA
再突入と翼-翼は着陸のため? 白水正男 JAXA メールマガジン第240号

北朝鮮のミサイル等関連情報 令和6年4月2日 防衛省
揚力再投入体について 保原 充 ながれ 2(1983) 

有翼再突入実験機の飛行制御系と飛翔シミュレーション試験 川口淳一郎他 宇宙科学研究所報告第64号 1987年3月
N. Korea shows off new medium-to-long-range hypersonic missile NORTH KOREA NOW YouTube
North Korea's Latest Hypersonic Missile System Is One Sinister-Looking Weapon JOSEPH TREVITHICK THE WARZONEホームページ

North Korea says Kim Jong Un led test of new ‘Hwasong-16B⁷ Hypersonic missile Colin Zwirko April 3, 2024 NK NEWSホームページ

Second Flight of North Korea's Solid IRBM Also Second Flight of HGV VANN H.VAN DIEPEN  APRIL 5,2024 38NORTHホームページD




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