DF(東風)-17 極超音速ミサイルの名称


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 中国が世界で初めて実戦配備したとされる射程1500km以上の滑空型 極超音速ミサイル

 DF-17は、2019年10月1日、中国建国記念日の軍事パレードで初めて公開された。

 本ミサイルの特徴は、飛翔経路が弾道ミサイルの様な放物線ではなく、早期警戒レーダーでは遠距離探知が困難な、高度60km以下を、極超音速で滑空し、飛翔経路を変更可能な点にある。このため、弾道ミサイル防衛システムによる迎撃は困難となり、従来の戦闘方法を変える画期的兵器「ゲーム・チェンジャー」と呼ばれている。

 DF-17に付いては、中国政府からの
公式情報はなく、以下はWeapons Schoolの推測である。

 構造は、滑空体と推進装置(ブースター)に区分される。


 滑空体の先端部分はレドームで、アクティブ・レーダー・シーカー(探知機)を内蔵する。この後方は弾頭部分となっており、約500kgの高性能炸薬、または兵器などを搭載できる。
 弾頭部分後方は、INS(慣性航法装置)、GPS(全地球測位システム)、自動操縦装置などを内蔵する誘導・制御部分で、外部に操舵翼4枚を装着する。
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 推進装置(ブースター)は2段式、固体推進剤ロケット・モーターである。固体推進剤は、液体推進剤に比べ、現場での推進剤注入の手間も不要で、即応性に優れ、長期間保管も可能である。


 DF-17は自走式起立発射機に搭載されており、人工衛星、偵察機等の監視から逃れる為、建物、掩体壕などに格納されている。発射指令を受けると、所定の発射地点に移動、ミサイルを起立させ、機能確認の後、発射する。

 
 第一段および第二段ロケット・モーター燃焼終了後、所定の高度で滑空体を分離する。分離された滑空体は高度60km以下を、機体下面に発生する衝撃波を利用して滑空する。この間、迎撃を困難にするため、飛翔経路を変更する。目標に接近するとレーダー・シーカーを作動させ、目標を発見、急角度で突入する。固定目標だけでなく、艦艇などの攻撃も可能である。命中精度(CEP)はおよそ10mと推測する。



実力は未知数

DF-17は、世界初の実戦配備された極超音速滑空ミサイルとして、マスコミでも大々的に取り上げられている。しかし、その実力に付いては以下の疑問点が指摘されている。
  • 極超音速滑空条件は厳しい

    空気の薄い高高度を極超音速で滑空するには、ピッチ角(迎角)およびロール角(横転角)等の機体姿勢を厳密にコントロールする必要がある。この領域を外れてしまうと滑空距離は不足し、最悪の場合、機体に過度な空力荷重、空力加熱が発生し、制御不能となるため、急激な飛翔経路変更は制限される。

  • 移動目標情報の伝達は可能か?

    艦艇などの移動目標攻撃には最新の位置情報が不可欠だ。しかし、極超音速飛翔中の機体は空力加熱により1000℃以上の高温となり、電波受信状態は劣化する。この条件下で、目標位置情報をDF-17に伝達できるかは不明である。

  • 滑空による速度低下

    滑空体切り離し時点の速度は秒速 約3km(音速の約10倍)である。しかし、高度60km以下の大気圏内で、引き起こし機動を行い、滑空、飛翔経路変更などを実施すると、空気抵抗により減速して、目標到達直前には秒速 2km(音速の約7倍)以下に減速してしまう。この速度では、THAAD改良型、PAC-3MSE等で迎撃される可能性がある。


                          2019年12月21日 改訂


性能・諸元

 DF-17
全   長:約14m
重   量:約15トン
射        程:1500km以上

誘導方式:中間誘導 INS+GPS 終末誘導 アクティブ・レーダー誘導


参考文献

宇宙航行の理論と技術 河崎俊夫 編著 地人書館
航空力学 航空工学講座1 公益社団法人 日本航空技術協会 
極超音速飛行実建機 ハイフレックスの開発 名古屋航空宇宙システム製作所 三宅 捷他
ミサイル入門教室ホームページ
Check Out China'S New DF-17 Hypersonic Glide Vehicle:A Real Killer? David Axe THE NATIONAL INTEREST

DF-17 Hypersonic Glide Vehicle Global Security.orgホームページ
DF-17 Military-Today.comホームページ

Hypersonic Boost-Glide Weapons James M.Acton Routledge Taylor & Francis Group

Hypersonic Weapons: Background and Issues for Congress Updated September 17,2019 Congressional Research Service

Impact of Hypersonic Weapons on National Security and Crisis Instability Potomac Institute for Policy Studies
Introducing the DF-17:China's Newly Tested Ballistic Missile Armed With a Hypersonic Glide Vehicle Ankit Panda December 28,2017 THE DIPLOMAT

Jane's STRATEGIC WEAPON SYSTEMS ISSUE THIRTY-NINE Duncan Lennox  Jane's Information Groups
More Than Missiles  China Previews its New Way of War Ian Williams Masao Dahlgren OCTOBER 2019 CSIS BRIEFS
Nuclear Weapons Databook Volume 1 Thomas B. Cochran他 Natural Resources Defense Council, Inc BALLINGER PUBLISHING COMPANY

Wait,China Has TWO Hypersonic Missiles? David Axe THE NATIONAL INTEREST
X-15 RESEARCH RESULTS With a Selected Bibliography NASA SP-60 NATIONAL AERONAUTICS AND SPACE ADMINISTRATION

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