SLAM スラムと読む
Standoff
Land Attack Missileの頭文字を取った造語。 日本語に訳せば長距離陸上攻撃ミサイル
解説 総合索引
航空機から発射される長距離空対地ミサイル。敵防空網の射程外から母機を危険にさらすことなく、陸上目標や港に停泊する船舶などを攻撃できる。制式名称AGM-84E
SLAM(Standoff
Land Attack Missile)。
SLAMは1980年代後半に米海軍とマクドネル・ダグラス社(現:ボーイング社)により開発着手された。開発期間を短縮し、コストを抑えるため、対艦ミサイル、ハープーンをベースとしており、アクティブ・レーダー・シーカーを画像赤外線シーカーに替え、データ・リンク装置を追加した。1990年に配備を開始、湾岸戦争でも使用され高い攻撃精度を示した。
SLAMの構造は大きく4つに区分される。
先端部分はマーベリック空対地ミサイルAGM-65Fの画像赤外線シーカーを内蔵する。この後方は誘導部分でウオールアイのデータ・リンク装置や、GPS、慣性航法装置、電波高度計、自動操縦装置を搭載する。
誘導部分後方は弾頭部分となっており、222kgの爆風・破片弾頭を内蔵、遅延または瞬発起爆モードを選択できる。
弾頭部分の後ろにはテレダイン社製J402ターボジェット・エンジンと燃料タンクなどを内蔵しており、下部には空気取り入れ口、外部に安定翼4枚を装着する。
ターボジェット後部外周には飛行制御装置を内蔵、外側に4枚の操舵翼が装着される。
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SLAMは発射されると、ターボジェット・エンジンを始動、GPSと慣性航法装置により事前に入力された飛行経路に従い飛行する。目標に接近すると画像赤外線シーカーを作動させ、その画像をデータ・リンクでAN/AWW-13データ・リンク・ポッドを搭載する航空機に送る。乗員は送られてくる映像をディスプレーで見ながら目標を指定する。SLAMはこれを自動追尾して目標に突入、破壊する。最大射程は95kmだ。
SLAM運用上の最も大きな制約は攻撃計画の立案と打ち込みに約2時間半を要する点だ。
SLAM-ER(Standoff
Land Attack Missile-Expanded
Response)
1994年、マクドネル・ダグラス社(現:ボーイング社)はSLAMを改造した、SLAM-ER(Standoff
Land Attack Missile-Expanded
Response)AGM-84Hの開発を米海軍に提案、1999年部隊配備を開始した。
SLAMからSLAM-ERへの主な改良点は以下の通り
- 赤外線センサーの視界を確保するため機首形状を楔(くさび)形に変更
- トマホークミサイルの主翼を改良して弾頭部分下部に折畳み式で装着した。
- 射程を280kmに延長、運動性能も向上した。
- 弾頭をトマホーク巡航ミサイルBlock3弾頭の派生型、チタニウム製WDU-40/B弾頭に変更して、貫通力を強化した。
- 位相変調方式データ・リンク送信装置を採用して、伝達距離を伸ばし、電波妨害にも強い。
-
飛行中の目標位置アップデートにより移動する艦船への攻撃も可能となった。
-
慣性航法装置も改良され攻撃精度を向上させた。
-
GPSは多チャンネル受信タイプとなり、発射前の初期化などが簡略化され、電波妨害にも強くなった。
-
誘導装置も処理装置の高速化とプログラムの書き換え可能となる。
-
攻撃ミッション・プログラムの自動化により攻撃計画立案時間を30分以内に短縮した。
SLAM-ER ATA(Automatic Target Acquisition
自動目標捕捉)
SLAM-ERの自律攻撃能力を向上させるため、メモリーに保存された画像と画像赤外線センサーの映像を比較して自動で目標を補足するATA(Automatic Target
Acquisition自動目標捕捉)機能を追加。ディスプレーを見て目標を選択する乗員の負担も軽減された。なお必要な場合には乗員により目標を選択することも可能。制式名称AGM-84K、2002年4月初期運用能力を獲得した。
これらをまとめると以下の表になる。
制式名称 |
AGM-84E
SLAM
|
AGM-84H
SLAM-ER |
AGM-84K
SLAM-ER ATA |
誘導方式 |
画像赤外線+データ・リンク
慣性誘導+GPS |
← |
← |
弾頭 |
爆風・破片弾頭 |
チタニウム製貫通弾頭 |
← |
全長m |
4.45 |
4.36 |
← |
弾体直径m |
0.34 |
← |
← |
翼幅m |
0.91 |
2.18 |
← |
重量kg |
620 |
635 |
← |
射程km |
95 |
280以上 |
← |
備考 |
SLAMの基本型
|
SLAMを改造
データ・リンク改良
攻撃計画立案を自動化
対妨害能力を向上させたGPS
攻撃計画立案に30分以内
トマホークの主翼を利用して、射程延長
|
SLAMまたはSLAM-ERを改造
ATAを追加して自律性を強化 |
2008年9月 4日改訂
性能・諸元
SLAM-ER
全長:4.36m
翼幅:2.18m(主翼展開時)
弾体直径:0.34m
射程:280km以上
重量:635kg
弾頭:チタニウム製貫通弾頭
誘導方式:中間誘導:慣性誘導+GPS
終末誘導:画像赤外線+データ・リンク
速度:マッハ0.85
価格:約6000万円
メーカー:ボーイング社他
参考文献
雑誌 軍事研究 海からの陸上攻撃兵器 岡部いさく
ANTI-SHIP MISSILES AND COUNTERMEASURES PART1(ASM) NAVAL FORCES 1/2001
BOEING社ホームページ
CARRIER A Guided Tour of an Aircraft Carrier Tom Clancy BERKLEY BOOKS
F/A−18 HORNET A Navy Success Story
Dennis R.Jenkins McGraw‐Hill
Federation of American Scientistsホームページ
NAVY TRAINING PLAN FOR THE AGM-84E STANDOFF LAND ATTACK
MISSILE(SLAM)A-50-8813B/A MAY 1996
NAVY TRAINING PLAN FOR THEAGM-84H STANDOFF LAND ATTACK
MISSILE EXPANDED RESPONSE(SLAM ER)A-50-9502/A MAY 1996(REVISED JULY 1996)
NAVY TRAINING SYSTEM PLAN FOR
THEAGM-84H/K STANDOFF LAND ATTACK MISSILE EXPANDED RESPONSE AUTOMATIC TARGET
ACQUISTION N78-NTSP-A-50-9502B/D JUNE 2002
U.S Navy Fact File
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