機雷 「機械水雷」を略した名称。船舶の航行を妨害するため、海、湖、河川等に設置される兵器。
解説 総合索引
爆薬とセンサーを内臓し、船舶との接触または、船舶の発生する音、水圧、振動、磁気等を感知して爆発する。機雷は、安価で構造も簡単、一旦設置すれば、保守点検は不要である。Copyright (c)2011 Weapons School All rights reserved.
船舶の接近を待ち、所定の条件を満たした場合のみ作動する機雷は、「待ち」の兵器であり、魚雷やミサイルなどが持つ、華々しさは無い。
しかし、その効果は絶大で、小型艦艇しか保有できない弱小海軍でも、機雷を使用すれば、巨大な空母などを保有する米海軍の行動を制約可能である。
第二次世界大戦末期、日本は、米軍による機雷封鎖で、海外からの輸入はもちろん、国内各地を結ぶ内航海運も壊滅的被害を受け、敗戦の大きな要因となった。
機雷を処分し、航路の安全を確保するには、膨大な労力、時間、資源を必要とする。機雷は、当該船舶への物理的被害だけでなく、他の船舶に当該水域への航行を躊躇させ、作戦遂行、人員・物資輸送の妨げとなる。
本稿では機雷の敷設状態、起爆方法、敷設方法、およびその機雷爆発による船体への影響に付いて解説する。
敷設状態
- 係維(けいい)機雷
最もポピュラーな機雷。機雷の移動を防止する錨(いかり)の役割を果たす係維器と、機雷本体である機雷缶、およびこれを連結する係維索(ケーブル)、触発アンテナなどで構成される。
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機雷缶には爆薬および起爆装置などを内蔵し、浮力を有する。外部には触角と呼ばれる、角状の突起物があり。これを破損、または、触発アンテナに船体が接触すると起爆する。この他、目標の接近を磁気、音響などで感知するタイプもある。
係維機雷は、敷設されると係維器は海底に着底し、位置を保持する。機雷缶は係維索の長さを調節することにより、所定の水深に、アドバルーンの様に浮かぶ。機雷缶は浮力を必要とするため炸薬量には制約がある。
係維機雷は、ソナーもしくは、透明度が高く、水深の浅い海では目視による発見も可能である。
海流や波により、計画敷設深度より機雷缶の深度が深くなる場合があるので、事前に敷設海域の海流などに付いて調査を行う必要がある。
- 沈底(ちんてい)機雷
機雷本体に浮力を持たないため投入されると海底に沈み、自重でその位置を保つ。船舶との接触ではなく、磁気、音響、水圧などにより起爆される。
形状は様々で、円筒形のタイプや、円錐形の上部を平行に切り取った形状のマンタ機雷などがある。また、魚雷を改造して、指定された場所まで自力で移動するタイプも開発されている。係維機雷に比べ、炸薬量が多く、威力も大きい。海底の地形に隠れたり、砂、泥などに埋まり、ソナーによる発見は困難。
水上船舶を目標とする場合は、水深約60mより浅い海底に設置するのが一般的である。
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短係止機雷
海底もしくは、錘につながる短いケーブルで敷設され、目標の接近を磁気・音響などで感知すると、浮力またはロケット推進などで上昇し、所定の深度で起爆する。この他、カプセルに魚雷を収納し、目標の接近を感知すると、魚雷を発射するタイプ等もある。
- 浮遊(浮流)機雷
浮力を持ち、海面もしくは、海中を海流、風、波により自由に移動する機雷。
1907年に制定されたハーグ協定では、起爆装置を活性化した1時間以上の寿命を有する浮遊機雷の敷設を禁止している。しかし、本協定を無視して浮遊機雷を使用したり、係維機雷の係維索が切断して浮流機雷となる場合もある。敷設後の位置特定は不可能で、敵ばかりでなく、味方や第三国の船舶にも被害を及ぼす可能性あり。
起爆方法
敷設方法
機雷爆発による船体への影響
- 機雷は、空気より密度の高い水中で爆発するため、空気中では、大きな殺傷力を持つ破片も、水の抵抗により急激に減速され効果はほとんど無い。
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しかし、水中では衝撃波が空気中より効率的に伝わる上、爆発時に発生する高温・高圧ガス球体の膨張・収縮により、船体を上下に曲げる力が加わる。さらに、ガス球体の収縮による高速の水流も発生し船体に損害を与える。このため、機雷は、船体に接触して爆発するより、船体下部水深10m程度で爆発した場合に、最も大きな損害を与える。損害の範囲および程度は、爆薬の種類、重量および、爆発深度、海底地形などにより変化する。
なお、条件によっては、ガス球体の膨張・収縮が繰り返され、被害をさらに拡大する場合もある。
2011年6月28日作成
参考文献
海軍水雷史 海軍水雷史刊行会 財団法人 水交会
海上自衛隊および掃海隊群ホームページ
海上防衛技術のすべて 防衛技術ジャーナル編集部編 (財)防衛技術協会
機雷 光岡明 講談社
機雷戦艦艇 高須廣一 現代軍艦図鑑 世界の艦船1988年9月号増刊第25集 株式会社 海人社
機雷戦と対機雷戦 赤尾利雄 現代の海戦 世界の艦船1982年8月号増刊第11集 株式会社 海人社
近接水中爆発を受ける船体の縦曲げ応答予測技術を開発
今北明彦 安田章宏 三井造船技報No188(2006-6)
続・艦船メカニズム図鑑 森 恒英 グランプリ出版
続・戦争のテクノロジー ジェイムズ・F・ダニガン 岡芳輝訳 河出書房新社
ペルシャ湾の軍艦旗 碇 義朗 株式会社 光人社
DEFENSIVE AND OFFENSIVE MINING Dr.Milan Vego NAVAL FORCES NO.lll/2008
FUTURE MCM SYSTEMS Dr.Milan Vego NAVAL FORCES NO.IV/2005
NAVAL MINES Massimo Annati NAVAL FORCES
NO.III/2005
MINE WARFARE U.S.NAVY NWP3-15 U.S.MARINE CORPS MCWP3-3.1.2 DEPARTMENT OF THE NAVY OFFICE OF THE CHIEF OF NAVAL OPERATIONS AND HEADQUARTERS U.S.MARINE CORPS
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