火星12 中距離弾道ミサイルの名称


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 北朝鮮にて開発中の、自走式 起立発射機搭載型 中距離弾道ミサイル

 
火星12は、2017年4月15日の軍事パレードで、その存在が明らかとなった、全長約16mの大型ミサイルである。 最大射程は4000km以上と推測され、グアム島も攻撃可能である。
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 CEP(半数必中界)は4km以上と、ピンポイント目標の攻撃には向かないが、大都市攻撃には十分な命中精度だ。弾頭重量は約700kgで、通常の高性能炸薬では破壊力は限定される。しかし、兵器などの大量破壊兵器を搭載すれば、相手方に大きな損害を与え得る。北朝鮮は、弾道ミサイルに搭載可能な、小型・軽量の核兵器を開発したと発表しているが、同国の技術レベルからすると疑問点も多い。

 2017年5月14日の発射試験では、北朝鮮西岸の亀城(クソン)付近から発射され、最高高度は2000km以上、距離 約800kmを飛翔して日本海に落下した。  


最高高度2000km超!!

 5月14日の発射試験で最も注目されるのは、最高高度が2000kmを超えている点だ。これは発射角度を大きくとり、飛翔距離を犠牲にしたロフテッド軌道である。飛翔距離を稼ぐ、最小エネルギー軌道で発射したと仮定すると、4000km以上を飛翔可能で、北朝鮮の弾道ミサイル技術は着実に進歩している。


 火星12の構造に付いては、北朝鮮政府からの公式情報は無く、以下はWeapons Schoolの推測である。
  
 先端は弾頭部分となっており高性能炸薬、兵器などを搭載できる単一弾頭である。弾頭部分後方は慣性航法装置、自動操縦装置などを内蔵する誘導部分となっている。


 
この後は、燃料UDMH(Unsymmctrical Dimethyl Hydrazine:非対称ジメチルヒドラジン)タンク、酸化剤である四酸化二窒素タンクと、新型 主ロケット・エンジン1基を搭載する。飛行制御は、4基のバーニア・エンジンによる推力偏向により行われる。

  
 
火星12を搭載した、自走式起立発射機は、偵察衛星、偵察機などの監視から逃れるため、トンネル、地下施設などに待機し、発射指令を受けると、指定の発射場所に移動する。この位置を特定し攻撃・破壊することは、衛星、無人航空機による戦場監視が発達した今日においても困難である。

 発射場所に到着すると、ミサイルを垂直に起立させ、機能確認などを実施の後、ミサイルを搭載した発射台を切り離し、自走式発射機は退避する。これは、火星12、発射時の強力な排気炎により自走式発射機が損傷するのを防ぎ、戦場での発射機の生存性を高める為の措置と考える。

  発射後は、事前にプログラムされた目標に向け、飛行方向、速度を調整、所定の条件に達すると、ロケット・エンジンを停止させる。この後は、弾頭部分を分離、与えられた運動エネルギーにより、弾道飛行して目標に向かう。


 最高高度は約800km、秒速5km(音速の15倍弱)以上の速度で大気圏に再突入する。弾頭は、大気の抵抗で高温、高応力にさらされ、ノドンなどの射程1200kmクラスの中距離弾道ミサイルに比べ、格段に高度な設計、製造技術を必要とする。

                            2017年 9月19日 改訂


性能・諸元

火星12

全   長:約16m
弾体直径:約1.5m
重   量:約25トン
弾頭重量:約700kg
射      程:4000km以上

C E P:4000m以上


参考文献

北朝鮮による弾道ミサイルの発射について(第2報) 防衛省 平成29年5月14日
ミサイル入門ホームページ
A Quick Technical Analysis of the Hwasong-12 RALPH SAVELSBERG 38NORTHホームページ
Kim Jong Un Guides Test-Fire of New Rocket Hwasong-12 You Tube https://youtu.be/8cYAKhxOPfQ
N.Korea seen closer to ICBM,boosted by new missile engine 2017/5/15 YONHAP NEWS AGENCY

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