シースキマー 海面上を超低空飛行する対艦ミサイルの総称。


解説                       総合索引  

 海面すれすれの超低空(10m以下)を、目標艦艇に突入する対艦ミサイルを指す。



 超低空飛行の目的は、飛来する対艦ミサイルの探知を遅らせる事により、対処可能時間を短縮し、迎撃される可能性を最小限にすることにある。現在、配備されている対艦ミサイルの多くは、シースキマー能力を有する。
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 対艦ミサイルの接近を探知する手段は、レーダー、光学・赤外線センサー、ESM(電子支援装置:ミサイルからのレーダー波を探知して警報を発する装置)、肉眼などがある。

 しかし、遠距離からミサイルの接近を探知できるのはレーダーである。ミサイルが高々度(数千m以上)から接近する場合、条件によっては、百km以上遠方での探知も可能である。しかし、海面すれすれの超低空を飛行する場合、レーダーの探知距離はおよそ30kmと、3分の1以下に低下する。

 その理由は、レーダーに使用される電波の性質にある。艦艇に搭載されるレーダーはUHF(極超短波)以上の周波数を使用している。この波長帯の電波は、光と同様ほぼ直進する。これに対し、地球表面は曲面であるため、遠距離の低高度域には、電波が届かず、探知できない領域ができる。シースキマーは、これを利用して、目標艦艇に接近する。

 
 また、レーダーで超低空域を捜索する場合、対艦ミサイルからの反射波が、シークラッターと呼ばれる海面からの反射波に紛れるため、パルス・ドップラー方式等の高度な信号処理を必要とする。

 対艦ミサイルに対抗する防空システムは、レーダー等による捜索、探知、識別、追尾、交戦、効果判定の順序で実施される。交戦に使用される手段は、ミサイル、火砲により撃破するハードキルと、チャフ、フレア、デコイ、電子妨害などにより、偽の目標(オトリ)にミサイルを誘き寄せるソフトキルがある。これらの防空システムを効率良く機能させるためには、対艦ミサイルを可能な限り、遠距離で探知することが、不可欠である。

シースキマー運用上の制約を以下に挙げる。

  • 空力加熱により赤外線センサーに探知されやすくなる。
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  • 高々度を飛行する場合より、空気抵抗が増大するため、速度は低下、射程も短くなる。

  • 誤って海面に激突しないよう、高精度な自動操縦装置を必要とする。

  • ミサイル搭載のシーカー(探知機)で目標を捕捉するまでは、艦艇、航空機などからの目標情報が不可欠である。

 近年では、超低空飛行に加え、音速の2倍以上の速度で突入するヤホントクラブなども開発され、迎撃は更に困難となっている。
                         2011年11月21日制作


参考文献

電波情報工学 近藤倫正 共立出版株式会社
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THE MODERN NON-NUCLEAR SUBMARINE Stefan Nitschke NAVAL FORCES V/2006 
THE NAVAL INSTITUTE GUIDE TO WORLD NAVAL WEAPON SYSTEMS FIFTH EDITION NORMAN FRIEDMAN US Naval Institute Press

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