Paveway 「べイヴウェイ」と読む。  レーザー誘導爆弾の名称。


解説                      総合索引
  


 目標に照射された、レーザーの反射光に向けて誘導される爆弾。航空機から投下される爆弾中、最も高い命中精度を有する。スマート(賢い)爆弾とも呼ばれる。
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 レーザー誘導爆弾の開発は、ベトナム戦争最中の1965年に開始され、1968年 初実戦投入された。
 制式名称は使用する弾体により、GBU(Guidance Bomb Unit 誘導爆弾ユニット)-10・12・16・22・24・27・28などがある。

 誘導装置を持たない、自由落下式汎用爆弾は、高度4572m(1万5千フィート)から水平飛行中に投下されると、風などの影響により、広い範囲に分散し、CEP(半数必中界)は95mとなる。これに対し、レーザー誘導爆弾のCEPは3m以内と、極めて高い命中精度を有する。ちなみに、イラクやアフガニスタンなどで、現在多用されているINS(慣性航法装置)・GPS(全地球測位システム)誘導のJDAMのCEPは13mである。
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  レーザー誘導爆弾は、航空作戦に劇的な変化をもたらした。高い命中精度により、爆弾投下に要する航空機の機数を削減、作戦効率を向上させ、対空砲火による被害も減少した。目標周辺にある民間施設などへの被害も限定され、移動目標に対しても有効である。

  レーザー誘導爆弾の構造は、モジュール式となっており、誘導・制御部分、弾体、翼グループに区分される。

  •  誘導・制御部分 CCG(Computer Control Group:コンピューター制御グループ)
    ジンバルに保持されたレーザー・シーカ(探知機)、この後方に誘導・制御装置があり、外側に取り付けられた操舵翼4枚により、飛行コースを制御する。

    使用されるレーザーは、
    1.064μm波長のコード化された近赤外線レーザー光により、複数のレーザー誘導爆弾を使用可能で、敵からの妨害にも強い。なお、このレーザー光は視力障害を引き起こす為、目標付近に地上部隊、もしくは民間人が居る場合、注意を要する。

    レーザー・コードは3桁もしくは4桁を使用し、3桁の場合は111から788、4桁の場合は1111から1788を使用する。コードの数字の少ないほど、早いパルス率で高い精度が得られる。ただし、限定されたレーザー・コードしか使用できないレーザー照射装置(搭載機体)もある。レーザー・コードは離陸前にセットされ、飛行中の変更はできない。Copyright (c)2002-2009 Weapons School  All rights reserved. 

  • 弾体
    低抵抗汎用爆弾Mk80シリーズおよび、貫通爆弾BLU-109/B超貫通爆弾BLU-113/Bなどを選択可能だ。

  • 翼グループ AFG(Airfoil Group:エアフォイル・グループ)
    投下後、展開される翼。滑空距離を伸ばし、対空砲火射程外からの爆撃を可能にする。




 レーザー照射は、搭載航空機だけでなく、他の航空機、または地上部隊により行われ、着弾の10秒前から着弾まで実施される。
最も効果的な投下方法は、高度数千メートルから、降下角15度以上の急降下による投下である。

    

 高い命中精度のレーザー誘導爆弾ではあるが、以下の様な運用上の制約も存在する。

  • 目標からの反射レーザー光を中心に形成される、円錐形の「バスケット」と呼ばれる空間に、投下する必要がある。

  • 航空機からレーザー照射する場合、命中までレーザーを照射し続ける必要があり、急激な機動は制限され、その間、航空機は敵対空砲火に対し脆弱である。Copyright (c)2002-2009 Weapons School  All rights reserved. 

  • レーザー光は、空気中の水蒸気やゴミ・チリなどに吸収されやすいため、目標が雲、霧、煙幕などで覆われていたり、強い雨、雪などが降っている場合には使用不能である。湾岸戦争やコソボ紛争でも、悪天候のため作戦中止となった例がある。

  • 低高度での、トスまたはロフト投下の場合、早期にレーザー照射を行うと、目標の手前に着弾するため、レーザー照射は着弾10秒前から実施する。

 ぺイヴウェイには初期型であるぺイヴウェイlのほか、現在、使用されている改良型のぺイヴウェイll/lllがある。米軍で使用されているペイヴウェイの概要は以下の通り。

べイヴウェイ ll

  • 尾部フィンを収納式にして小型化、搭載弾数を増加。

  • 滑空距離は高度9000mから投下された場合、約15km。

  • 誘導回路を改良して信頼性を向上。

  • プラスチック部品採用でコスト削減。
名称 GBU-10C/B
GBU-10D/B
GBU-10E/B
GBU-10G/B
GBU-10H/B
GBU-10J/B
GBU-12B/B
GBU-12C/B
GBU-12D/B
GBU-16A/B
GBU-16B/B
弾体 Mk84
2000ポンド爆弾
BLU-109/B
貫通爆弾
Mk82
500ポンド爆弾
Mk83
1000ポンド爆弾
全長m 4.32 4.24 3.33 3.68
弾体直径m 0.46 0.37 0.27 0.36
総重量kg 957 966 275 495
炸薬重量kg 429 243 87 202
翼幅m 0.79 0.45 0.72
展開時翼幅m 1.70 1.32 1.61
誘導ユニット MAU-169 MAU-169 MAU-169
尾部安定ユニット MXU-651/B MXU-650/B MXU-667/B

 

べイヴウェイ lllおよび派生型

  • LLLGB( Low-Level Laser Guided Bomb:低高度レーザー誘導爆弾 )と呼ばれる、低空からでも投下可能。
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  • 翼を大型化し、滑空距離を延ばす。高度9000mからの滑空距離は18.5km。対空砲火に対する母機の安全性を高め、突入角度も、垂直方向と水平方向のどちらかを選択可能となり、運用上の柔軟性を増す。

  • シーカーの視界を広げ、電子部品を改良、夜間・悪天候時にも限定的ながら運用可能に。

  • 飛行制御装置もぺイヴウェイllまでのオン・オフ式ではなく、必要な角度だけ修正可能となり、効率の良い飛行経路を取れる。
名称 GBU-22/B GBU-24/B GBU-24A/B GBU-27/B GBU-28A/B
弾体 Mk82
500ポンド爆弾
Mk84
2000ポンド爆弾
BLU-109/B
貫通爆弾

F-117専用爆弾
BLU-113
超貫通爆弾
ディープ・スロート
全長m 3.51 4.39 4.31 4.24 5.82
弾体直径m 0.27 0.46 0.37 0.37 0.37
総重量kg 326 1024 1076 991 2076
炸薬重量kg 87 429 243 243 272
翼幅m 不明 0.91 0.72
展開時翼幅m 不明 2.1 1.68
誘導ユニット WGU-12B/B
WGU-39/B
WGU-43/B
WGU-12
WGU-39/B

 

WGU-25
 WGU-39/B 
WGU-36A/B
尾部安定ユニット BSU-82/B BSU-84 BSU-84 BSU-88/B BSU-92/B

 この他、GPS(全地球測位システム)・INS(慣性航法装置)を追加して、悪天候および視界不良時でも投下可能な能力強化型エンハンスド・ぺイヴウエイEGBUシリーズも実用化された。

 レーザー誘導爆弾はイギリス・フランス、カナダ、オーストラリア、ギリシャ、イスラエル、韓国、オランダ、サウジアラビア、スペイン、台湾、トルコなどでも使用され、ロシアにも同様のシステムがある。

                          2009年2月20日改訂


性能・諸元
GBU-24/Bべイヴウェイlll
全長:4.39m
翼幅:0.91m(収納時)
弾体直径:0.46m
重量:1024kg
炸薬重量:429kg
誘導方式:セミ・アクティブ・レーザー・ホーミング
価格:約650万円。
メーカー:レイセオン社他


参考文献

図解エアパワー最前線上・下 原書房 著者:アンソニー・ソーンボロ 監訳者:松崎豊一
戦場の未来ジョージ・フリードマン&メレディス・フリードマン小室直樹解説、関根一彦訳
トム・クランシーの戦闘航空団解剖著者:トム・クランシー 訳:平賀秀明 新潮社
雑誌 軍事研究 (株)ジャパン・ミリタリー・レビュー
U・S・ウエポン・ハンドブック 宮本勲編著 原書房
Aviation Ordnanceman NAVEDTRA 14313 NONRESIDENT TRAINING COURSE July 2001U.S Navy

Jane's Air-Lunched Weapons Jane's Information Groups
JOINT LASER DESIGNATION PROCEDURES(JLASER)1 JUNE 1991JOINT PUB 3-09.1 U.S DoD他
NATO Air-Launched Weapons Jeremy Flack The Crowood Press
Raytheon社ホームページ
WEAPONS FILE 2003 2004 U.S Air Force

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