ハープーン 対艦ミサイルの名称。本来は捕鯨などに使用される銛(もり)の英語名


解説                             総合索引

 艦艇、航空機などから発射されるアクティブ・レーダー誘導対艦ミサイル。制式名称は航空機搭載型をAGM-84、水上艦艇搭載型をRGM-84、潜水艦搭載型をUGM-84 Harpoonと呼ぶ。

 1971年米海軍とマクダネル・ダグラス社(現:ボーイング社)により開発に着手、1977年に部隊配備を開始した。 ハープーンはアメリカの他、イギリス、イスラエル、オランダ、カナダ、ギリシャ、ドイツ、サウジアラビア、トルコなど26ヶ国で使用されており、我国でも護衛艦などに搭載されている。現在までに7000発以上製造されており、対艦ミサイルのベストセラーだ。
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 ハープーンの構造は大きく4つに区分される。
 先端部分はレドームで、内部にアクティブ・レーダー・シーカーを搭載する。この後方は誘導部分で3軸姿勢照合装置(慣性航法装置)、電波高度計、自動操縦装置を内蔵する。
 この後方は弾頭部分で、重量約220kgのWDU-18/B遅延信管付き貫通弾頭で、船体内部にミサイルが突入してから爆発する。
 弾頭部分の後ろにはテレダイン社製J402ターボジェット・エンジンと燃料タンクなどを内蔵しており、下部には空気取り入れ口、外部に安定翼4枚を装着する。
 ターボジェット後部外周には飛行制御装置を内蔵、外側に4枚の操舵翼が装着される。

 RGM-84(水上艦艇搭載型)は
ASROC(アスロック:対潜水艦ロケット)発射機や円筒形発射機(キャニスター)などに格納される。UGM-84(潜水艦搭載型)はカプセルに入れられ、魚雷発射管から発射される。両者とも、最後部にブースターを装着しており、およそ3秒間燃焼してハープーンを高度約400m打ち上げ、燃焼終了後は分離、落下する。
 なお、ASROC発射機以外から発射される艦艇搭載型ハープーンの安定翼、操舵翼は折畳み式となっており、発射直後展開される。

 
 
発射前、搭載航空機や艦艇から目標データおよび飛行経路、捜索パターンの指示を受け取る。艦艇などから発射される場合はブースターより撃ち出される。所定高度に達するとターボジェット・エンジンを始動、慣性航法装置と電波高度計により海面近くまで降下して飛行するためレーダーにも補足されにくい。
 
目標に近づくとアクティブ・レーダー・シーカーを作動させて、発射前に指定されたレーダー捜索範囲を捜索する。目標を補足後、一旦上昇してから急降下して目標に突入する。なおBlock1B以降では海面スレスレの高度でそのまま目標に突入するシー・スキマー・モードも可能だ。

 ハープーンの代表的なタイプを以下に揚げる。

制式名称 AGM-84A
RGM-84A
UGM-84A
AGM-84C
RGM-84C
UGM-84C
AGM-84D
RGM-84D
UGM-84D
ブロック名 Block1 Block1B Block1C
シーカー アクティブ・レーダー
全長m※ 3.84
重量kg※ 520
射程km 92 124
備考 基本型
生産終了
海面高度のまま突入するシースキーマー・モードも可能に
飛行経路の選択肢を拡大
射程延長
対電子妨害能力向上
信管改良
シーカー改良

※ブースターは除外

制式名称
RGM-84F

AGM-84H
AGM-84L
RGM-84L
UGM-84L
ブロック他 Block1D SLAM-ER Block2
シーカー アクティブ・レーダー 画像赤外線 アクティブ・レーダー
全長m※ 4.4 4.36 不明
重量kg※ 621 635
射程km 240 280
備考 胴体を延長
燃料タンク増設により射程延長
目標補足に失敗するとクローバーリーフ状の捜索パターンを行い再攻撃をする。
冷戦終結により開発中止
陸上攻撃用
データ-リンク搭載
GPS搭載
SLAMからの改造も可能
トマホークの主翼を使用して射程延長
赤外線センサー改良
弾頭・データリンク・信管を改良
楔形先端部分
攻撃計画立案時間を短縮
限定的な陸上攻撃能力を持つ
レーダー・シーカー改良
慣性航法装置改良
GPS追加
安全性を向上させた炸薬
信管改善
旧型からのレトロフィット可能

                                                            ※ブースターは除外
   この他Block2プラスやBlock3などの発展型も検討されている。

                                              2008年9月 4日改訂


性能・諸元

AGM-84D
全長:3.84m
弾体直径:0.34m
翼幅:0.91m
射程:110km以上
重量:520kg
エンジン:J402ターボジェット
誘導方式:中間誘導:慣性誘導
       終末誘導:アクティブ・レーダー・ホーミング
速度:マッハ0.85
価格:約8700万円
メーカー:ボーイング社他


参考文献

艦載兵器ハンドブック 海人社編 海人社
艦船メカニズム図鑑 森恒英 グランプリ出版
現代の潜水艦 学習研究社編 学習研究社
現代の艦載兵器 堀元美 原書房
世界のミサイル・ロケット兵器 坂本明 グリーンアロー出版社
U・S・ウエポン・ハンドブック 宮本勲編著 原書房
BOEING社ホ
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