76mmコンパクト砲 艦艇に搭載される砲の名称


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  排水量60トン級のミサイル艇から、4000トン級の駆逐艦までに搭載される、軽量、小型の艦載砲。
 
高い発射速度と短い反応時間で、対艦ミサイル、船舶、陸上目標の攻撃など多目的に使用される。以下76mm砲と呼ぶ。

 76mm砲はイタリアのOTOメララ社により1960年代半ば開発に着手、1969年より生産を開始した。

 イタリア海軍のほか米海軍、オーストラリア、ギリシャ、スペイン、ドイツなど40ヶ国以上で、800門以上が使用されているベストセラー艦載砲だ。米海軍で使用されているタイプはMark75と呼ばれる。

 我国では日本製鋼所がライセンス生産しており、
海上自衛隊では62口径76mm単装速射砲と呼ぶCopyright (c)2003 Weapons School  All rights reserved.

 76mm砲は砲身長62口径(4.7m)で先端に砲弾発射時の反動を軽減する砲口制退器、中間には発射薬の燃焼ガス逆流を防ぐ排煙器があり、砲身は連続射撃時の加熱防止のため水冷式となっている。砲尾は高い発射速度に対応する垂直鎖栓式を採用している。

 
砲塔はグラスファイバー製で、波・風・生物・化学兵器や放射能汚染から砲システムを守る。しかし、対弾性はほとんど無く、あくまでも保護カバーとしての役割しかもたない。砲塔は無人で運用され、砲弾の装填、発射、薬莢排出など、一連の動作は全て自動化されている。背面には整備・点検用ハッチがある。

 砲塔は360度旋回可能で旋回速度は60度/秒、俯仰角プラス85度、マイナス15度、俯仰速度は35度/秒、停止状態から所定の方向、俯仰角に達するまで時間が短く、低空を高速度で飛来する対艦ミサイルにも対応可能だ。発射速度は最大毎分85発である。なお発射速度を最大毎分100発に向上させた改良型および、最大120発/分のスーパーラピッド砲も開発された。

 砲弾は弾丸と薬莢が一体となった固定弾で、最大射程は約16km。弾種にはHE‐OM(High‐Explosive OTO Munition榴弾)、MOM(Multirole OTO Ammunition多目的榴弾)HE‐PFOM(High‐Explosive Pre‐Formed Piercing OTO Munition事前調整破片榴弾)、SAPOM(Semi‐Armour‐Piercing OTO Munition半徹甲弾)、SAPOMER(Semi‐Armour‐Piercing OTO Munition Extended Range射程延長型半徹甲弾)などがある。発射されると弾丸のみが飛翔し、薬莢は砲身下部から砲塔外に排出される。
 なおOTOメララ社では対艦ミサイル迎撃用のDART(Driven Ammunition Reduced Time-of-Flight飛翔時間短縮誘導弾)とよばれる無線誘導砲弾も開発中だ。

 甲板下には揚弾装置および回転式弾倉があり、砲弾は立てた状態で砲塔周囲に円周上に収容される。回転式弾倉に収容できる砲弾の数は艦のサイズにより異なり、ミサイル艇などでは44発、駆逐艦クラスでは80発、最大では115発である。
 弾倉の補給は3名の給弾手により行なわれ、射撃管制コンソールから遠隔操作で発射される。砲塔および甲板下の弾倉を含めた重量は約7・5トンと従来型の76mm砲より小型、軽量である。


 76mm砲塔には照準装置を持たないため、艦艇に搭載される射撃指揮装置により射撃方向、俯仰角、弾種、信管などの設定指示を受ける。

 捜索レーダーなどで捕捉した目標を射撃指揮装置のレーダー・光学装置で捕捉・追尾して目標の位置、運動方向を測定、このデータと自艦の位置・速度・動揺などのデータを計算した上、目標の未来位置に砲弾を発射する。さらに、発射した砲弾と目標との誤差を測定、修正、目標が破壊されるか、中止を指示されるまで射撃をおこなう。


 76mm砲は対艦ミサイル迎撃用としてファランクスより長い射程と大きな破壊力を持つ。
 しかし、陸上攻撃用としては破壊力が小さく、射程距離も約16kmと限定される。

 OTOメララ社では独自に76mmスーパーラピッド砲を改良、装軌車輛に搭載したオトマテック自走対空砲も開発した。

                  2003年7月12日制作


性能・諸元

76mmコンパクト砲
全長:7.13m
砲塔直径:約2.9m
自重:約7.5トン
発射速度:85発/分(最大)
最大射程:約16km
メーカー:OTOメララ社(旧OTOブレダ社)


参考文献

アメリカ海軍ハンドブック 世界の艦艇別冊 海人社
海上自衛隊パーフェクトガイド 株式会社学習研究社
現代の艦載兵器 堀 元美著 原書房
自衛隊装備年鑑2002−2003 朝雲新聞社編集局編 朝雲新聞社
兵器最先端3太平洋艦隊 読売新聞社編 読売新聞社
丸スペシャルNO.75砲熕兵器 株式会社潮書房
Jane's Naval Weapon Systems  Jane's Information Group
OTO MELARA社ホームページ
THE NAVAL INSTITUTE  GUIDE TO COMBAT  FLEETS of the World 2002-2003 Their Ships, Aircraft & Systems A.D. BAKER III NAVAL INSTITUTE PRESS
U.S Navy Fact File

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